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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第710話

「……おっさん、朝から飛ばし過ぎだ」


「うむ。少し張り切りすぎたか」


「ラース、今日はまだやる事があるんだ。あまり飛ばし過ぎるな」


兵士達が集まり、ジークは遅くなった朝食を食べているとラースと兵士達がホールに戻ってくる。

ラースは良い訓練になったようで満足げな表情をしているが対照的に訓練に付き合わされた兵士達の顔には疲労の色が見え、ジークはラースへと非難するような視線を向けた。

ジークの視線にラースは苦笑いを浮かべると気まずくなったのか視線をそらすと彼の様子にレギアスは小さくため息を吐く。


「本番前の準備運動って感じに見えます」


「本番の相手はもっと狡猾だから、ラース様に相手をさせるわけにはいかないけどね」


「それはそうだけどな。カイン、いつまでジオスにいて良いんだ? あんまりゆっくりとしているわけにもいかないんだろ?」


ノエルはラースの様子に苦笑いを浮かべるとカインは武人であるラースとギムレットでは分が悪いため、大きく肩を落とす。

カインの意見にジークも賛成であり、大きく頷くとワームに戻る時間を聞く。


「とりあえず、セスとフィーナが来てからかな?」


「そう言えば、来ないな。フィーナが駄々をこねているんだろうな」


「だろうね。でも、セスにもフィーナの扱い方を覚えて貰わないといけないから、もう少し待ってみようと思ってね」


カインは首を傾げるとまだこの店に顔を出していない2人の名前を出す。

2人が遅れている理由がフィーナにあるとしかジークは考えられず、大きくため息を吐くとカインはわがまま放題のフィーナの扱いをセスにもさせるいい機会だと思っているようで苦笑いを浮かべた。


「……なぜ、あのようなバカを重用するんだ?」


「バカでも使い勝手が良いですからね。騎士や兵士を動かせるほど余裕はないので仕方ないんですよ。バカだけど充分に伸びしろがあるからね。バカは思いがけない事をしてくれるから、そこから見える道がある」


「バカでも役に立つ事はあるからな」


アノスはフィーナを使えるとは思っていないようであり、意味がわからないとため息を吐く。

その質問にカインは将来性込みでフィーナを使っていると笑うが、アノスは納得ができないようで首を捻っている。

彼の様子にジークは苦笑いを浮かべると最後の朝食を頬張った。


「あの、それは言いすぎじゃないでしょうか」


「そうでもないだろ……」


「ジーク、頑張ってね」


フィアナはフィーナの評価の低さにもう少し言い方があるのではないかと思ったようで手を上げる。

ジークがフィーナへの評価は正当だと答えた時、ジークとノエルがジオスに戻ってきたと聞いた村の老人達が店のドアを開けてホールになだれ込む。

ホールになだれ込んだ老人達は兵士や冒険者達から一画を不法に占拠すると腰痛など身体の不調を訴え、ジークとノエルを呼ぶ。

その様子にげんなりとするジークだが、カインは楽しそうに笑うとジークの背中を押した。


「……やれば良いんだろ。ノエルは休んでいな」


「冒険者や兵士を追い出す人間を診察する必要があるのか?」


「どれ、せっかくだ。私も手伝うか。アノスだったな。手伝ってくれるか?」


ジークはため息を吐くと立ち上がるが、老人達の勢いにアノスは診察をする必要があるのかとため息を吐いた。

レギアスはジークだけでは大変だと思ったのか、立ち上がると何かあるのかアノスに手伝いを求める。


「……なぜ、俺が?」


「うむ。そうだな。アノス、お主はレギアスと小僧を手伝ってこい」


「わかりました」


アノスは意味がわからないと顔をしかめるが、レギアスが何かを考えていると思ったようでラースはアノスに2人を手伝うように言う。

直属の上司でもあるラースに言われては頷くしかできないようでアノスは頷くとふて腐れた様子でジークとレギアスを追いかける。


「あの、アノスさんは大丈夫なんでしょうか?」


「大丈夫じゃないかな? ジークもいるし、それにレギアス様にも何か考えがあるみたいだしね」


「で、ですけど……アノスさん、怒りませんかね?」


ジークに休んでいるように言われたノエルだが、アノスに手伝いをさせるのは不安しか感じないようでジーク達の元に行こうとするがカインが彼女を引き止めた。

ノエルは不安そうな瞳でアノスへと視線を向けるとアノスはすでに老人達に囲まれており、老人達の勢いに巻き込まれてたじたじである。

アノスの性格を考えるといつキレてもおかしくない状況であり、ノエルは別の不安を感じたようで顔を引きつらせ、カインは苦笑いを浮かべた。


「若いからな。多くの人間に触れる事は奴のためになるだろうからな」


「アノスは我慢が足りないからね。もう少し成長して貰わないと、フィーナみたいなバカとは違う方向にね。それにアノスがキレたらジークがどうにかするだろうし」


「だ、大丈夫ですかね」


カインとラースは老人達の人生経験からアノスに多くを学んで欲しいと笑うが、カインの言葉はどこか無責任である。

ノエルは彼の言葉にさらに不安が大きくなったようで顔を青くし、心配そうにジーク達を見つめるが、そこにいる老人達は村でジークだけではなくカインやフィーナの面倒を見てきた強者達である。


「ノエル、舐めたらダメだよ。あの人達はジークだけじゃなく、俺やフィーナ、シルドさんが子供の頃を知っているんだよ……アノス程度が叶うと思っているのかい?」


「まあ、少ししか話をしていないが、あの若い騎士じゃかなわないだろうな」


「……お年寄りは強いですよね」


カインの本心は面倒事をジークとアノスに押し付けたいようであり、苦笑いを浮かべるとシルドは大きく頷く。

ノエルは味方が欲しいようでフィアナへとしせんを向けるが彼女もシギル村に頭の上がらない老人達がいるようで遠くを見つめてつぶやいた。


「あ、あの」


「ノエルも気にする必要はない。それに民と触れるのも騎士としての重要な任務だ。邪魔をしないでくれるか?」


「わ、わかりました」


味方のいないノエルはラースに助けを求めるが、ラースはアノスの成長に必要な事だと言い切ってしまう。

そこまで言われてしまってはノエルは何も言えないようで、彼女は頷くが心配なようで不安そうにジーク達を見つめている。


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