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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
705/953

第705話

「ジークさんの事を探っている人がいたんですか? 大丈夫なんですか?」


「どうなんだろうな」


「どうなんだろうなって、あんた、軽いわね。それで、どうするの?」


ノエルは話を聞き、不安そうな表情をするがジークは今のところ実害がない事や置いてけぼりで話が進んでいる事もあり、苦笑いを浮かべている。

ジークの様子はどこか他人ごとに見えたようでフィーナはため息を吐くと何か考えがあるのかと言いたげにカインへと視線を向けた。


「今のところは実害もないしね。そのままかな? それにジークやばあちゃんが培ってくれていた信頼って言う物があるから、味方も多いみたいだしね」


「俺としては薬屋の店主だって言うなら、もう少しジオスに残っていろと思うけどな。年寄連中が集まっていて大変なんだよ」


「それに関してはカインに文句を言ってくれ」


カインはジークがいない間にも自発的に彼の味方をしてくれる冒険者達がいる事を嬉しく思っているようで笑顔を見せる。

シルドは最近、ジークがいない事の弊害を受けているためか苦笑いを浮かべた。

しかし、その表情からは怒っているようではなく、ジークがフォルムで医師としての経験をつんでいる事を嬉しく思っているように見えるが、ジークはシルドの思いになど気が付いていないようで自分に文句を言われても困るとため息を吐く。


「だけど、あれかな? ワームから冒険者が少しずつ出て行っていたのは送り出した冒険者が捕まって、人員を補給していたって事かな? そうなると集落を攻める部隊は最初より、少なく見積もらないといけないね」


「……ジオスにたむろっている冒険者って、実は優秀だったの?」


「少なくともフィーナよりは実力的にも上だな」


ワームから出て行った冒険者の中には集落を攻める以外にも役割が有った事にカインは少し考えるようなそぶりをする。

フィーナはいつもこの店でバカ騒ぎをしている冒険者達が役に立っている事が信じられないようで眉間にしわを寄せるが、シルドからは呆れたような声で言う。


「……何ですって?」


「フィーナ、事実を言われても怒らない。ばあちゃんが生きていた頃から冒険者をしていて、今も続けて冒険者をしているんだ。実力が伴っていないわけないだろ。ジオスやルッケルにいる冒険者には有能な人間もいるよ。ソーマもその中の1人ね」


プライドを傷つけられたようでシルドを睨み付けるフィーナだが、カインはシルドの方が正しいと言うとジオスにたむろしている冒険者達の実力を正当に評価するためにソーマの名前を上げる。

ラースとレギアスはジーク達の紹介でソーマと懇意にしており、彼の実力を認めているため、大きく頷いた。


「フィーナさん、落ち着きましょう」


「……落ち着いているわよ」


「……全然、落ち着いているように見えません」


フィーナの敵意の視線はシルドからカインに移っているがカインは気にする事はない。

ノエルはこのままではフィーナがカインにまた返り討ちになると思ったようで彼女を落ち着かせようとするとフィーナは落ち着いているとは答えるがその表情はさらに険しくなって行っている。

その表情にノエルは大きく肩を落とした。


「とりあえず、わかった事は強欲爺はずいぶんとジークにご執着みたいだね」


「……爺さんに好かれてもな。気持ち悪いし」


「言いにくいんですけど、レギアス様と仲があまり良くないから、ジークさんを跡取りにしたいんじゃないでしょうか?」


カインはギムレットの考えを全て見通せていないためか、ギムレットがジークをどうしたいのかわからずに首を捻る。

ジークはギムレットに会った事もないためか、よくわからないと言いたげにため息を吐くとフィアナは遠慮がちに手を上げた。


「レギアス様の対抗馬にしたいって言うのも確かにあるとは思うんだけどね。それだけだと理由は弱いんだよ。ジークはレギアス様やラース様と懇意にしているしね。何より、シュミット様からの信頼も厚い」


「信頼も厚い?」


「どうして、首を傾げるかな? もう少し自分の立ち位置を考えた方が良いよ」


フィアナの考えには一理あるのだが、カインはギムレットがレギアスに対抗するためにジークを跡取りにするには理由が弱いと言う。

その理由にはジークが現在、ギムレットと敵対しているワームの主要メンバーと懇意にしている事があげられるがジークはそんな気もしないようで首を捻る。

彼の様子にカインはジークにもう少し自分の重要性を考えろとため息を吐いた。


「今更、次期国王のエルト様にすり寄るなら、変に片意地を張らずにシュミット様にすり寄れば良い。レギアス様と仲が悪いとかなんて二の次にしてね。それができないと言う事はそれができないわけか、それ以上にもっと強欲爺に有益な何かがあるのかも知れないね」


「有益な何か? それって何よ。自分が王様にでもなるつもり?」


「王様って、ワームで独立でもするつもりかよ? それより、いつ、ワームに行くんだ? 飯食い終わってみんな寝そうだぞ」


カインはギムレットの目的がワームでの地位ではないと言う。

彼の言葉にフィーナはバカな事を言うなとため息を吐いた。

彼女のため息交じりの言葉は突拍子もなく、ジークはバカな事を言うなとため息を吐くと食事を終えた兵士達がうとうとし始めたのを見つけて指差す。


「……まさか、眠り薬を?」


「入れるわけがないだろ。部屋と着替えが用意してあるから部屋で寝ろ。そのままの格好で寝るなよ。汗を流せる気力があるヤツは浴場に行け。ジーク、案内しろ」


「良いのか? 時間とか今日中にワームに行きたいって言ってなかったか?」


フィーナは食べている食事に眠り薬が入っていると思ったようで疑いの視線をシルドに向ける。

シルドは大きく肩を落とすと兵士達にホールで寝るなと言い、ジークに手伝いを頼む。

ジークは頷くものの、カインが集落で今日中にワームに戻りたいと言っていた事を思い出して首を捻った。


「今日は良いよ。明日の早い時間には帰らないといけないけどね。ここの警護はやって貰えるからね」


「お金は? シルドさんがただで部屋と食事を用意してくれるわけがないでしょ」


「シュミット様からもぎ取ったから問題ないよ」


カインも罠設置など兵士達に無理させた事には自覚があるようで今日は休みと言うと兵士達からは喜びの声が上がる。

しかし、フィーナはこの人数に部屋を貸すとなるとかなりの金額がかかるため、首を捻るとカインは笑顔で言い切った。

彼の笑顔にジーク達はまた良からぬことが起きると思ったようで眉間にしわを寄せる。


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