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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
703/953

第703話

「ずいぶんと大勢で来たな」


「大勢も何も最初に人数は伝えておきましたよね」


「いや、カインの事だからまた嘘を吐いていると思っていたんだ。ジーク、ノエル、悪いけど手伝ってくれ」


罠を張り終えたジーク達はカイン達の転移魔法でジオスに移動する。

アーカスは村に長居する気はないようですぐに自分の家に戻ってしまい、カインは兵達をシルドの店に案内するとシルドは店に入ってきた人数を見て驚きの声を上げた。

彼の反応にカインはため息を吐くとシルドはカインの事を疑っていたようで悪びれる事なく答えた後、この人数は1人ではさばききれないと思ったようでジークとノエルに助けを求める。


「……ノエルはどうした?」


「ちょっと、野営生活が長かったから、風呂に入ってくるってフィーナに連れて行かれた」


「そうか……ジーク、何かあったか?」


シルドの助けにジークは面倒だと言いたげだが返事をするが、ノエルからの返事はなく、シルドは首を捻った。

汗を流せる場所に来た事もあり、カインからシルドの店でしばらく兵士達に休息を取らせると聞いたフィーナはノエルとフィアナを連れて実家に帰ってしまっている。

ノエル不在の理由を聞き、シルドは苦笑いを浮かべると何か感じたのかジークの顔を見て首を捻った。


「何か? カインにこき使われている」


「それはいつもの事だろ……いや、最近、見なれない冒険者がお前の店を探っているって話があってな」


「俺の店を? 今、持ってくよ」


ジークは相も変わらず、忙しいと言いたいのかため息を吐くとシルドはジークに料理を渡す時に、周囲に聞こえないようにジオスでの冒険者の動きを教える。

シルドの言葉にまったく心当たりのないジークは首を捻ると受け取った料理を兵達に運んで行く。


「店主、今の話はどういう事だ? ジークの店を探っている者は今もこの村に駐留しているのか?」


「悪いね。個人情報を漏えいするのはうちの信頼問題にかかわるからな」


ジークとシルドの会話が聞こえたようでレギアスはシルドに声をかけた。

シルドは冒険者の店を預かっている者として関係ない人間には言えないと首を振り、レギアスはシルドが簡単に口を割るとは思えないようで難しい表情をする。


「で、俺の店を探っている冒険者ってどうなったんだ?」


「……せっかく、個人情報だと気を利かせた俺の行動は無視か?」


「別に気にする必要ないから……最近、知ったんだけど伯父だそうだ」


ジークは料理を運び終えるとシルドの前のカウンター席に座り、先ほどの話の続きを聞く。

彼の様子からは聞かれても困るようでもないと思っている伏しが見え、シルドはため息を吐いた。

それをジークは自分とレギアスの関係がわからないからシルドが躊躇していると思ったようで彼に顔を近づけてレギアスが伯父だと話す。


「……ジーク、おじさんとおばさんが帰ってこないからって、勝手に血縁を作るな。無理にそんなものをでっち上げなくても、ジオス年寄達はノエルとの結婚に同意してくれるから」


「言いたい事はわかるけど、事実みたいだ」


「事実みたいではなく、事実だ。ジークの父親のトリスは正真正銘、私の弟だ」


シルドは妄想だと思ったようで可哀想な子を見るような目でジークを見る。

彼の反応にジークは苦笑いを浮かべるとレギアスはどう反応して良いのかため息を吐く。

レギアスの口から出たトリスの名前にシルドは信じ切って良いのかわからないようでそばにいたセスへと視線を向ける。


「……なぜ、私に確認を取ろうとするのですか?」


「いや、カインでも良いんだけど、カインは正直、信じにくい」


「言いたい事はなんとなく、理解できますわ。ジークの言っている事は本当です」


セスはシルドからの視線に小さくため息を吐くとシルドは何度か話をしてセスが嘘を吐くような人間ではないと判断しているようで苦笑いを浮かべた。

シルドとカインの顔を交互に見た後、セスはジークの言葉が真実だと告げ、シルドは似ている場所を探そうと思ったのかジークとレギアスの顔を交互に見る。


「……見てわかるのか?」


「いや、まったくわからない」


「……意味ないじゃないか? それで、俺の店を探っている冒険者ってどうなったんだ? 純粋に客じゃなかったのか?」


シルドは共通点を見つけられなかったようであり、ジークはため息を吐くと話を戻そうとする。


「人伝でジークの店の噂を聞いたなら、ジークの店が閉まっているなら、この店に来るだろ。店の様子だけうかがって村で宿も取って行かない。怪しいだろ?」


「それは確かに……なあ、アーカスさんの事を探っている可能性はないのか?」


「アーカスさん? いや、そっちで罠に引っかかったって言う被害は聞いていないから大丈夫だ。だけど、なんで、アーカスさんだ?」


シルドはジークの店を探っている冒険者の様子に何かあると判断しており、同意を求める。

ジークは頷くが集落でアーカスが狙われている可能性を聞いた事もあり、自分ではなくアーカスが狙われているのではないかと言う。

シルドはアーカスの名前が出てきた理由に首を捻り、ジークに聞き返す。


「いや、アーカスさん、ハーフエルフだろ。捕まえて売られるとかあったら困るだろ?」


「それはあるかも知れないけどな……あの人を捕まえるってなると相当の実力者を集めないとダメだろ。カインクラスを最低でも10人居れば足りるか?」


「カインが10人? それは見たくない光景だな」


ジークはアーカスが希少種だと改めて言うと、シルドは頷くが彼はアーカスを捕らえるほどの実力者などそう簡単に出てこないと言いたいようで苦笑いを浮かべた。

シルドの例えはジークにとってはあまり想像したくないものであり、彼の眉間にはくっきりとしたしわが寄る。


「……例え話だからな」


「いや、意思疎通は出来てもコマが足りないから10人集まっても無理だろうね」


「お前も本気で答えるな。それより、話を戻しても良いか?」


シルドはジークの様子にため息を吐くが、カインは真剣な表情でアーカスを捕らえるのは重労働だと答えた。

彼の様子にシルドは大きく肩を落とすとジークの店の周りを探っていた冒険者の話に戻して良いかと確認を取る。


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