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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第701話

「セスさん、本当にカインは来るんですよね?」


「……そう聞いていますわ」


セスが集落に到着してからしばらく時間が経ったのだがカインは集落に訪れる事はなく、日が沈み始めている。

ジークは念のためにとセスにカインと約束した日に間違いはないかと聞くとセスは自分が勘違いしているかも知れないとも思っているのか眉間にしわを寄せた。


「カインさんに何かあったんですかね?」


「何か? ……ないな。あるとしたら、1人で爺さんの兵士を壊滅させるとかだな」


「……あのクズならやれそうな気がするのが不思議なところね」


カインが約束を破るとは思えないようでノエルは心配そうな表情をするが、ジークの頭に浮かぶのは手段を選ぶ事無く、敵対するギムレットとその一味を一掃しているカインの姿である。

頭で思い描いてしまったイメージを振り払うようにジークは大きく首を横に振るとフィーナも同じ事を考えてしまったのか眉間にしわを寄せた。


「さ、さすがにそれは無理だと思うんですけど」


「……方法を選ばないで良いなら、やれると思うな」


「敵味方の被害を考えなければどうにかするよ」


フィアナはジークとフィーナの考えを否定しようとするがどこかで否定しきれないようで顔は引きつっており、ジークは無理をするなと言いたいのか首を横に振る。

その時、ジーク達の背後からカインの楽しそうな笑い声が聞こえ、ジーク、フィーナ、フィアナの表情は凍り付いて行く。


「……どうして、背後に現れる?」


「きっと、俺の悪口を言っているだろうから、その場を押さえようと思ってさ。この間、ワームに帰る前に魔法陣の外に移動場所を作っておいただけだよ」


ジークの質問にカインは楽しそうに答えるとジークとフィーナの肩をつかみ、笑顔のままその手に力を込めて行き、その場には2人の悲鳴が響く。

フィアナはジークに同調してしまった事で次は自分が同じ目に遭うと思ったようで身体を震わせてセスの背後に隠れる。


「カイン、いつまで遊んでいるつもりですか?」


「そ、そうですよ。ワームは大丈夫なんですか?」


「そうだね。予想に反して静かにしているよ。どうやら、こっちではなく、他の方法で戦う気みたいだね」


背後で震えるフィアナに抱き付きたい気持ちを何とか抑えたセスはカインに話を進めるように言う。

ノエルは大きく頷き、賛同する事でジークとフィーナを助けたいようだが、カインは力を緩める事無く2人を地面に転がせるとギムレットの動きが静かなため、考えを改めなければいけないとため息を吐いた。


「他の方法? 直接やり合うつもりだと言う事か?」


「そうなるだろうね。やっておいて言うのもなんだけど、魔族と友好関係を結びましたってある意味反乱の意志を示しているような物だからね」


カインの言っている事を理解したようであり、険しい表情をするアノス。

彼の言葉にカインは頷くと危険な事をしていると改めて説明し、ノエルは悲しそうに顔を伏せてしまう。


「で、でも、この集落のゴブリンさんもリザードマンさんも別に戦いたいと思っているわけじゃないです。それなのに戦争を起こす必要はないじゃないですか?」


「……そうだな」


フィアナは世間一般的に言われている魔族とは相成れないと言う考えを否定したいようでセスの背後から顔を出して言うと、わずかな時間とは言え、魔族と共同生活した事で考えが軟化してきたのかアノスも小さく頷いた。

それはプライドの高い彼の本音が漏れてしまった瞬間であり、アノスはすぐに表情を引き締めて何事もなかったかのように誤魔化そうとするが、カインの耳にはしっかりと届いていたようでカインは小さく口元を緩ませており、彼の表情にアノスは忌々しそうに舌打ちをする。


「と言う事で、ワームに戻る準備をするよ。レギアス様とラース様にはその話はしてあるから、ジーク、フィーナ、遊んでないで働く」


「……どの口で言うんだ?」


「セス、運んできた物資はどこ? 必要な物も入れておいたんだけど」


カインは手をぱんぱんと叩くと転がっているジークとフィーナに声をかける。

ジークは痛む肩をさすりながら、立ち上がると文句ありそうにカインを睨み付けるがカインは気にする事はなく、セスにフォルムから運んで貰った物資について聞く。


「必要な物?」


「人族の兵士が撤退するんだ。俺達がいなくなった時を狙って襲撃してくる事だって考えられるだろ。それなら、その準備の1つや2つや3つや4つや5つ」


「……多くないですか?」


ノエルは首を捻るとカインは集落を守るために必要な事だと言う。

しかし、彼の言葉からフィアナはカインがまた悪巧みをしていると思ってしまったようで顔を引きつらせる。


「安全を確保するには必要な事、それに頭を使うなら他人の命を奪うより、守る方に頭を使いたいだろ? ここを襲ってくる人も金に目がくらんだり、たぶらかされたりと色々だろうけどね。準備1つで助けられるなら、助けてあげないと」


「はい」


カインは集落を襲ってくる者達相手にも情けをかけるつもりのようでくすりと笑う。

彼の意見にノエルは大きく頷くがジークは素直に頷く気にはなれないようで頭をかき、その姿にセスは仕方ないと言いたいのか小さくため息を吐いた。


「それで、準備って何をすれば良いんだよ?」


「とりあえず、移動先はこの位置なんで落とし穴、集落の外には罠ね。何人か声をかけていたけど、フィーナとアノスの体力組は落とし穴ね。ジークは集落の外で罠ね……」


「……おい。なんで目をそらす? なんで、こんな場所に?」


セスに表情を読まれてジークは慌てて本題に移そうとするとカインは指示を出すが、カインの視線はジークからそれて行く。

その様子にジークは嫌な予感がしたようであり、眉間にしわを寄せるとカインは指で集落の1ヵ所を指差し、ジークが指の先へと視線を向けるとアーカスが集落のリザードマンの1人を捕まえており、予想していなかった人物の登場にジークの眉間のしわはさらに深くなって行く。


「いや、罠と言ったら、アーカスさんかな? と思ってさ。いろんな罠を仕掛けられるって言ったら2つ返事で引き受けてくれてさ」


「……死人が出るぞ」


「まったくね」


カインはどこかで失敗したと思っているのか苦笑いを浮かべた。

アーカスが罠を受け持ってくれる事にジークとフィーナは不安しか感じないようで大きく肩を落とし、ノエルは苦笑いを浮かべているがアーカスの罠の威力を知らないセス、フィアナ、アノスの3人は首を捻っている。


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