第70話
「しかし、こう考えると無駄な争いを起こそうとしているのが人間な気がするのはなんか悲しくなるよな」
「そうね」
ジークとフィーナはノエルの話に大きく肩を落とす。
「でも、やっぱり、争いの根は根深くて」
「……それは魔族にもやっぱり遺恨があるって事だよな」
ノエルは悲しそうな表情をするとジークは彼女の言いたい事がわかるようで頭をかく。
「ノエル、仮にその遺恨がある魔族がその転送装置を使って、こっちにきたら、どうするの?」
「そ、それに関しては問題ありません。かなり古い転送装置らしくて、発動するにはかなりの魔力を大地からくみ上げないといけないらしいんです。魔力の性質の問題でわたし達魔族の魔力では起動しないって」
フィーナは人族に恨みのある魔族達が転送装置を使った場合を考えて顔を引きつらせるとノエルは慌てて、転送装置が起動するにはかなりの時間を有する事を説明する。
「となると、一先ずは問題ないのか?」
「はい。大丈夫です」
ジークはノエルが嘘を吐けるような娘ではないため、小さくため息を吐くとノエルは大きく頷く。
「とりあえずはその魔族達に転送装置がバレない事を願うまでだな」
「そうね。いくら、魔力を貯めるのに時間がかかるとは言え、魔力を無理やり吸い上げたりとか方法を考えられたら、大変よね?」
ジークとフィーナは最悪の展開になるのは避けたいが、自分達には何かをできるわけもない。
「ばれないようには隠してはきましたし、大丈夫です」
「……ジーク、ノエルが隠したって言ってるけど、ばれないと思う?」
「……もの凄く簡単に見つかりそうな気がする」
ノエルは転送装置をしっかりと隠してきたと自信ありげに答えるが、彼女の様子がジークとフィーナの不安をあおる。
「ど、どうしてですか!?」
「いや、ノエル、素直だし、転送装置がどれくらいの大きさかわからないけど、枯草とかをかけてくらいだと簡単にばれるからな」
「ジーク、子供じゃないんだから、そんな子供みたいな隠し方、いくらなんでもないわよ」
「……」
ノエルは驚きの声をあげるとジークとノエルは不安を脱ぎ払うように冗談めかしてノエルが転送装置を隠した方法を予想するとノエルは気まずそうに視線を逸らす。
「ノエル?」
「……ひょっとして、枯草をかけてきたの?」
「は、はい。小さな遺跡への転送装置の魔法陣を見つけて、そこから、新たな魔法陣でこの村の近くに飛んできたんですけど、最初の魔法陣の上に枯草をかけてきました」
ノエルは申し訳なさそうに自分がしてきた偽装工作を話すとあまりの粗雑な方法にジークとフィーナは顔を引きつらせた。
「ノエル、あんた、ドレイクでしょ!? 魔法で結界をかけてくるとか、誤魔化すとかできないの!?」
「そ、そうでした。魔法を使えば良かったんですよね。す、すいません」
フィーナはノエルが魔族の高位種のドレイクのため、魔法で隠して来いと声をあげるとノエルはそこで初めて気が付いたようであり、慌てて頭を下げる。
「ま、まぁ、魔族の領地なら、魔法で誤魔化した方がばれるかも知れないし、そんなチンケナ方法で転送装置も隠されてないと思うし、大丈夫だろ……そう信じよう」
「そ、そうね」
ジークとフィーナは脳が追求するのを諦めたようであり、転送装置が見つからない事を切実に願った。