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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第699話

「いつまで待たせるのよ?」


「そんな事を俺に言っても仕方ないだろ」


カインの指定した場所の観察をし始めてしばらくするとフィーナは待ちきれなくなったようで文句を言い出す。

彼女が文句を言おうが、結局はギムレットの手駒である者達次第であり、ジークは騒いでないで静かにしていろと言いたげにため息を吐いた。


「ですけど、ずっと見ているのは疲れます」


「そうよね。ジーク、何かやる事ないの?」


「……落ち着いていろ」


フィアナもずっと観察をしているのは精神的に疲れるようで不安を漏らす。

賛成意見が出た事でフィーナは態度を大きくしてジークに何かやるべき事はないかと聞く。

アノスは余計な事をしていないで静かにしていろと言いたいようで舌打ちをするとフィーナは気に入らないのか彼を睨みつける。

彼女の視線にアノスは引く事無く、睨み返すと2人の間には今にもぶつかり合いが始まり出しそうな空気になって行く。


「そう言えば……あんたとの決着がついてなかったわね」


「……やるか?」


フィーナは昨日のアノスとの手合せが中断してしまった事を思い出したようで剣に手をかける。

彼女の態度にアノスの視線はさらに鋭くなり、フィーナとの決着をつけようと考え始めたようで殺気を放ちだす。


「フィーナさん、どうしてケンカをしたがるんですか?」


「別に私がケンカを売っているわけじゃないわよ」


「……いや、ケンカを売っているだろ。2人とも余計な事で体力を使うなよ」


ノエルは今にもぶつかり合いそうな険悪な2人の空気に慌ててフィーナの手をつかむ。

フィーナはノエルに言われると責任をアノスに擦り付けようとし、ジークは大きく肩を落とす。


「アノス、騎士ならこういう時の対策って聞いていないのか? お前が攻めるとしたら、どのくらいで仕掛けてくるんだ?」


「……本来なら、何事もないと気が緩み始めた頃だろうな。裏切り者は捕縛した。森の中で集落を伺っていた者も同等にだ」


「本来ならって事はそうは限らないって事だな」


フィアナが説得に加わり、フィーナはノエルとフィアナの説得で何とか剣から手を放すがその表情からは文句がすぐに出てきそうである。

ジークは彼女の様子にため息を吐くと騎士であるアノスに軍隊ではどの時間帯に注意しなければいけないかと聞く。

その質問にアノスは少し考え込むが、今回は相手もタイミングを変えてくるのではないかと答え、ジークはアノスの言葉に何かが引っかかったようで頭をかいた。


「あの、そう限らないって言うのは?」


「情報は上手く届けられてないだろうし、ないとは思いたいけど冒険者が主戦力だって考えるとフィーナみたいな何も考えない人間が多く含まれている可能性も否定できないからな」


「……作戦開始時間まで待てない奴がいそうだな」


ノエルはジークが何を考え付いたか気になったようで首を捻る。

ジークはアノスが言うのあくまでも部隊同士の戦いであり、相手の詳細がわからないと作戦を立てる事ができないとため息を吐いた。

冒険者の中にフィーナと同等の人間が含まれていた場合に考えられる事は作戦な無視して暴走する事であり、アノスは理解できないと言いたいのか眉間にしわを寄せる。


「……フィーナと同程度のバカがいない事を祈ろう」


「あ、あの、ジークさん、お願いですから言葉を選んでください」


「ノエル、悪いな。フィーナの性格を考えれば言葉を選んでいる猶予はない」


今度はジークに敵意を見せるフィーナの様子に間に挟まれたノエルはジークに頼み込む。

しかし、ジークはフィーナに現実を知らしめるためには必然な事だ思っているようで意見を変える事はない。


「あ、あの、みなさん、あれ」


「来たか?」


その時、カインが指定した場所がまたも淡い光を上げ始める。

それに気が付いたフィアナが光の下を指差すとアノスは視線を鋭くして剣に手をかけた。


「あれ? みんなでお出迎え?」


「……カイン」


「期待に応えられなくて悪かったね。この様子だとまだ何を進展もないみたいだね」


光が消えるとその場所にはカインが立っており、ジーク達の様子に苦笑いを浮かべる。

時間をかけた割にでてきたのがカインであり、その場には微妙な残念感が広がって行く。

カインは小さくため息を吐くとジーク達の様子から、まだ、襲撃を受けていない事は察しがついたようで首を捻った。


「そっちは集落に戻ってきて良いのかよ? 転移魔法の移動場所が固定されたなら、ワームに戻れないだろ」


「いや、魔法陣の外で使えば、普通に移動できるから、あくまで転移魔法を使える魔術師相手に隙を突くだけの奇策だから、抜け道なんていくらでもあるよ。まだ、実験段階の魔導機器だしね」


「なるほど」


カインが集落に戻ってきた事にジークはワームが心配になったようで首を捻るとカインは簡単に他の場所に移動できる方法を話す。

その答えはまったく予想していなかったようでジークは頭がまわらなかった事を恥ずかしく思ったのか首筋をかき、ノエルとフィアナは恥ずかしそうに目をそらした。


「……これは誰も気が付いていなかった流れ?」


「言うな」


「そうしとくよ。それより、ジーク、何人か手伝いを呼んで貰いたいんだけど」


3人の様子にカインは小さくため息を吐くとカインは集落に来るついでに荷物を運んできたようでカインの足元には木箱が4つ置かれている。


「何を運んできたんだ?」


「食糧に毒が混入される事も考えられるって言う報告をしたら、シュミット様がすぐに物資を用意してくれたんだよ。兵士達の安全を守る事も大切な仕事だと言ってね」


「それは悪いことしたな」


ジークは木箱を指差すとカインはシュミットの心づかいだと言い、ジークはシュミットの厚意を純粋にありがたいと思ったようで苦笑いを浮かべた。


「……そのシュミット様は本物?」


「フィーナさん、どうして、そういう事を言うんですか? 素直にお礼を言えないんですか?」


「仕方ないでしょ。簡単に評価なんか変わらないのよ」


シュミットがそこまで気を使えると思っていないフィーナはカインが運んできた物資を疑う。

彼女の様子にノエルはため息を吐くがフィーナは自分は悪くないと言い切り、その場所はフィーナが言うなと言う微妙な空気が広がって行く。


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