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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第692話

「とりあえず、フィアナはアノスになれてくれ。時間もないから、そろそろ行かないとな。ノエル、フィーナ、飯食い終わったら行くぞ」


「は、はい」


「えー、私も行くの? 面倒」


ジークは食事を終えたようで食器を重ねるとこのままでは何も進まないと判断したようでノエルとフィーナに声をかけた。

ノエルは返事をするが、まだ、食事を食べ終わってないため、慌てて食器の上に残っている食事を口の中に運び、フィーナは面倒な仕事はしたくないと言いたいのか不満げな声を上げる。


「仕方ないだろ。森の中を自由に動けるのは限られているんだから、重い鎧を着ている兵士や騎士は動きにくいだろ」


「そうかも知れないけど、せっかく、フォルムに戻って汗を流してきたのに」


「一応、シュミット様は報酬を出してくれるって言っているんだから、報酬分は働かないとカインに沈められるぞ」


ジークは森の中の移動は兵士達より、自分達の方が向いていると判断しているようで彼女の様子に大きく肩を落とす。

それでもフィーナは納得ができていないようでぶつぶつと文句を言っており、ジークは彼女に対するしつけに厳しいカインの名前を出すとフィーナの眉間には深いしわが寄り始める。


「……わかったわよ。だけど、この3人で行くの?」


「フィアナとは目を合わせるな。こっちに付いてきて貰うより、アノスと目を合わせて話す方が重要そうだからな」


「そうね……」


フィーナは観念したようで大きく肩を落とすが単純に3人では戦力が不足していると思ったようで首を捻った。

その時、フィアナと目が合ったようであり、フィーナは彼女から気まずそうに視線をそらす。それはこの場から逃げ出したいと言うフィアナの思いが見て取れ、ジークはギアナに連れて行かない事を強調して言い、フィーナは逃げるように食器を片付けてこの場から離れて行く。


「ジークさん……」


「そんな目で見てもダメだ。それに魔術師を2人も連れて行ったら、こっちで何かあった時に対応できないだろ?」


「ギドさんがいますから、大丈夫です」


フィアナはジークを説得しようと彼の名前を呼ぶが、ジークは彼女に冒険者として依頼を受けた内容を思い出すように言う。

それでもフィアナは魔術師ならギドがいると言い、アノスの前から逃げ出そうとしており、ジークは大きく肩を落とす。


「フィアナはずいぶんと魔族と信頼を築いたようだな。この集落に来た時はもっと警戒していたのにな」


「そ、それはジークさん達も信頼していますし、それにさっき話して見たら、悪い人達ではありませんでしたし」


「フィアナにゴブリン族やリザードマン族よりアノスの方が恐ろしいと、言われておるぞ?」


レギアスはジークとは違う印象を受けたようで表情を和らげるとフィアナの中では人族と魔族が混ざり合ってした恋愛談義で魔族達にも親近感を持ったようである。

彼女の言葉にラースは1つ思う事があったようでアノスをからかうように笑った。

アノスは魔族と比較された事にも納得ができないが、見た目がまったく違う魔族より、フィアナに怖いと思われている事に納得がいかないようで眉間にしわを寄せている。


「そ、そんな事はないです!?」


「それなら、どんな事だ?」


「……なんと言うか、この2人は相性が悪いと言うか、タイミングが悪いな」


アノスの気分を害してはいけないと思ったフィアナは大きく首を横に振った。

しかし、アノスは彼女の反応に納得できないようで眉間にしわを寄せたまま聞き、フィアナはアノスの質問に後ずさりをする。

2人の様子にジークは頭をかくとさらに関係を悪化させたラースを睨み、ラースは気まずいのか目を泳がせた。


「ただ、とりあえずは最初のアノスの質問には答えただろ。魔法云々はまた今度にしてやれよ」


「最初の質問?」


「魔族と共存できるかってヤツだ。少なくとも話し合いが成り立つ事を身を持って体験したんだから、いきなり殺し合いって事にはならないだろ?」


おかしな方向に進んでいるためか、ジークは仲裁に入り、アノスはずいぶんと頭に血が上っているのかジークの言葉の意味がわからずに彼を睨みつける。

ジークはアノスの反応にため息を吐きながら、話を最初に戻せと言う。


「そうでした……答えが出てました」


「アノスの被害も無駄じゃなかったって事で良いだろ?」


「……貴様、あの中にいなかったからか、ずいぶんと他人事だな?」


フィアナはジークに言われて初めて気が付いたようできょとんとした表情でつぶやくと彼女の様子にジークは苦笑いを浮かべた。

アノスはあの時の事を思い出したようで眉間に深いしわを寄せて聞き返す。


「いや、他人事も何もこっちを睨まれても困る。だいたい、あの時におっさんがノエルとフィアナを止めなかったのが悪いんだから」


「えーと、わ、わたし達も熱くなったのは否定しませんけど、拡大させたのはラース様ですからね」


「待て。ノエル、ワシ1人を悪者にするのはおかしいぞ。元々はお主達が始めた事だ」


ジークはアノスに文句を言われる筋合いなどないと言い切り、ノエルはアノスに怒られたくないためか原因はラースにあると言う。

ノエルの言葉にアノスの視線はラースに向けられた。

恋愛談義に巻き込まれている時はアノスにとってはかなりの苦痛だったようで有り、ふつふつと怒りが湧き上がってきたようでその視線は人を怯ませるくらいの圧力がある。

ラースはその視線に怯んでしまったようで主犯はノエルだと言うとアノスは視線をノエルに動かした。


「ジ、ジークさん、そろそろ、カインさんから頼まれた事をしてきましょう。あまり遅くなるといけませんから、フィーナさんも待たせていますし」


「ノエル、明らかに今、逃げ出そうとしているよな?」


「そ、そんな事はないですよ」


アノスの視線に耐えきれなくなったのか、ノエルは食器を慌てて重ねるとジークにカインからの指示を終わらせて来ようと言う。

彼女の様子からこの場から逃げ出したいと言うのは見え見えであり、ジークは大きく肩を落とすとノエルは大きく首を横に振り、ジークの腕を引っ張って行く。


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