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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第691話

「あ、あの……」


「フィアナさん、頑張ってください」


フィアナは言葉を絞り出そうとするがなかなか出てこないようであり、目を伏せてしまう。

そんな彼女の気持ちが誰よりもわかるようでを応援するようにノエルが声をかけ、フィアナは味方がいる事に少しだけ緊張が和らいだのか小さく頷いた後、アノスへと視線を向ける。


「……ダメそうだ」


「そうね」


しかし、フィアナはアノスと視線が合うとすぐに怯んでしまい、目を再び伏せる。

ジークは小さく肩を落とすとフィーナは結局、フィアナ次第だと思っているようで食事を頬張って行く。


「……俺が悪いのか?」


「フィーナもさっき言っていたけど、眉間にしわを寄せているのが悪い」


「何度も言わせるな。眉間にしわなど寄せていない。それに怖いと言うなら、笑顔で近づいきておいて、必要な時に変わるような人間の方が恐ろしいだろ」


流石に何度も目をそらされると傷ついてきたようでアノスは小さな声でつぶやく。

怖がられる理由はないと思っているようで原因を探そうと考え込み始めるが、考えれば考えるほど眉間のしわは深くなっており、彼の表情にジークは苦笑いを浮かべる。

アノスは心外だと言った後、エルトの凄味に押された時の事を思い出したのか小さく肩を震わせた。


「あれは計算でやっているんだろうからな。カインの笑顔にも同じものを感じる時がある」


「そうだ。俺に文句を言うなら、カイン=クロークにも文句を言うべきだ」


「普段は笑顔を振りまいているからな。あれで他人をだますんだ」


アノスや新米騎士達に有無も言わせなかったエルトだが、ジークはシュミットを許すと言った時など何度か真面目なエルトを見ている事もあり、普段とのギャップに苦笑いを浮かべたまま頷く。

ジークの言葉を聞き、アノスはノエルやフィアナと言った自分を見て怯える人間がカインと普通に談笑をしているのが納得いかないと言い、ジークはあの笑顔に作為を感じると頷いた。


「まったくね。セスさんも気が付いたらだまされいてたわけだし……」


「何だよ?」


「あんた達、ずいぶんと仲良くなったわね」


カインの笑顔に作為的な物を感じているのはジークとアノスだけではなく、フィーナは参道の意志を見せるが何か引っかかったようでジークへと視線を向ける。

フィーナが何か言いたい事に気が付いたジークは首を捻ると、彼女はジークとアノスを交互に見て言う。


「……別に仲良くなったつもりなどない」


「そう言う反応だろうな。別に誰かに仲良くなったと言われて一喜一憂するようなもんでもないしな」


アノスはおかしな事を言うなとフィーナを睨み付けるが、彼女はノエルやフィアナとは違って彼の眼力に屈する事無く食事を続けている。

ジークはアノスの反応に口元を緩ませるも特にフィーナの言葉に何か言う事もないようで食事を口に運ぶ。


「あ、あの、そろそろ良いでしょうか?」


「ああ、もう大丈夫なのか?」


「は、はい。そうですよね。カインさんのあの笑顔に比べたら怖いものなんて何もないですよね」


その時、フィアナは落ち着いたようで遠慮がちに手を上げた。

ジークはまた、同じ事になっても困るため、もう少し時間を取った方が良いのではないかと聞くとフィアナはさっきのジーク達の話を聞いていたようでカインの方が恐ろしいと判断したようである。


「それに関して言えば同感だけど、気をつけろよ。あいつの事だからな。いなくなっても使い魔の1匹や2匹、置いて行っていてもおかしくないからな」


「そ、そうでした。べ、別に私はカインさんが怖いと言う事では!?」


「……フィアナ、言っといてなんだけど、居ないから謝ってないで続きを話してくれ。話を折って悪かった」


ジークはフィアナの言葉に頷いた後、彼女をからかうように笑う。

フィアナはカインを怒らせては後が怖いと思ったようで周囲を見回し、誰もいない方向に向かってこの場にいないカインに向かい何度も頭を下げる。

彼女の様子にジークは悪い事をしたと思ったようで謝り、話の続きをするように促す。


「は、はい。良いでしょうか?」


「……ああ」


「アノス、眉間にしわが寄っているぞ。騎士は目で敵を威圧しなければいけない場合もあるが、民を威圧してはならん。笑え」


フィアナは小さく頷き、アノスへと視線を向けるとアノスと目が合い、少し視線をずらした。

その様子にラースはアノスにも情報する必要性があるため、騎士として必要な事だと言い、彼に笑うように指示を出す。


「それは命令でしょうか?」


「そうなるな」


「……命令で笑えって何よ?」


アノスは笑顔になる意味がわからないようで従う必要はないと言いたいようだが、ラースは命令だと言う。

あまり聞かない笑顔になれと言う命令が目の前で繰り出されている事にフィーナはため息を吐いた。

アノスはフィーナを睨み付けるが、上役からの命令に無理に笑顔を作ろうとするが、あまり笑顔と言うものになれていないのか、笑顔と言うものとは程遠く、ノエルとフィアナは再び、アノスと距離をあけてしまう。


「……おっさん、レギアス様、いつまでたっても終わらなさそうなんだけど」


「そうだな……」


「ねえ。笑えないなら、強制的に笑顔にできないの? ワライダケとか口の中に突っ込んでみる? この辺にも生えているでしょ? おばあちゃんにきつく言われた記憶があるから、それくらいなら私でも採って来れるわよ」


アノスの笑顔になってもいない笑顔にジークは大きく肩を落とす。

レギアスもこれ以上、時間をかけられない事は理解できたようで小さく頷くがどのように話をまとめて良いか考え付かないようで難しい顔をしている。

そんななか、フィーナはアノスを無理やり笑わせる方法を提示するがその方法はあまりに乱暴であり、ジークとレギアスの眉間にはくっきりとしたしわが寄った。


「……流石に乱暴だから止めろ」


「それに笑っていて話を聞く余裕もなくなるだろうからな」


「そう? 良い方法だと思ったんだけど」


フィーナは自分の考えた方法が否定された事が面白くないようで唇を尖らせる。


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