第69話
「ノエル、大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」
街道に戻り、鉱山へと進む道を歩くなか、ジークはノエルの体力が尽きて来ている事に気が付き彼女に声をかけるがノエルは迷惑をかけてはいけないと思っているようで笑顔を見せる。
「少し休憩するか?」
「そうね」
ノエルが無理をしている姿にジークは苦笑いを浮かべるとフィーナは彼に賛同を示す。
「わ、わたしなら、大丈夫です。早くしないと日が沈んでしまいますし、急ぎましょう」
「いや、どれだけ急いでも鉱山に着く前に日が沈むから」
ノエルは頑張れると答えるがすでに息も絶え絶えであり、ジークはため息を吐いた。
「まぁ、日が沈む前に野営のポイントまで行ければ良いから、ノエルも座る」
「は、はい」
ジークは野営のポイントも決めているようで、ノエルを休ませるために自分が1番最初に休憩のために街道の脇に座り込むとノエルはふらふらとしながら、ジークの隣に座る。
「しかし、ノエルは体力がないわね……そう言えば、どうやって、村まできたの?」
「……そう言われればそうだな」
フィーナは荷物から水筒を取り出し、ノエルに水を渡すと、体力のないノエルがどのようにして自分とジークが住む村まで着いたのか疑問に思ったようであり、ジークはノエルへと視線を移す。
「どうかしましたか?」
「いや、ノエルって体力がないし、野営をするような荷物も持ってきていなかっただろ。よく、村まで来れたなと思ってさ」
ノエルはフィーナから受け取った水筒でのどを潤すと2人の視線に気が付いて首をかしげ、ジークは苦笑いを浮かべながら、疑問をぶつける。
「それは……」
「何? 聞いちゃいけなかった?」
ノエルは言葉を濁すとフィーナは彼女の様子に首を傾げた。
「そう言うわけでもないんですけど、話をして、ジークさんとフィーナさんを混乱させるわけにもいきませんし」
「混乱? ……どこかにノエルの住んでいた場所につながる転送装置とかあったりする?」
「何を言ってるのよ? そんなものがすぐそばにあったら、村だけじゃなく、王都まで大混乱よ」
ジークはノエルの言葉に冗談めかして転送装置があるのかと言うと、フィーナは呆れたようにため息を吐く。
「はい……わたしのお父様が管理している領内の端で見つけた物なんですけど、残っていた文献などで調べて、ジークさん達の村のすぐそばまで飛ばせると書いてありましたので、お父様には内緒で使わせていただきました」
「……それって、ノエルと違って人間の事を殺したいと思っている魔族が飛んでこれるって事じゃない?」
ノエルは言いにくそうに話をするとフィーナは最悪の状況を思い浮かべたようで彼女の顔はひきつって行く。
「だ、大丈夫です。その文献を調べてくれた方は、人族に何も恨みはありませんし、お父様が統治している領内では人族と争おうと考える方はあまりいませんから」
「ノエルのお父さんも平和主義って事か?」
「はい。争いは何も生みませんから」
ノエルは慌てて、自分達からは人族に危害を加える事はない事を強調する。