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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第681話

「レギアス様、何かわかったの?」


「ジーク、フィーナ? ラースは一緒ではないのか?」


ジークとフィーナが移動した先にはレギアスが難しい表情で立っている。

レギアスを見つけてフィーナが手を振ると2人に気づいたレギアスはラースがいない事に首を傾げた。


「……聞かないでくれ」


「いろいろと大変だったのよ」


「そうか。ラースも熱くなると周りが見えなくなるところがあるからな」


ジークとフィーナは3人に捕まっているアノスの顔を思い浮かべたようで首を横に振るとラースと長い間、付き合いのあるレギアスは何かを察したようで大きく肩を落とす。


「それで、結局、何が有ったかわからないんだけど、何か話したのか? おっさんは俺達にも聞いておいて欲しい話があるって言っていたけど」


「うむ。ジークとゼイが先に捕縛した者は協力的なのだが、他の2人はあまり話をしてくれなくてな」


「ジークの栄養剤()の出番ね」


レギアスの様子にジークは苦笑いを浮かべると改めて、彼に何が有ったかと聞く。

ラースが2人を呼びに来るほど有益な情報が得られていないのか、レギアスは首を横に振るとフィーナは自白剤代わりにジークの栄養剤を使いたいのだと思ったようでポンと手を叩く。


「……そんなわけあるか」


「いや、栄養剤は昨日の分が残っていたから、改めて貰えないかと言う話ではないのだが……」


「それならどうしたの?」


ジークは栄養剤を毒薬や自白剤代わりに使われる事に納得していないため、眉間にしわを寄せる。

彼の様子にレギアスは言い難そうにすでに栄養剤を自白剤に使った後だと言うと、フィーナは自分達を呼び寄せた理由がまったくわからなくなったようで首を傾げた。


「……実は普通にあの栄養剤を飲んでしまってな。それも一言、美味いと」


「……そいつら人族か?」


「ジーク、その意見には賛成だけど、あれだけ否定しといて自分で言ったらダメじゃない?」


レギアスもアリア直伝のジークの栄養剤の不味さを知っており、飲ませておきながら言う事ではないが信じられないと眉間にしわを寄せて言う。

ジークは信じられない事が起きてしまった事に険しい表情をして聞き返すとフィーナは大きく肩を落とす。


「種族が違っても魔族同士はわかると言う事だからな。ギド達にも協力して貰ったのだが……間違いなく人族だそうだ」


「……それは見てみたいわね」


「味覚障害か何か?」


人族とは異なる感覚を持った魔族である事も否定できないため、レギアスはギド達にも協力して貰ったようだが間違いなく人族だと結論が出たようである。

フィーナは信じられないと言いたいのか眉間にしわを寄せ、ジークに至っては栄養剤を飲み切った2人は病気なのではないかと大真面目な表情で言う。


「その可能性も否定はできないが、今は情報を得られないと言う事が問題でな」


「え? でも協力的な人も居るのよね。それなら良いじゃない?」


「3人捕えたんだから、情報が共有できているかも知りたいんだろ。カインが何かつかんでないかだな」


情報が不足していると言うレギアスにフィーナは充分だと思ったようで首を傾げる。

ジークはレギアス達が何を考えているかわかったようで小さく頷くとフィーナに視線を向けた。

それは使い魔で森の中の様子をうかがっているカインが何かつかんでいないかと思ったようで先ほどまで一緒にいたフィーナに何か知らないかと言う意味が込められている。

しかし、フィーナはジークの視線になど気が付いていないようで1人の話でも充分だから何かしらの行動に移そうとレギアスに言っている。


「……フィーナ、カインは何か言っていなかったか?」


「え? あいつが何よ?」


「お前、さっきまでカインと一緒だったんだろ。何かないのかよ? カインと話した事の1つでも思い出せよ」


ジークはフィーナをレギアスから引き離すとため息交じりでカインから指示がないかと聞く。

質問の意味が本当に理解できないようでフィーナは首を捻り、ジークの眉間にはくっきりとしたしわが寄った。


「何かって……あ、そう言えば、初めてこの集落に来た時に距離をとって様子を見ていたでしょ。その辺に敵がいないか調べているって言っていたわ」


「どことどこを調べたって言っていた?」


「知らないわよ。フィアナと魔族との共存の話になったりもしたし、だいたい、聞いていても地図もないのに私が場所をわかるわけがないでしょ。聞きたいならあいつのところに行ってきたらいいでしょ」


フィーナは文句があるのかぶつぶつと言いながらも、カインとの話を思い出すが特に有益な情報はなさそうである。

ジークは役立たずと言いたいのか小さなため息を漏らすとフィーナは額に青筋を浮かべながらカインがいる建物を指差す。


「魔族との共存の話か? フィアナはなんと言っていた?」


「悩んでいたわよ。と言うかジークの方が詳しいんじゃないの?」


「いや、気が付いたら恋愛話になっていたから良くわからない」


レギアスはフィアナの能力を高く買っているようでカインが彼女を味方に引き込もうとしている事に予測が付いたようで彼女の出した答えを聞く。

フィーナはノエルから遅れて彼女を探しに来たものの、見つけた時にはすでにおかしな火が点いていたため知らないとため息を吐いた。

話を振られたジークも恋愛話に盛り上がる女性陣にはついて行けないようで困ったように笑う。


「……話がまったく理解できないのだが」


「大丈夫よ。私とジークも理解できてないから」


「そうだな。とりあえず、フィアナの方は置いておいてカインのところに行ってくるか? 何かわかってる事もあるかも知れないし……」


2人の反応にレギアスはどう反応して良いのかわからないようで苦笑いを浮かべた。

状況が理解できていないのはレギアスだけでは無く、フィーナは気にしないように言うとジークはカインの様子を見てくると言うが歩き出そうとはしない。


「ジーク、何やってるの? あいつのところに行ってくるんじゃないの?」


「いや、いつもなら、こういう時にタイミング良く出てくるんだけどな。来ないみたいだから行くか」


神出鬼没のところがあるカインならタイミング良く現れると思ったようだが、カインはジークの予想に反して現れず、ジークはため息を吐くとカインのいる場所に向かって歩き出す。


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