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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
680/953

第680話

「ヴァンパイア族はスキになった相手の血しか飲まないんですよ。素敵じゃありませんか?」


「はい。素敵です。アノスさんもそう思いませんか?」


「そ、そうだな」


カインが再び、使い魔を使って森の中を偵察しに行ってしまうとフィアナの事が心配になったノエルは彼女を探しにきたのだが、フィアナはアノスを捕まえて恋愛談義をしている。

ノエルは同年代の娘とあまり恋愛談義をする事もないためか、目を輝かせて合流し、フィアナと2人で興奮した様子だが彼女達とは対照的にアノスはいつ終わるかわからないこの状況に相槌しか打つ事ができない。


「……ジーク、あれは何?」


「指差すな。巻き込まれるぞ」


「その方が良さそうね」


ノエルから遅れてフィーナが顔を出すが、彼女はおかしな空気を醸し出している3人の様子に若干、引いてしまったようで声をかける事はできず、ジークを捕まえて3人に何が有ったかと聞く。

ジークはアノスを見捨てた後もしばらく様子を見ていたようであり、ノエルが合流した事であの場所にかかわるのは無理と判断したようでフィーナに近づくなと言う。

フィーナの目から見ても、あの場所が異常だと言う事はわかり、フィーナは3人から視線をそらすと集落の様子を改めて眺める。


「変な争いは起きてないのよね?」


「そうだな……この集落のゴブリン族とリザードマン族はそれなりに理解があるし、シュミット様もレギアス様も戦いは最終手段だと兵士達に言い聞かせてあるみたいだから、表立っての争いはなさそうだぞ。ギドやゼイも通訳に奔走してくれているし」


「あんたも働きなさいよ。通訳できる人間は貴重なんでしょ」


人族を魔族の集落に招き入れるのはやはり不安だったようで騒ぎが起きていない事にフィーナは安心したのか胸をなで下ろす。

ジークはシュミットやレギアスの求心力やギドやゼイの協力してくれる姿に嬉しくなってきたのか表情を和らげるとフィーナは釣られるように笑顔を見せるがすぐにジークにも働けと言う。


「少なくともお前よりは働いている」


「……何ですって?」


「小僧、小娘、何をしているのだ? おかしな事をしているヒマはないぞ」


彼女の言葉にジークはフィーナに言われる事ではないと言いたいのかわざとらしいくらいに大袈裟に肩を落とす。

その態度にフィーナは額に青筋を浮かび上がらせるとジークの胸ぐらをつかもうとするが、タイミング良くラースが2人に声をかける。


「おっさん、何かあったのか?」


「うむ。先ほど森で捕まえた者達から情報が聞き出せたのでな。小僧どもにも話を聞いておいて貰おうと思ったのだが……小僧、アノスは何をしているのだ?」


「……アノスの結婚観、恋愛観には夢がないと言う事で2人に火が点いた」


ラースは今後の方針を決めるために打ち合わせをしたかったようで、アノスにも聞かせたいようで周囲を見回す。

しかし、彼はノエルとフィアナに捕まりぐったりとしており、あまり見ないアノスの様子を見てラースは眉間に深いしわを寄せた。

ジークは力なく笑うと簡潔に説明をし、ラースは少し考えるように相槌を打つ。


「うむ……確かにアノスは恋愛のような物に冷めているのは見て取れるな」


「なんか、自分達には結婚は家名を守るための繋がりを強くするためのものみたいなことを言っていたぞ」


「そうか。その考えは改めさせる必要があるな」


アノスの指導を引き受けた身としては気になる事もあったようでラースは難しい顔をしているとジークはアノスが言っていた事を思い出したようで苦笑いを浮かべた。

その言葉にラースは何かあったのか大きく頷くとノエル、フィアナ、アノスの3人へと視線を向ける。


「……ジーク、不味い事を言ったんじゃない?」


「不味い事って言われてもな。今から打ち合わせがあるんだろうし、止めに行くだけだろ」


ラースの様子にフィーナはあまり良くない方向に話が進んで行くような気がしたのか眉間にしわを寄せた。

ジークはラースが伝えたい事があったと言っていた事もあり、おかしな事は起きないと楽観的に考えているのか彼女の言葉をため息交じりで否定する。


「……そうかも知れないわよ。だけど、おっさんって確か大恋愛の上でティミル様と結婚したのよね?」


「エルト王子が暑苦しい言いたくなるような事を言ってたな……いや、いくらなんでもこの状況はないだろ?」


「私もそう思いたいけど……相手はおっさんよ。どう出てくるかはわからないわ」


フィアナが心配しているのはどちらかと言えばノエルやフィアナに近い恋愛観をラースが持っている事であり、内容までは聞かされていないが過去に聞くラース、ティミルのオズフィム夫妻の大恋愛話が頭をよぎったようで彼女の表情は険しい。

ジークは彼女に言われて眉間にしわを寄せるものの、さすがにこの状況ではありえないと考えたようでため息を吐く。

しかし、ジークの言葉程度ではフィーナの不安は払しょくされないようでラースへと視線を向けるがすでに彼は先ほどいた場所ではなく、ノエル達に近づいて行っている。


「ラ、ラース様、何かありましたか?」


「うむ。とても重要な事だ……アノス、お前はもう少し恋愛と言うものに興味を示した方が良いな」


アノスはラースが助けに来てくれたと思ったようでその表情には生気が戻りかける。

ラースは大きく頷くといかつい興奮していたノエルとフィアナもさすがに怒られると思ったようで息を飲むが彼の口から続く言葉はノエルとフィアナを肯定する言葉であり、アノスの顔に戻りかけた生気は一気に引いて行く。


「そうですよね? ラース様ならわかっていただけると思いました」


「当然だ。それにアノス、お主はイオリア家を変えたいと言っていたのだろう。それなら相手は自分で探すべきだろう。このままではお主の父親が自分の都合の良い相手を探してくる事になるぞ」


「そ、それとこれとは話が違います!?」


ノエルは瞬時にラースが自分とフィアナの味方だと理解したようで興奮気味に言う。

ラースは大きく頷くとアノスには必要な事だと言い切り、アノスはどんどん悪くなるこの状況に声を上げるしかできないが状況がひっくり返る事はない。


「……フィアナ、とりあえず、あっちで何があったかだけ、聞いてくるか?」


「そうね。内容次第でレギアス様とあの性悪に相談しましょう」


アノスの魂の叫びは関わり合いたくないと思っているジークとフィーナには届くわけもなく、2人は捕縛した者達から聞き出せた事を確認するために逃げるようにこの場を後にする。


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