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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第672話

「……魔族が人族に姿を変える魔法だと? そんなものがあるのか?」


「説明は上手くできないけど、あるんだな。これが」


ジークはゼイが先ほど部隊に紛れ込んだ少女だと伝えるが周囲は誰も信用せず、姿を変えてみせる魔法の話をする。

ラースも含めて兵士達は魔法の知識に乏しく、慟哭した魔術師の少女であるフィアナに視線が集まるが彼女の知識にはない魔法らしく、彼女はバツが悪そうに首を横に振った。

話は簡単に信じられるものではないためか、ラースは確認するようにジークに問い、ジーク自身も魔法を不得手としているせいか困ったように笑う。


「……そんな魔法が悪用されでもしたら大変だぞ」


「悪用されたらな。でも、魔術書に載るくらいだから、魔族、人族、問わず、結構、知ってる人間はいるんじゃないか?」


「魔術書ですか? ……やっぱり、ノエルさんやカインさんは私の知らない魔法をたくさん知ってます。自信なくします」


アノスは人族の街の中にもすぐそばに魔族がいる可能性があると思ったようで眉間には深いしわが寄っている。

ジークは読めなかったが、しっかりと魔術書を見ているため、使用できる魔術師は多いのではないかと言う。

その言葉にフィアナは魔術師としての才能の差を感じたようでしゅんと肩を落としてしまった。


「フィアナ、ゲンキ、ダセ」


「そうだ。ノエルはこの魔法を使えない。フィアナなら、覚えようとすればすぐに覚えられる」


「モドルゾ」


彼女の様子にゼイは顔を覗き込み励まそうとする。

落ち込んでいるフィアナだが、ジークはノエルが魔力の制御が苦手なためか、フィアナならすぐに使えるようになると笑う。

2人に励まされたフィアナは少し表情を緩ませるが、見なれないゴブリン族の姿に抵抗があるようでゼイから距離をとった。

彼女の行動はゼイには理解できないようで、とりあえず、彼女の元気が戻ったと思ったようでそろそろ、集落に戻ろうと再び、集落の方向を指差す。


「……魔法の事については納得しよう。しかし、小僧、なぜ、お前達は魔族と普通に交流しているのだ?」


「別に殺し合いしてるわけじゃないから、どうでも良くないか? 魔族相手でも顔を合わせたら殺し合いにならないって事で」


「そんなわけあるか。お前が俺達をだましている可能性もあるんだ。しっかりと説明して貰う。貴様は平民だからな。魔法で姿を変えた魔族の可能性だって否定できない」


ラースは魔法の事をどう判断して良いのか、わからないようで判断をと回しにするとジークがゴブリン族と懇意にしている理由を聞く。

その問いはジークにはあまり必要性の感じられないものであり、面倒だと言いたげにため気を吐くが、アノスはジーク剣の切っ先を向け、納得がいかない理由ならジークを切り伏せると言う。

それはジークが魔族の手先として人族を滅ぼすために動いているのではないかと疑いをかけているようである。


「いや、俺は人族だから、と言うか魔法は効果時間があるんだ。昨日、今日と俺が魔法を使いにどこか行ってるような事があったか?」


「ジーク、コイツ、バカナノカ?」


「ゼイ、こういうのはバカじゃなく、残念って言うんだ」


アノスの言葉にジークは呆れ顔で言うと周囲にいた兵士達からは確かにとジークが魔法を使っていた様子などなかったと言葉が飛び交い始める。

ゼイはアノスがジークに因縁をつけているだけにしか思えなかったようで首を傾げ、ジークは彼女の言葉に乗っかり、アノスを小バカにする。


「……貴様」


「止めんか。小僧、お前もだ」


「わかってるよ。それで本当にそろそろ戻らないか? 捕まえはしたけど、他にもいないとは限らないんだから」


アノスは剣を握っていた手に力を込め、今にもジークに斬りかかろうとする。

ラースは頭に血が上りやすいアノスをいさめると彼を挑発するジークにも問題があると思っているようで睨み付けた。

ラースの突き刺さるような視線にジークは逃げるように視線をそらすと集落の方向を指差して逃げようとする。


「待て。小僧、アノスのように警戒する者もいるからな。せめて、なぜ、魔族と交流をしておったのかだけでも話せ」


「話せと言われてもな。特にこれと言った理由もないんだよ。俺は殺し合いをするような趣味はないから、しいて言えば、ギドとゼイを含めたゴブリン族に助けて貰ったんだよ。恩人相手に攻撃をするほど、俺は人として終わってないし、そんな事をしたら人族としてだって恥だろ?」


「助けて貰ったか……そのような事があるのだな。ゼイ、お主は小僧を信じているか?」


ラースは隊をまとめるためにも説明は必要だと思ったようでジークに問う。

ジークは頭をかきながら、ゼイ達には恩があると答えるが、魔族が人族を助けたと信じられない者達がいるようでこそこそと話し声が聞こえる。

ラースはジークが嘘を吐くようには思えないようで大きく頷くとまっすぐとゼイを見据えて聞く。


「ジーク、ナカマ」


「……そうか。行くぞ。隊を動かす。小僧、ゼイ、案内をしろ」


ゼイは質問の意味など何も考えていないようで迷う事無く答えた。

その言葉には嘘偽りはないように感じたようでラースは目を閉じて大きく頷くとジークとゼイに案内を命じる。


「それじゃあ、行くか? まだ、納得が言ってなさそうなヤツもいるけど」


「……当然だ。何かおかしな動きを見せてみろ。叩き斬ってやる」


「お前に斬られるほど鈍くないけどな」


ジークは苦笑いを浮かべるとゼイと一緒に部隊の先頭に立ち歩き出す。

アノスはジークとゼイを信用していないためか、2人のすぐ後を歩き出し、ジークは信用されない事にため息を吐いた。


「ジーク、アイツ、ナグッテイイカ?」


「ダメだ」


「ソウカ。フィーナヨリ、バカ、ハジメテダ」


後ろから殺気を放つアノスが鬱陶しいゼイはアノスをブッ飛ばしたいようである。

ジークは止める気はないようだが、ここでやると魔族への偏見が払しょくされていないため、彼女を引き止めた。

ゼイはジークもアノスが気に入らないと思っているようで不満そうな顔をした後、アノスをフィーナ以下と切り捨て、その言葉で背後からの殺気はさらに強くなって行く。


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