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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第67話

「もう。何なのよ。近道のはずが全然着かないじゃない」


フィーナはジークの予想通り、街道を外れて一直線に鉱山へと歩を進めているだけではなく、完全に道に迷っており、その苛立ちを隠す事なく、声をあげる。


「こんな事になったのはジークのせいよ。鉱山で絶対に文句を言ってやる」


フィーナは道に迷った事までもジークのせいにしており、ぶつぶつ言いながら先を進むが、いつも、彼女をいさめるジークの声はなく、自分が1人である事を実感したようで視線を落とす。


「……私は悪くない。意地になって、村にしがみつくジークが悪いのよ。おばあちゃんだって、それを望んでたのに」


フィーナは自分が信じてやまないジークに取っての最良は村を出て、彼の両親と同じく世間に名をとどろかせる冒険者になる事だと言い聞かせるようにつぶやく。


『俺はこの村を出る気はない。自分の考えを押し付けるな』


いつも返ってくる言葉はやる気のない言葉。その言葉に村人達はジークが出した答えを受け止めた。しかし、最も近くで彼の才能を見てきたフィーナは納得する事はできなかった。


(ジークだって、お父さんの話に目を輝かせていたじゃない。おじさんやおばさんのような冒険者になるって)


フィーナは幼い頃に一緒に冒険者だった自分の父親の昔話に目を輝かせていた彼の姿を思い浮かべる。その頃の彼は会った事のない両親を勇者として疑わず、純粋に両親に憧れを抱いていたのだろう。だが、賢い彼は成長捨て行く事で『自分は両親に捨てられた』と言う事実を感じ取り、自分の両親を嫌悪した。


(村に残るのは間違いじゃないのかも知れないわよ。でも、事実を見ようとしないで、おじさんやおばさんを否定するなんて間違ってるわ)


フィーナには漠然としているがジークに村を離れて見て欲しい風景があるのか、自分は間違っていないと言いたいのかわからないが大きく首を横に振るとこの先にあるであろう鉱山へと視線を向ける。


「行くわ。あの頑固者の考えを変えさせてやる!!」


自分が1人で冒険者を続けているのは組むべき相棒がいるからだと大きく声を上げた。しかし、その行為は普段、ジークが彼女に言っている考えなしの行動であり、木々が生い茂り薄暗い森の先からフィーナの声に反応するようにコウモリの大群がフィーナに向かって飛びかかる。


「な、何なのよ!?」


フィーナは予想してもいなかったコウモリの大群に慌てて剣を抜き、振り下ろすが、その攻撃は慌てているせいか、コウモリをうまくとらえる事はできず、彼女の顔はコウモリの牙や爪により、小さな傷が増えて行く。


「当たりなさいよ!!」


コウモリに完全に囲まれ、撃退できないフィーナの攻撃は大ぶりになって行くが、身体も小さく動きの素早いコウモリの数を減らす事はできず、フィーナの体力は徐々に削られている。


「……本当にいたよ」


「ジ、ジークさん、呆れてないで助けないと、フィーナさん、大丈夫ですか!?」


「別にただのコウモリ相手だろ。そこまで、慌てる必要もないよ」


そんななか、聞きなれた、呆れたようなため息と自分の状況を見て、慌てふためいている声が聞こえた。


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