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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
665/953

第665話

「ほう。この森で生活しているのか?」


「そうなんだ。この間、薬草を採りに来て知り合ったんだ」


「薬草か? 確かにこの森にもいくつか栽培できない薬草があるが、他の物でも代用できるものではないか?」


ゼイが合流するとラースは彼女の話を聞きたがる。

ゼイは知らない人間が多いためか興味深そうに隊の中を歩き回っており、彼女を1人にするわけにも行かないため、ノエルとフィーナは彼女を追いかけている。

ジークはいつゼイの正体がばれるかわからないため、そわそわしながらも何とか誤魔化そうとしている。

しかし、ジークが慌てる姿が楽しいのかレギアスはゼイの正体を知りながらもラース側に回っており、ジークにゼイの事を質問して行く。


「確かに代用は出来るかも知れないけど、どこどんな薬草が分布しているのがわかれば何かあった時に対応しやすいだろ。知らずに手を切ってかぶれるとか、毒草とか危険な物だってあるんだから」


「確かに一理あるか?」


「……レギアス様、俺をからかって楽しいですか?」


レギアスの質問にジークはゼイから話をそらそうとするが、レギアスはジークの苦労する姿を見て楽しそうに笑っている。

フィーナからレギアスはゼイの正体に気が付いているとジークは聞いており、意地の悪い彼の質問にムッとした表情で言う。


「うむ。この森で生活しているのは理解したが、魔族が住んでいるとも言われている場所での生活は危険ではないか?」


「危険だとしても、生活できる場所なんて限られてるからな」


「……シュミット様に援助を出せないか進言してみるか?」


ゼイの姿は魔法により、小さな少女の姿に見えている事もあり、ラースは魔族の集落があると言われる森に彼女が住んでいるのは危険だと判断したようでジークに森での生活について聞く。

ジークは頭をかきながら、とぼけるように言うとラースへ平民の暮らしが楽ではないと言う事だと思ったようで難しい表情でシュミットに話をしてみるとつぶやいた。

その様子にジークはだましていると言う罪悪感が芽生えたようで眉間にしわを寄せて難しい表情をしたところで自分に向かっている視線に気づく。

視線の先にはアノスが立っており、ジークに鋭い視線を向けている。

その視線には平民であるジークが騎士の上役であるラースやワームの重要人物であるレギアスと対等に話しているのが気に入らないようにも見え、ジークは小さくため息を漏らした。


「どうかしたのか?」


「……いや、俺、アノスに嫌われてると思ってな」


「うむ。何なら、レギアスの甥だと話してしまうか? 部隊の中で小僧の立場も大きなものになるだろう」


ラースはジークのため息に気が付き、首を傾げるとジークはアノスの視線について話す。

平民としてジークをどこか見下しているのには彼の態度からもわかるため、ラースはいっそ話してしまうかとため息を吐く。


「ダメだろ。そんな事をすると爺さんにもばれそうだ」


「ラース、その考えはさすがに浅はかだと思うぞ」


「わかっておる。流石に冗談だ……何があった?」


ラースの考えはジークとレギアスにすぐに否定されてしまい、ラース誤魔化すように1つ咳をした時、部隊の先頭がざわついている事に気づいた。

そばにいた兵士に先頭の様子を見てくるように言うと兵士は頷き、先頭に駆け出して行こうとする。


「ジーク、おっさん」


「フィーナ、何かあったのか?」


「いや、ゼイがあっちが近道だからって言って、1人で駆け出そうとして先頭の人が困ってる」


その時、フィーナが部隊の前方からこちらに向かって走ってきてジークとラースの名前を呼ぶ。

フィーナが自分達に向かってきた事や先頭の騒ぎからジークはゼイの正体がもうばれてしまったと思い顔を青くする。

ゼイは早く集落に着きたいようで偵察部隊を案内しようとしているようだが、先頭の兵士達は自分達の判断で部隊を全滅させる可能性もあるため、ゼイの言葉には従えないと答え揉め始めたようである。


「……どうして揉めるかな?」


「小僧、あのゼイと言う娘はワシらが行こうとしている場所の正確な位置を知っていると言う事か?」


「この森で過ごしているからな。危険な場所として知っているんだろ」


ジークは大きく肩を落とすとラースは集落の位置をゼイが正確に記憶している事を聞き、眉間にしわを寄せた。

おかしい事ではないと誤魔化そうとするジークだが、その声はわずかに裏返っており、ラースはジークの様子に何か感じたようで鋭い視線を向ける。


「……小僧」


「おっさん、どうするの? ゼイに案内して貰う? 私としては早くベッドで眠りたいからゼイに案内して貰いたいんだけど」


ラースは知っている事を全て話せと言いたいのか声を低くしてジークに圧力をかける。

ジークは少し戸惑ってしまい、言葉を詰まらせるとフィーナはそんなジークに気づいてか、気づいていないのかわからないがラースに決断してくれと言う。


「うむ。まずは話を聞く必要がある。小娘、ゼイと言う娘を連れてきてくれるか? 話を聞く間は休憩としよう。そろそろ、ノエルやフィアナの体力も尽きる頃だろうからな」


「……それもそうね。ちょっと、行ってくるわ」


「それじゃあ、俺は後ろに伝えてくる」


ラースはジークが何か隠している事には気が付いているが、ジークは追及すると上手く逃げる可能性もあるため、ジークよりゼイから話を聞こうと思ったようでフィーナに指示を出す。

フィーナは特に考えていないのかすぐに頷くと先頭に戻って行き、ラースは兵士達に休憩の指示を伝えると森の中の移動になれていない者達は休憩を喜び、腰を下ろし始める

ジークは少しラースから距離を取ろうと思ったようで逃げるように部隊の後方に向かって歩き出して行き、ラースはジークの背中に小さくため息を吐いた。


「レギアス、小僧どもは何を隠している? お主は気づいているんだろう?」


「気づいているにしても秘密だ。もう少し見ていた方が楽しそうだからな」


「……まったく、お前は、まぁ、カインが1枚も2枚もかんでいるのだろうから、おかしな事にはならないだろう」


ラースはレギアスに知っている事を話せと言うが、レギアスは楽しそうに笑う。

その様子にラースは大きく肩を落とすが出発前にカインが裏で動き始めた事を聞いているため、おかしな事にはならないとも思っているようで納得はいかない物の追及する事はない。


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