第66話
「あぁ。見晴らしの良い草原ならまだしも、ここから鉱山への一直線に進むとしたら」
「森を抜けないといけません」
鉱山の下には森が広がっており、ノエルはジークの言いたい事を理解したようで大きく頷いた。
「……ノエル、どうする。あくまで、これは俺の予想でフィーナが森の中で迷っているかはわからないけど」
「でも、ジークさんの予想では確実にフィーナさんは森にいるんですよね」
「……十中八九」
「それなら、行きましょう。わたしはジークさんの言葉を信じます」
ジークは本当にフィーナがいるとは限らないと言うが、ノエルはジークの事を疑わないと答える。
「そう。知らないふりをすれば楽なのに」
「でも、気が付いてしまえば、見過ごせませんよ。それはジークさんも一緒じゃないですか」
ジークはノエルの言葉に少し恥ずかしくなったようで彼女から視線を逸らして頭をかくとノエルはジークの様子にくすりと笑う。
「別に俺はそんなんじゃないよ。俺は商人だから、出費が大きくなる事はしたくないんだよ」
「そうですか。その割には村のみなさんやギドさん達にもお薬を無償で分けてましたけど」
ジークは獣に襲われた場合に使用する薬品を使う事になるため、出費が大きくなるのは避けたいと肩を落とす。しかし、ノエルはそれがジークの悪態だと思っているようである。
「別にそんなんじゃない。フィーナ以外は金を払わなくても、作物をくれたりするから、支払いが物々交換になってるだけで、気分的な問題であって、ギド達にはしっかりと情報を貰っただろ。それに対する対価だよ」
「そう言う事にしておきます。それではジークさん、行きましょう」
ジークは自分はノエルが自分を過大評価しているため息を吐くが、ノエルは村にきてからのジークを見ているためか、優しげな笑みを浮かべるとフィーナを探しに行こうと森へ向かって歩き出す。
「ノエル、1人で行かないでくれ。遭難したくないから、フィーナだけでも大変なのにノエルも探す事になったら面倒だから」
「は、はい。すいません」
ジークはノエルも迷子にするためにはいかないため、彼女に追いつくとノエルは頭を下げた。
「それじゃあ、できるだけ、獣に気が付かれないように静かに行くか?」
「あの。ジークさん、フィーナさんを見つける方法って何かあるんですか?」
「うーん。どうだろうな。あいつの事だから、真っ直ぐに鉱山を目指しているだろうけど、森の中だと葉に遮られて、鉱山が見えなくなるから完全に道に迷っているだろうな。それに気が付いても感情のまま突っ走ってるから、戻る事はしないだろうからな」
「フィーナさん」
ジークはフィーナの性格ゆえに森の中で完全な迷子になっている事だけは理解できるが、どこにいるかまではわからないと頭をかき、ノエルはフィーナの感情的になりすぎる正確に大きくため息を吐く。
「……まぁ、方向性は違うけど、ノエルもフィーナの同類だよな」
「ジークさん、何か言いました?」
ジークはため息を吐いているノエルの様子にいつの間にか自分の家に転がり込んでいるノエルにフィーナと同じものを感じているようで大きく肩を落とした。