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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第653話

「……起きたか?」


「何してるんだ? ……もしかして付いてくる気か?」


夜も深くなり、野営地は見張りで数名が交代で起きている。

ジークは目を覚ますと追跡者の様子を見てくる時間に頃合いだと思ったようで準備を済ませてテントを出ると騎士鎧を脱ぎ、騎士剣だけを腰の差したアノスが待ち構えていた。

ジークはアノスが何をするつもりか、一瞬考えるものの答えは1つしかなく、眉間にしわを寄せる。


「そのつもりだ」


「止めた方が良いと思うぞ。灯りをつけて移動もできないし、お世辞にも森の中を歩くのになれてるとは思えないからな」


アノスは足手まといになどならないと思っているようで小さく頷くが、ジークはここまで森の中を進んできたアノスの事を見ていたようで今のままでは連れて行けないと首を横に振った。


「そう言うな。行くと言う人間が出てきただけでも良い事ではないか? 実際、こちらをうかがっているのは少数だろう?」


「確かに少数ではあるが……おっさん、あんたは何がやりたいんだ?」


「動ける者が限られているのだ。動ける者が動くのは当然だろう? アノス、せめてこれを身にまとえ、何もないよりはましだ」


その時、闇夜の中から騎士鎧ではなく、革の鎧に身を包んだラースが現れる。

その恰好からジークはラースが何をするつもりかすぐに察しがついたようで眉間にしわを寄せるがラースはジークの言葉ににやりと笑うとこういう事も予測していたのか革の鎧をアノスに投げて渡す。

アノスは突然の事に慌てるが、革の鎧を落とす事無く受け止めると大きく頷き、すぐに身にまとう。


「……良いのかよ? ここまで来る時の様子やルッケルでカルディナ様を探す時に森の歩き方は見ていたから金属鎧じゃなければ、こっちの様子をうかがっている奴らには見つかりにくいとは思うけど、一応、おっさんはこの部隊の隊長だろ。何かあっても責任は取れないぞ」


「何だ。小僧、ルッケルでワシから1本取った事で自分がこの部隊の中で1番強いつもりか?」


「そう言うつもりじゃないけど、あの時はおっさんの油断や俺の専門分野におっさんを引きずり込んだ形だからな。実際、実戦だとおっさんに勝てる気はしないよ」


ラースの様子にジークは何とか説得を試みようとするが、ラースはジークが自分自身の事を過大評価しているのかと言う。

ジークは連絡係でワームに訪れた時にラースの息抜きに付き合わされた手合せから純粋な戦力で考えればラースに叶わない事は承知しており、首を横に振る。


「小娘と違って冷静な判断はできるようだな」


「フィーナと比較されるのは心外だ。だいたい、カインに口うるさく言われているからな。状況をしっかりと見極めないと大きな被害を出す事があるってな」


「それなら、状況を冷静に見て取れていると思って聞こう。小僧、お主1人で追跡者を捕らえられると思っているのか?」


ジークの判断力にラースは小さく口元を緩ませると起きようともしないフィーナと比較する。

ジークはカインから状況分析はできるだけ的確にと言われていると答えるが、その表情はすでにラースの術中にはまっている事に気が付いているようで小さく歪んでいる。

ラースはジークの表を見て楽しそうに笑うと改めてジークに問う。


「……1人では無理だとしても、おっさんやアノスを連れて行く方が分が悪いだろ。何かあったらどうするんだよ」


「バカにするな。自分の身くらいは自分で守れる。アノス、お主もそうだろう?」


「当然です」


ジークは頭をかくとラースの言い分もわかるが、もう1度、ラースとアノスが追跡者捕縛に加わる危険性を考えるように言う。

ラースは騎士としての自分の身くらいは守りきると言うと革の鎧を身にまとったアノスへと聞く。

アノスは迷う事無く頷くと、2人の視線はジークに向けられ、ジークはどうするべきか考えているようで眉間にしわを寄せる。


「……とりあえず、捕まえるにしてもまずは偵察をしてくるから、もう少しここで待っててくれ。相手の動きを止めるなら魔導銃こいつより、適した武器はないだろうし、せめて、人数を正確に把握したい」


「人数は5人で一塊になっている」


「……ちょっと待て。どういう事だ?」


ジークは捕縛の前に1度、偵察をしてくると言うと追跡者の様子を見に行こうとするが、ラースは当然のように追跡者の今の状況について話す。

予想していなかった言葉にジークは眉間に深いしわを寄せるとラースがどこまで追跡者の情報を手にしているのかと聞く。


「先ほども言っただろう。動ける者は限られているとな。ワシがワームに来る時についてきてくれた者もこの部隊なかにいるからな」


「……俺、起きた意味がないだろ」


「……せめて、教えて欲しかったです」


ラースはしっかりと追跡者の様子をうかがっているようであり、ジークの反応に楽しそうに表情を緩ませた。

ジークは前もって休んだ意味がなかったと言いたいようで大きく肩を落とし、アノスは1人でジークについて行こうと決意した事もあり、完全に肩透かしを食らったため、納得が行かないと眉間にしわを寄せた。

2人の反応はラースの予想した通りなのか、ラースは声を上げて笑いたいようだが、あまり、騒ぐと追跡者達に警戒されるため、手で口を押えて笑いをかみ殺している。


「納得が行かないけど、言っても仕方ないか。それじゃあ、何人で囲んで捕まえれば良いんだ?」


「こちらを見ているからな。裏まで回るのはジーク、お主に任せる。すでに何人か裏に回してあるからな。ある程度したら、こちらで騒ぎを起こそう」


「俺は裏から魔導銃こいつで捕まえるってわけね。わかった。それじゃあ、言ってくる。後、おっさん、わかってるかも知れないけど、あいつらが囮って可能性もあるから、気を付けてくれよ」


納得はいかないものの、このままにしておくわけにも行かないため、ジークはラースに指示を仰ぐ。

ラースは追跡者を囲んで全員捕まえたいようであり、捕縛方法はジークに任せると言う。

ジークはラースが冷気の魔導銃を頼りにしている事を理解したようで頷くと闇夜の中に消えて行くが、去り際に言葉を残して行き、ラースは大きく頷くとアノスとともに作戦の準備に移る。


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