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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第651話

「……俺をバカにしに来たのか?」


「今のところ、そんな悪趣味はないな」


「少しは信用しろよな」


自分を追いかけてきたジークの姿にアノスは忌々しそうな表情をして言う。

その言葉にジークはそこまでヒマではないと言いたいのか大きく肩を落とすがアノスはジークを信じていないようで疑いの視線を向ける。

アノスの様子にジークは小さくため息を吐くが特にこれと言って話があるわけでもないため、何の話を振るべきか決まってはおらず、アノスと視線が合い困ったように笑う。


「……お前は何がしたいんだ?」


「悪い。追いかける事だけで何も考えてなかった」


ジークの様子にアノスは眉間にしわを寄せるとジークは正直に無策だった事を告げ、アノスはバカにするかのように大きなため息を吐いた。


「用がないなら、消えろ」


「そう言うなよ。フィーナが言ったみたいに帰られても困るからな」


「……そんな事はしない」


ジークと一緒など考えられないと言いたいのかアノスは彼を追い払おうとするが、ジークはアノスが単独でワームに戻ってしまう事を危惧しているようである。

アノスは1人で隊から離れるのは愚策だとは理解しているようでバカにするなと言いたいのか舌打ちをするが、隊にも戻りにくいようで闇に沈んだ森へと視線を向けている。


「あんまり気にするなよ。文句だけは1人前だけど、フィーナも自分勝手で他人に迷惑をかけるヤツだからな」


「……お前のような平民に慰められるとは俺も落ちたものだな」


「なあ、他人を見下して疲れないか?」


ジークはアノスの隣に立つとフィーナに言われた事などそこまで気にしなくて良いと言うが、平民であるジークに慰められる事にプライドが傷ついたのか眉間にしわを寄せた。

ジークはバカにされてはいるものの、シュミットの態度が悪かった時にも同じような態度を取られていたため、気にする事はなく、それどころか質問を返す。


「……何?」


「いや、シュミット様もそうだったけど、何でも自分でやろうとして疲れないか? 人間1人でできる事なんてたかが知れてるんだから、苦手な事はできる人間に任せろよ。そっちの方が楽だろ」


「楽だと? それは逃げているだけだろ」


質問の意味がわからずに眉間にしわを寄せるアノス。

ジークはラースからアノスがイオリア家を変えたいと言っていた事を聞いているためか、面倒事は誰かに任せてしまえと言う。

アノスは自分ですべてを抱える気のようでジークの言葉を逃げだと鼻で笑った。


「逃げね」


「そうだ。それは逃げだ。俺は変えるんだ。家を名ばかりではない騎士の家へと」


ジークはアノスの言い分があまり理解できないようで頭をかくと、アノスは決意の表れなのか拳を強く握って言う。


「家を変えたいのはわかったけど、騎士だって言うなら、ルッケルの時の行動は間違いだってわかってるんだろ。自分のプライドだけで動いてるなら、それは騎士じゃないだろ。俺はおっさんやレインから騎士とは王や民を守る盾だって聞いてるぞ。騎士の守る物ってお前のプライドじゃないだろ」


「……それは」


「わかってるんなら、俺は別に何も言う事はないんだけど、それより、ここに居ても仕方ないし、戻らないか?」


ジークはアノスの反応に彼が自分の過ちに気が付いている事は理解できたようで苦笑いを浮かべると野営地に戻らないかと指差す。

アノスはまだ戻る決心がつかないようで首を横に振った。

しかし、ジークは気にする事無く、彼の腕をつかむと野営地に向かって歩き始める。


「何をする?」


「……少し静かにしてろ。こっちをうかがってる奴がいる」


「宿場町からのヤツか? ……放せ。引っ張らなくても歩ける!!」


ジークはおかしな視線を感じたようで素直に従えと言う。

その言葉にアノスは心当たりもあったためか、眉間にしわを寄せるが宿場町から気が付いていないふりをしていた事もあり、ジークの行動に腹を立てているかのように手を大きく振り、彼の手を振り払うとジークを追い抜き、野営地に向かって歩き出す。


「ジークさん、アノスさん、お帰りなさい」


「ああ……ありがとう」


「……」


2人が野営地に戻るとノエルは温かいお茶を2人に出す。

ジークはすぐに礼を言うがアノスは素直に礼を言えないようであり、兵達の数名はアノスに聞こえるように悪口を言う始末である。


「……ジークさん、どうにか出来ませんか?」


「どうにかと言われても変わっていく姿を見せてくしかないからな」


「良く戻ってこれたわね」


ノエルはアノスの事が心配のようでジークの服を引っ張る。

ジークはアノスの決意も聞いているためか、味方をしたいようだがアノスが変わっていくしかないと苦笑いを浮かべた。

その時、フィーナが現れ、アノスへとケンカを売るように言う。


「……また、タイミング悪く現れるな」


「何よ?」


「お前が出てくると話がややこしくなるんだよ。それより、話があるから、おっさんを呼んでくれ」


ジークは彼女の顔を見て大きく肩を落とす。

フィーナはジークの態度が不満のようで頬を膨らませるが、ジークは彼女の相手をするのは時間の無駄だと思っているようでラースを呼んで来いと言う。


「おっさんを? 何でよ?」


「良いから、早く呼んで来いよ」


「わかったわよ……と言うか、用があるなら、自分で探してきなさいよ」


フィーナはケンカを売ったにも関わらず、これ以上は相手をしたくないと言いたいのかアノスに背を向ける。

ジークはため息を吐くと彼女を追い払うように手を払う。

フィーナは納得がいかないようでぶつぶつと文句を言いながら、ラースを探しに歩き出す。


「悪かったな。脳みそないヤツで」


「ジークさん、それは言いすぎだと思います」


「良いんだよ。何も考えないで話すから、無意味な衝突が起きるんだから」


ジークはフィーナの態度をアノスに謝るとアノスは首を横に振った。

その態度から責められても仕方ないとも思っているようである事がわかる。

ノエルはアノスの様子に気が付かなかったようでジークの言葉使いを直した方が良いと言うが、ジークはフィーナのせいでいつもおかしな事に巻き込まれているため、気にする事はない。


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