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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
650/953

第650話

「……あの、ジークさん、この重い空気は何ですか?」


「俺に聞かないでくれ……と言うか、ケンカするつもりなら、余所に行け」


ジークがアノスと並んで食事を始めているとノエル、フィーナ、フィアナが食事を持って合流したのだが、フィーナとアノスの間にはピリピリとしており、耐え切れなくなったノエルはジークの服を引っ張る。

フィアナもどうにかして欲しいようで、ジークへと助けを求めるような視線を向けるが、自分に振られても困る事のため、ジークは大きく肩を落とすとフィーナを追い払うように手を払う。


「何で、私が移動しないといけないのよ?」


「……一緒に食うなら、その無駄な敵意を抑えろ。だいたい、後から来たのはお前だろ」


フィーナは移動するのはアノスを指差し言うが、ジークは頭が痛くなってきたようで大きく肩を落とす。

ジークの言葉にフィーナはムッとしながらも1人でどこかで食事はしたくないようで不機嫌そうに頬を膨らませたまま、食事を頬張る。


「まったく」


「フィーナさん、せっかく、皆さんでご飯を食べているんですから、もっと楽しくご飯を食べましょうよ」


「え、笑顔ですよ」


フィーナの様子にジークは面倒だと言いたいのか頭をかくとノエルとフィアナは彼女の機嫌を直そうと声をかけて行く。

その様子にアノスは呆れたようにため息を吐くとフィーナの相手をしたくないのか席を立とうとする。


「どこに行くんだ?」


「どこでも良いだろ」


「関係ないって何よ!? 人が下手に出てれば調子に乗って、何様のつもりよ!!」


ジークはアノスを引き留めようとするが、彼は関係ないと言いたいようで不機嫌そうに言う。

彼の物言いにフィーナは我慢の限界が来たようでアノスを指差し叫ぶと周りで食事をしていた人間は何があったのかと思ったようでフィーナへと視線が集まり、ノエルはどうして良いのかわからずにオロオロとしている。


「……下手に出てたのか?」


「ジークさん、今はそんな事を気にしている状況じゃないと思います」


「あー……いや、少し見てよう」


彼女の言葉にジークは眉間にしわを寄せるとフィアナは一触即発の空気にジークに仲裁に入って貰いたいようでジークに声をかける。

しかし、ジークは何か思うところがあったのか、フィーナに任せてみると無謀な事を言い出す。


「どうしてですか?」


「いや、フィーナは何も考えてないから、たまに人の痛いところを無自覚に突くからな。それがアノスの本音を引っ張り出せれば上出来だから?」


「あの、そんな賭けみたいな事で2人の間に大きな溝ができたらどうするんですか?」


フィーナに任せるのは危険だと思っているフィアナは彼女に任せるのは危険だと首を大きく横に振るが、ジークはフィーナに任せると腹をくくったようで食事の続きを頬張った。

ジークの言葉にフィアナは1度、フィーナとアノスへと視線を向けるとフィーナが今にもアノスに飛びかかりそうであり、もう1度、ジークに仲裁に入るように言う。


「もう溝は出来上がってるから、これ以上は酷くならない」


「そういう事ではありません!?」


「それに何か起きそうだったら、おっさんが止めるだろ。部下の不始末を収めるのは隊長の役目だ。今回の俺達はおっさんの下に組み込まれてる形だからな」


フィアナの心配をジークは笑顔で否定した。

彼の言葉にフィアナは絶対に動いてもらわないといけないと思ったようでジークの手をつかんで引っ張り、立ち上がらせようとする。

行動に出られるのはジークも困るようでフィアナにラースを見るようにと言う。

その言葉にフィアナはラースへと視線を向けると、彼は動く事無く、フィーナとアノスの様子をうかがっている。


「と言う事で、少し見守ってるぞ。いざとなったら、魔導銃こいつで止めるから」


「わかりました……」


ジークは腰のホルダに入っている冷気の魔導銃を見せて、もう少し待ってみようと言う。

フィアナは納得できないようだがラースの様子に彼にも何か考えがあると気が付いたようで小さく頷く。


「何様だと? 冒険者風情がこの俺に意見するつもりか?」


「そうよ。今はこのメンバーで1つの事を成し遂げようとしてるの。それもできない人間がこんなところまで来るんじゃないわよ。あんたの行動で誰かが死ぬことだってあるのよ?」


「……絶対にフィーナが言って良い言葉じゃないな」


フィーナ程度に何か言われる事はないと思っているアノスは彼女の言葉を鼻で笑う。

彼の態度にフィーナはもっと周りを見ろと言いたいのか声を上げるが、それは普段、ジークやカインが彼女に口うるさく言っている言葉であり、ジークは眉間にしわを寄せた。


「ジーク、黙ってなさい」


「わかったよ」


フィーナは話に茶々を入れられると思ったようでジークを睨み付ける。

ジークはフィーナに任せると決めた事もあり、口をつぐむ。


「騎士出身だから、特別だとでも思ってるの? 何をやっても許されるとでも? エルト様が仲介してくれてこの間の件が許されていたってあんたが何をやったか私は忘れないわ。あんたが勝手な行動がルッケルの人達を危険な目に遭わせるかも知れなかったって事、あんたのプライドより、もっと大切な物があるってわからないなら、荷物まとめて王都にでも帰りなさいよ」


「……良い事を言ってるはずなんだけど、フィーナが言うと説得力がない」


「ジークさん、今はお静かに」


フィーナはこの間の件でルッケルの民を危険にさらしながらも反省しているように見えないアノスに腹を立てているようで彼女のアノスへの態度はその苛立ちから来ている。

彼女の意見には同調する声も多く、周囲でこの様子をうかがっていた兵士達からも賛成だと言葉が飛び交う。

ジークはフィーナの言葉には一理あると思いながらも、いつも何も考えずに突っ込んで行く彼女の姿しか見ていない事もあるようで小さくため息を吐く。

フィアナは彼の様子にフィーナに任せると決めたのなら、おかしな事を言わないで欲しいと思っているのか、ジークに静かにするようにと言う。

ジークはその通りだと思ったようで頭をかくとアノスがどんな反応をするのか気になったようで彼へと視線を向けるとアノスは舌打ちをした後、フィーナの相手などする気がないのかこの場から離れて行ってしまう。


「……ジークさん、どうしたら良いでしょう?」


「とりあえず、フィーナが調子に乗らないように頼む。俺はあっちを見てくるから」


遠くなるアノスの背中にノエルはどうして良いのかわからずにジークに詰め寄る。

ジークは大きく肩を落とすとノエルとフィアナにフィーナの事を任せると食器を置き、アノスの後を追いかけて行く。


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