第65話
「ノエル、大丈夫か?」
「は、はい。問題ありません」
ジークは遠出する時に使用している荷物を担ぎ、ノエルの様子を気にしながら鉱山へ続く道を急ぐ。
「あ、あの。ジークさん、フィーナさんは大丈夫でしょうか?」
「一応、この辺のモンスターなら問題ないと思う。鉱山は街に行くまでの途中にあるから、街道を使えば安全だから」
ノエルは息も絶え絶えだが、自分の事より、1人で村を出て行ったフィーナの事を心配しており、ジークは彼女の心配を和らげるために安全を強調するがジークは何かあるのか真っ直ぐと街道の先に人影がないか探すように視線を向けている。
「そうですか? それなら良いんですけど……あの、やっぱり、心配ごとがあるんですか?」
「まぁ、できれば、陽が落ちる前にフィーナに追いつきたい。あいつの事だ。到着時間も考えてないだろうから、野営の準備だってしてないだろうからな」
ノエルはジークの表情に何かあると思ったようであり、ジークに聞き返すとジークは少し困ったように苦笑いを浮かべた。
「ジークさんはフィーナさんの事が本当によくわかっているんですね」
「え? まぁ、そりゃ、ずっと、村で兄妹のように一緒に育ってきたからな」
ノエルはジークがフィーナを気にかけている様子に、胸が小さな悲鳴を上げたようであり、冷静に努めようとしながらも、ジークにフィーナの事を聞くとジークはノエルの質問の意味がわかっていないようで首を傾げる。
「兄妹のようにですか?」
「あぁ。だから、見捨てられないのかも知れないな。正直、縁を切りたいのが本音」
ジークは見捨てたいと言いながらも見捨てる事が出来ない自分に苦笑いを浮かべた。
「でも、ジークさんはフィーナさんの手を放しませんよ」
「ノエル? 何か言った?」
「な、何でもありません!?」
ノエルはジークとフィーナの関係を羨ましく思えたようで小さくつぶやく。ジークは彼女の声が聞きとれなかったようで聞き返すとノエルは恥ずかしいのか顔を真っ赤にして何もないと答える。
「そう? それなら、良いんだけどさ」
「そ、それより、急ぎましょう」
ジークはノエルの反応に何か納得がいかないようだが、それ以上は追及する事もなく、ノエルはフィーナを見つけるためにも先を急ごうとジークを急かす。
「そうだな……」
「ジークさんどうかしましたか?」
「いや、今、考えたくない事が頭をよぎった」
ジークはノエルの言葉に頷いた後に、何か思いついたようで眉間にしわを寄せると、彼の視線は街道から外れ、一直線に鉱山らしき山に向けられ、ジークの表情の変化にノエルは首を傾げる。
「どうかしたんですか?」
「ノエル、フィーナの事だ。街道から逸れて、ここから、真っ直ぐに鉱山に向かった可能性が高い」
「あ、あの。それって不味いんですよね?」
ジークのフィーナのいつもの行動からはじき出した答えは、彼女が街道を歩いていないと言う事であり、ジークは大きく肩を落とすとノエルは顔を引きつらせた。