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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第639話

「とりあえずは無事に乗り切ったみたいだね」


「ああ。ちょっと時間良いか?」


ジークとレギアスの気まずい空気はなし崩しに払しょくされたため、噂になっている魔族の集落偵察部隊の打ち合わせを終わらせたジーク達はフォルムに戻った。

ワームに広がる噂は自分達ではどうして良いか判断できず、ジーク達はフォルム運営を行っている建物を訪れる。

カインは領主の私室で仕事を行っていると聞き、私室を訪れるとカインはジークの表情を見てくすりと笑った。

ジークはどこか見透かされている気がしたのか頭をかいた後、カインの予定を聞く。


「ここまで来るって事は余程の事なんだろ。聞くよ」


「あの、カインさんできればギドさんも一緒に聞いて欲しいんですけど」


「ギドも? わかったよ。それなら、ギドのところに行こう」


カインはジーク達がここまで来た事にただ事ではないと思ったようで開いていた資料を閉じる。

ノエルは不安そうな表情でギドにも聞いて欲しいと告げるとカインは席を立ち、3人をギドが使っている書斎へと促す。


「……カイン、何をサボっているんですか? 遊んでいる時間などありませんよ」


「いや、話があるって言うから、結構、真剣な様子だったし、とうとう結婚かな? レギアス様とも上手く行ったみたいだし、ちょうど良い頃合いかと思ったみたいだよ」


「結婚しなくても関係は変わらないでしょうが、今更ですわね」


廊下に出た時、タイミング悪く、セスが現れる。

彼女が言うにはカインは他の事に時間を取られているほど暇ではないようでセスは眉間にしわを寄せており、カインは苦笑いを浮かべて冗談を言う。

その冗談は別に冗談とも思えないようでセスはため息を吐くがノエルの顔は真っ赤に染まっていく。


「……そうじゃないから」


「そうだね。ジークはまだお養父さんに娘さんを僕にくださいって言ってないし」


「……もう良い。セスさんもできれば話を聞いて欲しいんですけど良いですか?」


冗談を言っているカインの様子にジークはこのままでは話が進まないと思ったようで大きく肩を落とすとセスの意見も聞きたため、彼女の予定を聞く。


「確かにきちんと挨拶はした方が良いと思いますけど、ノエルのお父様は確か……」


「……どうするのよ? あんたがおかしな事を言うから」


「これはちょっと予想外かな? セス、ジーク達が結婚それ以外で相談に乗って貰いたい事があるみたいだから行くよ」


しかし、セスの耳にはジークの声は届いておらず、彼女はぶつぶつとノエルの結婚式でのお披露目姿を考え始め出す。

セスの様子にフィーナは大きく肩を落とすとカインにどうにかしろと言う視線を向け、さすがのカインも予想外だったのか困ったように笑うと彼女の手を握り、ギドの書斎に向かって歩き出し、その後をジーク達3人が追いかけて行く。


「……どうかしたのか?」


「ちょっと、困った事になったんだ。ギド、時間は良いか? まぁ、ダメって言っても話すけど」


「時間はないが聞こう」


ギドから入室の許可を取り、書斎の中に入るとギドは大人数での訪問に首を傾げた。

ジークは困ったように笑うとギドに時間の有無の確認をするとギドはジークの様子から大変な事が起きたと察したようで手がけていた仕事の手を止める。


用意ができた事をジークは確認するとワームでシュミットから提案された偵察部隊の事を説明していく。

ジークの口から出る言葉にカイン、セス、ギドの表情は険しくなって行き、今の状況がどれだけ危ないかはジーク達にも理解できる。


「……困ったね」


「そうだな」


「ねえ。見つかるのが不味いなら、集落を捨てて、フォルムに連れてきたら良いんじゃないの?」


ジークが説明を終えるとカインとギドは状況が最悪だと言いたいのか、眉間にはくっきりとしたしわが寄っている。

フィーナはゴブリンとリザードマンをフォルムに連れてきたら良いと軽い調子で言うが、話はそこまで簡単ではないのか、カインは首を横に振った。


「ダメなの?」


「フォルムの森の開拓はその点も考えて進めているんだけどね。流石にまだ全員を受け入れるだけの規模にはなっていない。それに集落を捨てるとなると反対意見も出てくるだろうしね」


「なら、一時的にフォルムに来てもらうって言うのはどうなんだ? 偵察部隊が見て回るのだって、何日も滞在するわけじゃないんだから、誤魔化せないか?」


カインは魔族達が身を隠す準備もしていたようだが時間が足りないと言う。

ジークは一時的なものだからどうにかならないかと聞くが難しいようでカイン、セス、ギドの3人は首を縦に振る事はない。


「ダメなんですか?」


「一時的に誤魔化す事はできないです。集落をそのままにしておかないといけませんから、少し前まで生活していたのが見てわかるように残しておけば、ここに居た魔族はどこに行ったと言う話になり、生活を脅かすと言う事になり、大々的な兵士の投入につながる危険性があります」


「他にもジーク達が協力してくれた事に恩義を感じている者達にも猜疑心を植え付ける事になる。結局は、共存など望んでいないと言われてしまっては意味がないだろう」


不安そうに聞き返すノエルにセスは首を横に振る。

彼女が言うにはフォルムに移動するには完全に集落をつぶす必要があるとの事であり、ギドは今の状況で集落をつぶしてしまえば要らぬ軋轢を生んでしまうと言う。


「それにレギアス様も同行するんだよね。絶対にリザードマンの集落に人族の手が入っている事はばれるね」


「……カイン、お前はあの時にまた余計な事をしていたのか?」


「余計な事はしてないけど、住みやすいように区画整理をしたり、井戸を掘ったり、いろいろとね。そのうち必要になる技能だし、ギドもフォルムで学んでいる事だよ」


カインはリザードマンの集落を作る時に色々と知恵を出したようであり、困ったように笑う。

ジークは彼の表情にまたカインがおかしな事をやったと思ったようで眉間にしわを寄せるとカインはあくまでリザードマン達のために行った事だと話す。


「とりあえずは話し合いを考えていると言うなら、頃合いを見て集落に戻った方が良さそうだな。会話ができる者がいないと争いに成りかねない」


「そうしてくれると助かる」


ギドはジークの口から伝えられたシュミットの言葉を信じようと思ったようで魔族側の代表として話し合いに応じてくれる事を約束する。

ジークは自分だけで話し合いを成立させるのは正直、荷が重かったようでギドの言葉にほっとしたのか胸をなで下ろした。


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