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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第638話

「ギムレット殿の野心は目に見えてわかる。そのため、トリスとルミナに近い人間以外、小僧が生まれた事も知らない事が多いだろう」


「いや、割と知ってると思うけど」


「わたし、ジオスにジークさんがいる事を知っていましたし」


ラースはジークが生まれた事は秘密になっていたと言うが、ジーク自身はわりと知られているのではないかと言う。

ノエルもフィリス夫妻に会うためにジオスに来た事もあり、不思議そうに首を捻る。


「情報操作の仕方などいくらでもあるだろう。だいたい、真実を誰もが知っているなら、ジーク、お前はアリア=フィリスの事をもっと知ってても良いはずだ」


「いや、確かにばあちゃんが昔、ワームとか王都にいたってのは知らなかったけど」


「アリア殿も小僧に気づかれないようにしていたのであろう。小僧に危険が及ぶかもしれないと理解していただろうしな」


シュミットはジークの誕生を秘匿にしていた事に何か裏がある事は理解しているため、曖昧なままにしておこうと思ったようでアリアのたとえを出す。

彼の言葉にジークは先日から自分のまったく知らなかった祖母の1面を知った事もあり、気まずそうに頭をかくとラースはアリアがジークを思ってしていた事だと笑う。


「そんなものか?」


「危険が来たって返り討ちにするけどね」


ジークは良くわからないと言いたいのか首を捻るとフィーナは誘拐だなんだとなっても返り討ちにできると根拠もなく言い切った。


「返り討ちかどうかは別として、何かあったら逃げ切る自信はあるな。縄抜けとかアーカスさんの罠に引っかかった時に脱出するために覚えたし」


「そうよね、縄抜けくらいできるわね。あの罠を潜り抜けたんだから……」


「……しまった。縄抜けができたんだ」


ジークはおかしな事に巻き込まれても自分1人なら逃げ切る事ができると胸を張る。

フィーナはアーカスの罠に捕まった幼い日の事を思いだしたようで険しい表情をするとジークは慌てていたため、縄抜けをできる事をすっかり忘れており、眉間にしわを寄せた。


「……バカですわ」


「言うな。自分でもここまでバカだったとは思ってなかった」


ジークはすぐに縄から抜け出すと一定の体勢だった身体を伸ばす。

カルディナは縄抜けをできる事すら忘れていたジークを見て大きく肩を落とすとジークも若干、気まずいようで彼女から視線をそらした。


「……ジーク、逃げないでよ」


「今の状況で逃げられるか……信用ないな」


フィーナはジークがまたも逃亡すると思ったようで彼を睨みつけるが、ジークは自分の出生にかかわるかも知れない事を自分抜きでされても困るため閣議を決めたようである。

しかし、ノエルとフィーナは信じられないようで彼の服をがっちりつかみ、逃亡を阻止しようとしており、2人の様子にジークは大きく肩を落とす。


「今日はそれだけの事をしていたんだろう」


「それに関して言えば、自覚はある。それで、ばあちゃんの旦那が関係していて、レギアス様は俺との関係を隠していたって事で良いんだよな?」


「そうだ。できれば、アリア殿が亡くなる前に問題を解決して2人をワームに迎え入れたかったんだが、何もできなかった。許してくれ」


シュミットは自業自得だとため息を吐くとジークは情けない事をしていた自覚はあるようで困ったように笑った後、真剣な表情をしてレギアスに確認するように聞く。

レギアスはジークが覚悟をしたのが理解できたようであり、ギムレットの野心を押さえきれなかった事を謝る。

その言葉からは彼がジークとアリアを気にかけていた事がわかり、ジークは照れくさくなったのか視線をそらして頭をかく。


「別にレギアス様に謝られる事ではないですよ。それに問題が解決していたとしても、ばあちゃんはジオスを離れなかったでしょうし」


「そうそう。おばあちゃんも好き勝手、楽しそうにやってたし、気にする事じゃないわ」


「しかしな。アリア殿がワームに戻っていれば」


アリアの性格を理解しているジークとフィーナはレギアスに謝る必要はないと笑う。

しかし、レギアスには負い目があるのか表は優れない。


「きっと、ばあちゃんはワームにレギアス様がいたから、安心してジオスで隠居生活ができたんだと思いますよ」


「はい。レギアス様は立派だと思います」


「私も同じことを思うな。レギアスが居なければワームは大変な事になっていただろう。ギムレットの事だけではなくな。レギアスは良くやってくれている」


レギアスの様子にジークはなんと言って良いのかわからないようで苦笑いを浮かべるとノエルはジークの意見に賛成だと言いたいのか大きく頷いた。

シュミットはレギアスが民のために精力的に動いていたのは彼の負い目からだと理解したようでもう少し楽に考えても良いと彼を労う。


「とりあえず、ジークとレギアス様の件はこれで良いの?」


「……問題ないにしても、フィーナ、お前は空気を読め」


「そ、そうですね」


話の流れを見てきたフィーナは無事解決したのかとジークに耳打ちをする。

解決はしていてもその場で強制終了させる話題でもないため、ジークは大きく肩を落とし、ノエルは苦笑いを浮かべた。


「で、ですけど、こう言う理由があったから、ジークさんのご両親はジオスに現れなかったんですね。ジークさんが危険な目に遭ってしまう可能性を考えての事だたんですよね? ど、どうして、レギアス様もラース様も目をそらすんですか!?」


「す、すまん。あの2人は目先の問題にしか対処して行かない人間だ」


「どこかで問題があれば周りが静止しても突撃して行くような人間だからな。気が付いたら何年も過ぎていたと言うのが平気でありそうだ」


ノエルはフィリス夫妻の誤解も同時に解けたと思ったようで笑顔を見せるが彼女の言葉と同時にレギアスとラースは視線をそらす。

2人から見るフィリス夫妻は目先の問題を解決する事にだけ、全力を尽くすタイプのようでジークの事は完全に後回しにされているのではないかと言う。


「……おっさんに言われるなんて、相当よ」


「そうだな」


初めて聞く両親の性格にジークは怒る気力もなくなったようで大きく肩を落とし、ノエルは余計な事を言ってしまった事に表情を曇らせてしまう。


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