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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第627話

「……なんで、こんな事になったんだろうな」


「ジーク、諦めが悪いよ」


転移の魔導機器でルッケルに移動するとエルトとライオの姿に驚きが隠せないアズに何とか許可を貰って一足先に鉱山に入ったアノス達を追いかける。

ジークは先頭を歩きながら、完全に振り回されている状況に大きく肩を落とすとすぐ後ろを歩いているエルトは彼の肩を叩く。


「諦めが悪いとかじゃなくてな。何かあったらどうするんだよ? アノスとか新米騎士を王都に引っ張って行くにしても、2人がくる必要はないだろ。何かあっても俺は責任なんて取れないぞ」


「そうですよね。ラース様なら、新米騎士達を連れて帰れなかったですかね?」


「おっさん、あれでも騎士で上役にいるんだよな。おっさんを連れてきたら良かった」


ジークはエルトとライオに何かあったら大変であり、ジークはその時の事を考えて胃が痛くなってきたようで腹をさする。

ノエルは苦笑いを浮かべると新米騎士達に言う事を聞かせるのにラースなら適任だったのではと言い、ジークはエルトとライオを同時に相手にするより、ラースの方が面倒事は少ないと思ったようでため息を吐いた。


「どうかな? アノスと言ったかい問題の新米騎士は? イオリア家は金で地位や名誉を買おうとしている人間だからね。オズフィム家やファクト家と言った本物の騎士の家系は目障りだからね。下手をすると意地になる可能性もあるよ。オズフィム家よりイオリア家の方が上だとか言ってね」


「……本当に地位や名誉に執着してる人間は面倒だな」


「違うよ。金に執着してるんだよ」


エルトはラースを連れてきても解決するとは思えないようで首を捻り、ジークはアリアの教えもあるせいかイオリア家や他の新米騎士達が手にしたがる名誉に執着する意味がわからないようで眉間にしわを寄せる。

エルトは彼らの考える事は1つだけだと言うとあまり歓迎できないのか大きく肩を落とした。


「騎士や貴族ってのはろくでもない奴らしかいないな」


「そう言わないでよ。それでも民の事を考えて働いてくれている騎士や貴族もいるんだから、ジークの知り合いにだっているだろ。アズとかレギアスとかレインとか、カインも一応、貴族に名を連ねたね」


「……それはそうだけどな」


改めて、国を動かす人間にまともな人間がいないと思ったジークは眉間にしわを寄せる。

エルトはジークの知っている人間にも誇りを持って働いている人間がいると言う。

挙げられた名前の中にレギアスの名前があり、ジークはエルトとライオにレギアスとの関係を隠している事に少しだけ罪悪感があるのか目をそらす。


「ジーク、何かあったのかい?」


「いや、何も……って、ライオ王子、どこに行く気だ!!」


「いや、こっちには何があるのかと思ってね。鉱山の中を歩くなんて初めてだから、よく観察しないといけないだろ。何か見つかるかも知れないし」


ジークが何か隠していると察知したのかエルトは首を捻る。

苦笑いを浮かべて誤魔化そうとするジークだが、彼の目には道から外れようとしているライオが映り、すぐに声を上げた。

ジークに見つかり、バツが悪そうに苦笑いを浮かべるライオだが、その足は止まる事無く、わき道にそれて行こうとしている。


「ラ、ライオ様、待ってください。おかしなところに行ったら、迷子になります!? わたし達は鉱山の中のすべての道を覚えているわけじゃないんですから!?」


「迷子って、ノエルじゃないんだから、大丈夫だよ」


「……確かにノエルは迷子になりそうだね」


ノエルはライオの腕をつかみ引き留めようとするが、ライオは気にする事無く進んで行こうとする。

彼の中では迷子になるのはノエルのようなどんくさい人間だと言う考えがあるようであり、心配する必要などないと笑い、エルトもノエルは迷子になると思ったようで眉間にしわを寄せた。


「ノエルが迷子になる事は否定しないけど、ライオ王子、いい加減にしてくれ。俺達の目的はアノス達、おかしな行動に移った奴らを引き留める事であって鉱山内部を歩き回る事じゃない。ライオ王子に付き合ってるヒマはないんだ」


「わたしだって、迷子になりません!?」


ノエルが1人で歩き回ると迷子に成すのは確定事項のようであり、ジークはフォローする事無く、ライオに時間がないと言う。

ノエルは迷子扱いされているのは不名誉だと思っているようで声を上げて否定するが3人は生温かい目で彼女を見た後、首を横に振る。


「ライオ、いい加減にしないか。ルッケルの民のためにもあまり時間はかけていられないんだ。フィリム先生は鉱山内で騎士達が1泊すると予想していたけど、本当にそうなるとは限らないんだ。それに魔術学園の生徒もそれなりに攻撃的だと言う話だし」


「こんな場所で魔法なんかぶっ放されたらたまったもんじゃないぞ」


「で、ですよね。補強したとは言え、巨大ミミズさんが動き回ると揺れるんですから、坑道だって崩れてしまうかも知れません」


ライオの行動にはエルトもさすがに止めないといけないと思ったようであり、彼をいさめる。

新米騎士団と魔術学園研究生の戦争風景が目に浮かんだようでジークは眉間にしわを寄せ、ライオを引き留めようとノエルは鉱山が不安定だと声を上げた。


「確かに魔術学園の生徒は荒っぽい人間もいるからね。カインが優しく思えるくらいに」


「……カインが優しく思えるってどんな爆弾を抱えてるんだよ。魔術学園」


「ほ、本当ですね」


ライオの頭にも鉱山内での戦争は考えられたようで困ったように笑う。

彼の言葉には信じられないものが混じっており、ジークは険しい表情で言い、ノエルは顔を引きつらせる。


「ジークやノエルが思ってる以上にカインは調停役が多いよ。冷静になれる人間が中に入ってくれないと問題は大きくなるからね。冷静に見えるセスも激情型だし」


「いや、どちらかと言えば、セスさんはカインが怒らせてるんだろ」


「そうとも言うね。でも、あの2人はそれが愛情表現だから、それより、そろそろ行こうか?」


エルトはカインの評価の低さに苦笑いを浮かべるとジークは冷静なツッコミを入れた。

カインとセスの関係は一先ず、置いておこうとエルトは言い、坑道の奥を指差す。

視線は寄り道をしようと言い始めたライオに集まり、ライオは観念したのか苦笑いを浮かべて頷き、4人は先を進む。


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