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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
624/953

第624話

「わかりました。カルディナ様、これからよろしくお願いします」


「こちらこそ。よろしくお願いします」


カルディナを連れてルッケルのアズの屋敷に移動する。

ラースから受け取った書面に目を通したアズはカルディナへと頭を下げ、カルディナも続く。

カルディナの態度はいつもの高圧的な態度ではなく、ジークは何が起きたかわからずに首を傾げる。


「……どうかしましたか?」


「いや、なんかカルディナ様の様子がいつもと違う気がしたから、いつもは人を見下すような態度をとってるだろ」


「まったく、相変わらず失礼な男ですわね」


ジークの様子に気が付いたカルディナは怪訝そうな表情をするとジークは苦笑いを浮かべながら彼女の態度の変化について聞く。

その言葉はかなり失礼なものであり、カルディナはムッとしたようで頬を膨らませるが、ジークの性格もかなり理解しているようでがなり立てる事はない。


「アズ殿は女性でありながら、領主と言う役割を担っている方なんです。尊敬の念を抱いていてもおかしくはないでしょう」


「あー、カルディナ様は文官志望なんだよな?」


「女性には厳しい世界ですからね。あまり女性で文官になりたいと言う人も居ないでしょうから、地位を確保するのも難しいでしょうし」


カルディナはアズを尊敬していると言い、彼女の様子にその場にいた3人は苦笑いを浮かべた。


『アズ様、申し訳ありません。至急、お話ししたい事が』


「入ってください」


その時、緩んでいた空気を破るように勢いよくドアをノックする音が響く。

その様子から何か良くない事が起きたと判断したアズはすぐに来訪者への入出許可を出す。

部屋に入ってきたのは鉱山の入り口にある兵舎に詰めている1人であり、よほど急いできたのか肩で息をしている。


「俺達は出て行った方が良いか?」


「いえ、ジークとノエルも聞いてください。すぐに何かをしなければいけない時は手伝っていただきたいですから、良いですね?」


『は、はい。2人が手伝ってくれるのはありがたいです』


ジークは同席してはいけないと思ったようでノエルとカルディナを連れて席を立とうとするが、アズは3人を引き留めた。

兵士もジークとノエルを頼りにしているようでアズの言葉に大きく頷くが、まだ、息が整っていないようで言葉は途切れ途切れである。

息が整った兵士はアノスをリーダーにした新米騎士達がフィリム達魔術学園の関係者が発見した遺跡の中の魔導機器を壊すと言いだして鉱山の中に入って行ったと言う。

兵士達は何とか引き留めようとしたようだが、新米とは言え騎士として名を連ねる者達である。

平民である兵士達は権力を笠に進んで行く騎士達を止める事はできず、何とか説得しようとしているが奥に進んで行ったと言う事だ。


「……壊すって、壊したら解決するとでも思ってるのか? それも領主であるアズさんの許可も得ずにか?」


「そんな乱暴な事をして、何かあったらどうするんですか?」


「鉱山の奥に遺跡があって魔導機器が有った事は聞いていますが、なぜ、そのような浅慮な考えに至ったのかが分かりませんわ。これだから、騎士と言うバカは滅びた方が良いと言うのです」


兵士からの報告に眉間にしわを寄せるジーク。

ノエルは効果もはっきりしていない魔導機器を破壊するのは賛成できないようで勢いよく席を立つ。

カルディナは魔術学園にも所属している事もあり、アノス達新米騎士の行動に呆れ顔である。


「フィリム先生はまだ王都か?」


「そうですね。先日、遺跡内部で見つけたものの調査が最優先だと言っていましたから、魔術学園にいると思います」


「遺跡までたどり着くのはそれなりに時間がかかるだろ。アズさん、俺達は王都の魔術学園に言ってフィリム先生を連れてくる。フィリム先生は鉱山の中に転移魔法で移動できるからな」


遺跡の中を歩く場合は時間もかなりかかり、騎士鎧に身を包んだ騎士達は慣れない道を歩くのに時間がかかる。

そう判断したジークはすぐにフィリムに話をする必要があると思い、王都の魔術学園に移動すると決めて立ち上がった。


「カルディナ様はどうしますか?」


「私も行きますわ。緊急の件ですし、騎士団の暴走は報告しなければいけません。不本意ですがエルト様に面会を求める必要があります」


「お願いします」


カルディナはエルトと会いたくはないようだが、そう言うわけにも行かないと割り切ったようですぐに立ち上がる。

アズは3人に頭を下げるとジークは転移の魔導機器を手に取った。


「待ちなさい。魔術学園に行くのなら、私なら直接行けます」


「カルディナ様、お願いします」


カルディナは自分が転移魔法を使うと言い、彼女はすぐに転移魔法の詠唱に移り、ジーク達3人の身体は淡い光に包まれて飛び去ってしまう。






ジーク達はすぐに魔術学園の前に到着するとカルディナを先頭に魔術学園の廊下を進む。

カルディナの様子にすれ違う生徒達は何かあったと察してくれたようで廊下の道は開けて行く。


「割とみんな気を使ってくれるんだな」


「そうですね」


「急いでいると言う事がわかれば道は開けて貰えますわ。同じように急いでいる相手を見つけたら、同じようにしてあげれば良いのですわ。研究機関ですからぶつかって資料を落とすなど無駄な時間をさけるために必要な事ですから」


研究者達は盲目的で人の事など気にしていないと思っていたようでジークは驚きを隠せずにつぶやく。

カルディナはバカな事を言うなと言いたいようであり、呆れたように言うが時間が惜しいのか振り返る事はない。


「あれ? 急いでるみたいだけど、どうかしたのかい?」


「見ての通り急いでいるんだ。空気を読んでくれ。今日は本当にライオ王子の相手をしている時間はないんだ」


「そうなのかい?」


その時、廊下の先から3人を見つけたライオが手を振る。

ライオの顔にジークは面倒な人間に会ったと言いたいのか大きく肩を落とす。

3人の様子にライオはただ事ではないと感じ取ったようだが、何があったか気になるようで3人の後を追いかけて歩く。


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