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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第620話

「今更だけど、あんた、曲がりなりにも領主なのよね? なんで、あんたがわざわざ、私達を呼びに来てるのよ? 使用人くらいいるでしょ」


「素人にフィーナの相手はきついからじゃないかな?」


「私のせいじゃないわ」


シュミットの書斎に向かう廊下でフィーナはふと1つの疑問が頭をよぎる。

彼女の言う通り、先日まで不在にしていたとは言え、屋敷の管理はしっかりとされており、地方とは言え領主の立場であるカインが自ら動く仕事ではない。

カインは王族であるシュミットに対しても態度を改める事のないフィーナが原因だとため息を吐き、フィーナは自分が悪いなどまったく思っていないようで迷う事無く言い切った。


「下手したら不敬罪で処罰されてもおかしくないですからね。なるべく、使用人達には見られたくないでしょう。そのままにしておくと使用人達にもシュミット様が下に見られてしまいますし」


「そ、そうですね。フィーナさん、気を付けましょう」


「確かにそうなんだけど、王族との最初の出会いがエルト王子(あれ)だからな」


レインはせめて、他社の目がある時は気にして欲しいと言う。

ノエルはフィーナに言い聞かせるように声をかけるがフィーナはあまり深く考えていないのか聞こえないふりをしている。

ジークはレインの言いたい事は理解できているようだがエルトに振り回されているためか切り替えが上手くできないと頭をかく。


「……それについては反省してる。もう少し最初くらいはしっかりさせれば良かったって、今になって思うよ。フィーナは諦めていたけどジークなら分別が付くと思っていたんだけどね」


「カイン、あなたももう少し言い方を考えなさい」


「反省します……着いたね」


カインもジークやフィーナの王族に対する態度には反省するところがあるようで眉間にしわを寄せた。

彼の言葉も良く考えればかなり失礼であり、セスはカインを睨み付け、彼女の視線にカインは苦笑いを浮かべた時、タイミング良くシュミットの書斎の前に到着する。


「カイン=クロークです」


「……入れ」


「失礼します」


カインは1度、深呼吸をするとドアをノックする。

ドアの中からはシュミットが反応を返し、カインはドアを開けると礼をして書斎に入り、ノエル、セス、レインはカインに続くがジークとフィーナは何も考える事無く書斎に入って行く。


「……言っているそばから」


「セス、今は静かにする」


ジークとフィーナの様子にセスは眉間にしわを寄せるが、今は2人相手にお説教する時間もないため、カインが彼女をなだめる。

そのやり取りにシュミットは仕方ないと言いたいのか小さくため息を吐くと視線はシュミットに集まった。

シュミットの書斎にはレギアス、ラース、カルディナも集まっており、書斎のなかは少しピリピリとした空気が漂っている。


「ジーク、ノエル、フィーナ、今回のシギル村の事件解決への協力、感謝する」


「別に感謝される事でもないな。勝手に首を突っ込んだ形だしな」


「そうですね。わたし達は当たり前の事をしただけですし」


シュミットは領主として一般人でもあるジーク達3人に礼を言う。

ジークは元々、フィアナと関わった事から始まったため、シュミットに礼を言われる事ではないと苦笑いを浮かべ、ノエルはシギル村の人達が困っていたから当然だと頷いた。


「そうか……」


「何よ?」


2人の反応にシュミットは頷くとフィーナへと視線を向ける。

フィーナは彼の視線に良い気分がしなかったようでシュミットを睨み返す。

交差する2人の視線には妙な緊張感があり、書斎には沈黙が訪れる。


「睨み返さない。シュミット様、愚妹が失礼をしてしまい、申し訳ありません」


「……いや、構わん。ジーク、お前は気分を害するかも知れないが、今回の件の協力してくれた礼に冒険者と同様に3人には報酬を出そうと思う。受け取ってくれるか?」


「報酬?」


その沈黙を破るようにカインはフィーナの頭に拳骨を落とし、フィーナは頭に走った痛み床を転がりまわる。

彼女の様子にシュミットはため息を吐くとジーク達に報酬を出したいと提案をし、ジークは考えてもいなかった事に首を傾げた後にノエルへと視線を向けた。

彼女も戸惑っているようで困ったように笑うがお互いに同じことを考えたようで首を横に振る。


「やはり断るか?」


「ああ、俺達に回す金があるなら、シギルの復興にでも使ってくれ。俺達は別に困ってないしな」


「そうですね。まだまだ、援助が必要ですから」


シュミットは2人の答えに予想がついていたようで小さくため息を吐く。

ジークとノエルは迷う事無く自分達の事より、シギル村の事を優先するように言う。


「ちょっと待ちなさい!! 少しくらい報酬を貰いなさいよ!!」


「要らないだろ。今はフォルムに寄生して生きてるようなもんだし、そこまで困ってない。だいたい、俺は薬屋だ。フィーナが欲しいならお前は貰えば良いだろ? お前は無職(冒険者)なんだから」


「それだと、私1人がお金の亡者みたいじゃない!!」


報酬を辞退する2人に対してフィーナは拳を握り締めて考え直せと叫ぶ。

ジークはため息を吐くとフィーナだけが貰えば良いと言うが、フィーナは1人だと報酬を貰いにくいと主張する。


「カイン=クローク、フィーナ=クロークの報酬はお前に預ける」


「はい。無駄飯を食らっていた期間の食費としてジオスの両親に送りたいと思います」


「ちょっとどういう事よ!?」


シュミットはカインにフィーナの報酬を預けると言い、カインは迷う事無く彼女の報酬の使い道を決めた。

フィーナは自分で報酬を使いたいようで声をあげた時、カインの拳がフィーナのみぞおちにねじ込まれ、フィーナは白目をむき気絶してしまう。


「……カイン、もう少しやり方がないか?」


「うるさくなるからね。だいたい、報酬を貰ったら貰ったで後でグダグダ言うだろ。結局は同種の人間なんだから」


「違いない」


カインは彼女の身体を担ぐとフィーナの性格上、どちらにしても騒がしくなると言い切り、ラースはカインの判断が正しいと笑う。


「シュミット様、今日はこれで失礼します」


「そうだな。領地運営があるなか、手間を取らせて悪かった。何かあったら、カルディナ=オズフィムを使いに出す。その時はよろしく頼む」


「わかりました」


シュミットはまだカインに相談する事があるようだが今は時間がないようであり、日を改めると言うとカインは頭を下げた後、ジーク達を促して書斎を出て行く。


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