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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第619話

「確かにまずはレギアス様と話をしないといけないわよね?」


「そうなんだけどな……改めて、話をしないといけないと思うと緊張するな。あれだ。俺が財産目当てで事実確認しに来たとか思われないよな?」


「レギアス様はそんな人じゃないでしょ」


フィーナはジークへと視線を向ける。

ジークはレギアスと話す踏ん切りがついていないようで言い訳を言い始め、フィーナは大きく肩を落とす。


「……それは重々に承知しているけどな。それでも改めるとなんて言って良いかわからない。と言う事でしばらくは様子を見ようと思うんだ。知らぬ存ぜぬで少なくともティミル様からおっさんに手紙が行かないまでは引っ張れると思うんだ」


「話に夢中になるのは良いけど、もう少し周囲に気を使った方が良いね。それに話がずいぶんと後ろ向きだよ」


「まったく、レギアス様に話を聞く決心がつかないならもう少し場所を弁えなさい」


時間を稼ぎたいジークが遠くを見つめた時、カインとセスが部屋に入ってきてため息を吐いた。


「いつの間に部屋に入ってきた!?」


「ノックもしたけど、返事がなかったからね。中を覗いてみたらこれだ」


驚きの声を上げるジークにカインはくすりと笑う。

カインの表情にジークはなんと言って良いのかわからずに眉間にしわを寄せ、彼の表情にノエル、フィーナ、レインの3人は苦笑いを浮かべた。


「それで何かわかったのか?」


「それなりにね。とぼけてもいくつか証拠は集まってるし、大幅にとは言えないけど権力を奪えるから、しばらくは大人しくして貰えると思うよ。ただ、その間に余計な事を企まないとは限らないけどね」


「……おかしな事を言うな。不安になるだろ」


話をレギアスから他に移したいジークは強引に話を変えようとする。

カインは別に2人の関係を追及させる気もないようであり、彼の話に乗るとギムレットの権力を削ぐ事ができると言う。

しかし、彼の言葉にはまだ裏がありそうであり、ジークは眉間にしわを寄せた。


「おかしな事は言ってないよ。ジークもさっき見ただろ。後がなくなると人間は次のどんな行動に移るかを」


「後をなくして突進してきて押さえきれなかったらどうするんだよ?」


「そこはほら切り札(ジーク)がいるから、良心の呵責とか道徳とかいろいろと切り捨てれば作戦の立て方なんかいくらでもあるし」


行動が制限された人間が負荷をかけられて爆発した場合を考えてしまったジークはカインの胸ぐらをつかむ。

カインは胸ぐらをつかまれようがひょうひょうと笑っており、その様子から彼が何かを企んでいるのがわかる。


「……いや、お前はいろいろと気にしろ」


「そ、そうですね。あの、カインさん、とりあえず、今は何かを考えても仕方ないと言う事でしょうか?」


カインの胸ぐらをつかんでいてもこれ以上、何をわからないと思ったようで手を放してため息を吐く。

ノエルは2人の様子に苦笑いを浮かべると自分ではカインが何を考えているかわからないため、首を捻った。


「そうだね。シュミット様もしばらくはワームにいるし、強欲爺の考える事は誰よりもレギアス様が理解しているだろうからね」


「……大事にならなければ良いけどな」


「何を言ってるんだよ。間違いなく大事になるよ」


カインはしばらく、ギムレットの監視をシュミットとレギアスに任せると言い、ジークは不安しか感じないようで大きく肩を落とす。

その様子にカインは楽しそうに笑っているが、カイン以外は笑えないようで眉間にしわを寄せている。


「……あんた、良く笑ってられるわね」


「笑うのは大切だよ。無表情を見せているより、笑っている方が相手に表情が読まれにくい。だいたい、ムカつく人間が笑っていると相手は頭にくるから、冷静な判断ができなくなる時もあるからね」


「セスさん、落ち着きましょう。深呼吸です」


フィーナは眉間にしわを寄せたまま、カインの笑顔が不謹慎だと言う。

その言葉はカインにとって想像の範囲内であり、その笑みを消す事はなく、カインに複雑な想いを抱いていた事のあるセスは当時の事を思いだしたようでこめかみにはぴくぴくと青筋が浮かんでいる。


「セスの機嫌が悪くなってきたから、これくらいにしておこうか?」


「……セスさん中心かよ」


「嫌われたくはないからね。それじゃあ、シュミット様に挨拶してフォルムに戻ろうか? まだまだ、やる事もあるし、呼んでくるように呼ばれてたんだよね。あまり時間もかけられないしね」


セスの様子に気が付いたようでカインから笑みが消えた。

その様子にジークは肩を落とすが、カインは当然だと言い切るとシュミットに呼ばれている事を告げる。


「……いや、シュミット様を待たせてだらだら話してたら不味いだろ?」


「大丈夫。シュミット様もここのメンバーの事を知ってるからすぐに呼びかけに応じないって理解してるから」


「おかしな信頼をされてますよね?」


立場を考えると時間をかけてられないと思いジークは準備を始めるが、カインはゆっくりで良いと笑う。

ノエルとレインは苦笑いを浮かべてジークの手伝いを始めるが、フィーナは未だにシュミットの事を小物扱いしている事もあり、ゆっくりとしている。


「フィーナさん、急いでください」


「用があれば自分でここまで来たら良いでしょ。だいたい、あの小者より、立場的に偉いエルト様とライオ様は自分で来るんだし」


「いや、あの2人と比べたらダメだろ。むしろ、あの2人は王族としてダメな人間の部類だ。それに領主の立場があるんだ。ワームを統治するうえでどっしり構えないと求心力がないとも言われると面倒だぞ」


フィーナを急かすレインだが、フィーナはすぐには動かず、割と動きの素早いエルトとライオを例に出す。

ジークは2人の顔が頭に浮かび、眉間にしわを寄せるとシュミットには頑張って貰いたい事もあり、彼の味方をする。


「ジーク、あんた、ずいぶんとあの小者の味方になったわね?」


「フィーナ、良いか。シュミット様の方がエルト王子やライオ王子より、常識が通じるんだ。話がしやすい」


「……そう言われればそうね」


ジークがシュミットの味方をする意味がわからないとため息をつくフィーナだが、エルトとライオと改めて比較した時にシュミットの方がまともだと考え直したようでその重い腰を上げる。

しかし、その言葉は王族に対してかなり失礼な事であり、セスとレインは眉間にしわを寄せた。


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