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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第618話

「意味がわからないわ。また裏切られたらどうするのよ?」


「その時はカインがまたろくでもない事を考えるだろ」


オクス達から聴取をするためにカインとセスの転移魔法でワームのシュミットの屋敷に移動したジーク達。

聴取に同席しても仕方ないジーク、ノエル、フィーナ、レインは一室で待たされているのだが、納得のできないフィーナはぶつぶつと文句を言っており、彼女の様子にジークはため息を吐いた。


「だいたい、そんな事だったら」


「で、ですね」


「……ジーク、ノエル、何か隠してるわね?」


ジークとノエルはフォルムの人達にシーマを預けてきたジークとノエルは気まずいものもあり、2人で顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。

2人の様子にフィーナは何かイヤな予感がしたのか2人に詰め寄った。


「な、何もありません!?」


「ジーク、何があったの?」


「……まぁ、ばれるよな。それに隠していても仕方ないし」


ノエルは大きく首を横に振るが、彼女の態度は明らかに何かを隠しており、フィーナは大きく肩を落とす。

ジークは改めて、嘘の吐けないノエルの様子に頭をかいた後、シーマを捕らえてフォルムの人達に監視を頼んできた事を2人に説明する。


「……どうして、あのクズは無駄に偽善者のふりをするのよ?」


「テッド先生にも頼まれてたから仕方ないだろ。テッド先生からすればシーマさんは娘みたいなものだし、俺もできれば助けてあげたいし」


「それはそうだけど……」


シーマの捕縛の件を聞いたフィーナの眉間にはくっきりとしたしわが浮かんでおり、ジークはテッドの気持ちを汲んでやりたいと笑う。

ジークの笑顔にフィーナは少し頭に上がった血が下がったようだが、まだ、完全に納得ができていないのか口を尖らせる。


「カインの事だから、シーマさんにフォルムの領主の地位を返すつもりなんじゃないでしょうか? シーマさんのお父上はフォルムの民に今も愛されているわけですから、長い目で見ると彼女が継いでくれた方が良い場合もありますし、エルト様が王位を継げばカインを地方領主にして遊ばせておくわけにも行きませんから、カインが王都に戻ればフォルムの領地運営は浮いてしまいますし」


「一応、妹がいるぞ。領地運営なんか絶対に無理だろうけど」


「……ジーク、ぶん殴って良い?」


レインはカインが何を思ってシーマを保護したか予測できたようで苦笑いを浮かべるとジークはフィーナをバカにするように指差す。

フィーナはこめかみに青筋を浮かべながら、拳を握り締めてジークに聞く。


「遠慮する。と言うか、お前に領地運営ができると思ってるのか?」


「無理よ。そんな事になったら、ギドに丸投げするわ」


「……そこまで言い切ると清々しいな」


フィーナは自分が領地運営などできるとは一切思っていないようできっぱりと言う。

少しくらいは頑張ると言ってくれる事を期待していたのか、ジークは彼女の答えに大きく肩を落とす。


「あの、ギドさんもいつまでもフォルムに居てくれるとは限らないんじゃないでしょうか?」


「そうですね。フォルムもカインがばらまいた嘘に釣られて優秀な人達も集まってきています……素性は良くわかりませんけど」


「ザガードやカインを良く思っていない奴らの手の者が入ってきててもわからないだろうな。フォルムは叩けば埃だけじゃなく、ラミア、ゴブリン、リザードマン、更にはドレイクまで出てくるからな」


前領主の隠し財産の嘘はそれなりに効果があったようで優秀な人間が少しずつ集まってきているようである。

ジークも話は聞いているようだが、フォルムと言う場所やカインを快くない人間がいる事を考えると優秀でももう少し人の集め方を考えて欲しいとため息を吐いた。


「確かにいろいろ出てきますね」


「す、すいません」


「別にノエルが悪いってわけじゃないでしょ……領主が胡散臭いと集まる人間も胡散臭いのね」


ノエルは慌てて頭を下げ、フィーナはため息を吐くと原因は全てカインのせいだと言い切る。


「それはわからないけどな。と言うか、人が集まってきてるんだから、俺達はジオスに戻っても良いんじゃないか?」


「そうかも知れませんけど、ジークは戻らないですよね?」


「そりゃな。俺はテッド先生に教わる事もあるし、アンリ様の事も考えると早い所、1人前にならないといけないからな」


フォルムの運営にも人手が足りてきた事で自分達がフォルムに滞在する理由がなくなったのではないかと首を捻った。

レインはその言葉が心からの言葉ではないとは理解しており、苦笑いを浮かべる。

彼の表情にジークは少しだけ気恥ずかしくなったようで頭をかくとレインから視線をそらす。


「ねえ。そう言えば、ジーク、あんたってレギアス様の甥っこになるのよね。それなりの立場を手に入れたんだし、それで強引にアンリ様の診察ってできないの?」


「……さすがに乱暴だろ? エルト王子やライオ王子にも話してないわけだし、それに今、診察しろって言われてもまったく役に立たないぞ」


「威張るんじゃないわよ」


フィーナはジークにも立場ができたと思いついたようで力技でアンリを診察するように言う。

ジークは自分の腕をまだ一定のレベルだと思えていないようで胸を張って言い切り、彼の態度にフィーナは大きく肩を落とすがその様子は先ほどのジークとフィーナと立場が入れ替わっただけであり、ノエルとレインは苦笑いを浮かべて2人を見ている。


「そう言えば、俺とレギアス様の関係ってエルト王子とライオ王子に話した方が良いのか? ……いや、止めておこう。おかしな事に使われそうだ」


「そ、そうですね」


「いつかは言わないといけないとは思いますけど、その前にレギアス様にきちんと話を聞かないといけないんじゃないですかね?」


話していた時に、エルトとライオに秘密にしていた事を思い出し、ジークは首を捻るがすぐに思いとどまった方が良いと自己完結をする。

ノエルはジークが何を考えたか理解できたようで小さく頷くとレインは先に話をするべきなのはレギアスだと思ったようで首を捻り、ジークもそれは理解できているようだがタイミングがわからないようで困ったように頭をかいた。

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