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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第617話

「と言うか、完全に繋がってるよな?」


「繋がってるだろうね。まぁ、証拠は充分なんだけど、きっとイオリア家の当主も強欲爺もとぼけるだろうね」


オクスがギムレットの手先として動いている事にギムレットがガートランド商会を通してイオリア家と繋がっている事は確定したようでジークは眉間にしわを寄せる。

カインはオクスの身柄を押さえはしたものの、あくまでオクス1人の罪として処理されると思っているようで面倒だとため息を吐く。


「終わったようだな。ウィン殿、騒ぎを起こしてしまい申し訳ない」


「いえ、気にしないでください」


その時、話し合いを終えたようでシュミットが現れ、迷惑をかけた事をウィンと村人達に頭を下げた。

王族であるシュミットに頭を下げられ、住民達は慌てる。


「ジーク、ソーマ、こっちも終わったよ」


「レーネ、ご苦労さん」


シュミットは住民達に声をかけ始め、王族と話すようなことのない住民達は緊張した面持ちで挨拶をしている。

その時、他に散った襲撃者達も捕まえる事ができたようでセレーネが現れた。

ソーマは彼女を労い、セレーネは住民達に囲まれているシュミットの様子に怪訝そうな表情をする。


「カイン、いつまでここに居るんだ? 話し合いが終わったなら、いつまでもシギルに居る必要はないだろ?」


「セスが転移魔法で物資を運んでくるから、それまで待つ必要があるね。行き違いとかは面倒だからね。それにいろいろと聞きたい事もあるし」


「そうだな」


ジークは襲撃者を捕らえたもののもしかしたら、まだ仕掛けてくる可能性も考えられるため、ワームに戻るように提案するがカインは首を横に振るとオクスの顔を覗き込む。

レギアスもオクスには聞きたい事があるようでカインの言葉に頷くと彼を見下ろす。

その様子はジーク達にいつも向けている表情とは異なり、高圧的である。


「あの、レギアス様、あまりきつくするのは」


「ノエル、お主が優しいのは知っているが引き締めるべき事は引き締めなければならん」


「すまない。遅れたな……オクス、お前がまさかこのような事を起こすとわな」


ノエルはレギアスの様子がいつもと違うため、落ち着くように言うが王族であるシュミットの命を狙った事は許される事ではなく、レギアスは彼女の言葉に首を横に振った。

その時、襲撃者達に縄を付けたラースと兵士達が顔を出し、ラースは縄で縛られたオクスを見て残念そうに言う。


「おっさん、知り合いか?」


「うむ。昔な。その縁があって、再起を考えて向かい入れたんだがこのようになってしまって残念だ」


「……お前達に何がわかる。どれだけ、腕がたってもイオリア家の名前が無くなればこんなものだ」


ラースとオクスの視線が交差し、ジークは2人が知り合いだとわかり首を捻る。

オクスをワームの兵士として雇ったのはラースのようであり、裏切り者を招き入れてしまった事に頭を下げた。

ラースの様子が気に入らないようでオクスは彼を睨みつけると昔の自分の判断は間違っていたと叫ぶ。


「違うね。あんたは結局、家の名前に甘えてただけだろ。自分が落ちぶれてもイオリア家に縁のある人間が助けてくれるってね」


「腕がたつなら、冒険者にでもなれば良かったんだ。冒険者で英雄とでも呼ばれれば、イオリア家の名前などなくても人が集まってきたぜ」


その声に現役の冒険者であるセレーネとソーマが呆れたように言う。

2人の言葉は自分の腕だけで生きてきた人間の言葉であり、甘えたオクスの言葉を跳ね飛ばすだけの強さがある。


「……フィーナもこれくらい言えるようになってくれないかな?」


「何よ?」


「何でもない」


ジークは2人の言葉に半人前の冒険者であるフィーナを見てため息を吐く。

フィーナはジークに小バカにされた事を感じ取ったようで睨み付けるがジークは首を横に振った。


「と言うか、イオリア家の名前じゃなく、あんたを見て、おっさんは雇い入れたんでしょ。いろいろとダメじゃない?」


「……核心をついてる分、凄く残念な感じだね」


「まったくだな」


フィーナはオクスがラースの心を裏切った事に呆れたように言う。

彼女の言葉にカインは小さくため息を吐くとまっすぐとオクスを見据えるとシュミットが住民達との話を終えたようでジーク達に近づいてくる。


「……殺せ」


「……カイン=クローク」


オクスは近づいてきたシュミットを睨み付けるとこれ以上の醜態を見せる気はないようで自分の事を殺すように言う。

シュミットはオクスの視線に怯む事無く、彼を見下ろすとカインの名前を呼ぶ。


「話を聞き終えた後、オクス=ハイラード以下3名をお前に預ける。好きに使え」


「わかりました。騎士として名高いラース=オズフィム様が認めるほどの剣の実力者を迎え入れる事ができ、光栄です」


「ちょ、ちょっとどういう事よ!? 意味がわからないわよ。ちょっと、放しなさいよ。こいつらあんたの命を狙ったのよ。どうして、そんな甘い事を言えるのよ!!」


シュミットは自分の命を狙ったオクスと兵士2名をカインに任せると言い、カインはフォルムの兵士として迎え入れる事をすぐに誓う。

彼の予想外の言葉に許された本人達が唖然としているなか、フィーナは意味がわからずに声を上げるとシュミットの胸ぐらをつかもうとするが、ジークとラースに腕をつかまれてしまい、手が届かないため、唾が彼にかかる勢いでまくし立てる。


「……私にそれを非難する資格はないであろう? それにカイン=クロークの下でなら再起も考えられるだろう。少なくともラースよりは考えそうだ。許すにしてもワームや王都では何かと不味いだろうしな。フォルムの地で名前を変えればどうとでもなるだろう」


「確かにおっさんの下じゃ、望めない気がするのは何でだろうな」


「シュミット様、ジーク、もう少し言葉を選んではどうだ?」


シュミット自身もエルトとライオの命を狙った事もあり、オクス達を裁く事はできないと言う。

取りあえず、殺さずに済んだと思ったジークは胸をなで下ろすと思っていた事を口にし、レギアスはラースがバカにされている事に大きく肩を落とす。


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