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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
616/953

第616話

「ジーク、ノエル、無事?」


「フィーナさん!?」


「小娘、気を抜くな。まだ終わってないのだぞ!!」


襲撃者の側面を突いた軍勢からフィーナが抜け出てジークとノエルの名前を呼んで手を振る。

彼女の登場に驚きの声を上げるノエルだが、フィーナを怒鳴りつける声が響き、フィーナはため息を吐くと軍勢の中に消えて行った。


「フィーナはおっさんと一緒って言ってたか? って事はセスさんとレインも一緒か?」


「そういう事、統制の執れた部隊で来られたら、寄せ集めじゃ、分が悪いからね。ラース様にわずかだけどワームの兵士達を率いて貰ったんだよ。こういう時にオズフィムの名前って便利だよね」


「……それで時間稼ぎか。納得が行った」


フィーナの姿を見たジークはラースがあの軍勢を率いていると察したようで頭をかく。

そこでカインはネタばらしをすると振り回されているジークは納得いかずに肩を落とすがノエルとフィアナは戦況が有利に傾いた事にほっとしたようで胸をなで下ろした。


「これで安心ですかね?」


「そうとは言えないね。逃げ道が無くなっちゃうから、目的を達しようと一気に駆け抜けてくる人間もいるだろうから」


「……そうだな」


余裕が出てきたノエルだがカインは気を抜かないように釘を刺す。

その時、集団から1人がこちらに向けて突撃を開始してくるのが見え、ジークは冷気の魔導銃で撃ち抜き、動きを封じる。


「カイン、無事ですか?」


「タイミングが良かったから、無事だよ。流石、セスだね」


「……あなたに言われるとバカにされている気しかしませんわ。それにこのような部隊の指揮はラース様がいるのです。私は特に何もしていません」


村の正面から襲ってきた者達はラースの率いた部隊に全員捕縛され、セスがジーク達に声をかける。

カインはセスに礼を言うが、彼女は彼女でカインと付き合い始めたものの、どこかでライバル心は残っているようでそっぽを向く。

彼女の様子にカインは苦笑いを浮かべているとセスに遅れてフィーナ、レイン、ラースの3人が遅れて現れた。


「カイン、セス、遊んでないで状況を説明しろ。シュミット様は無事だろうな?」


「他の襲撃者はジークが事前に張った罠により、村内部には侵入していません。シュミット様とレギアス様の護衛に紛れ込んでいた裏切り者は協力者であるソーマ=ゼリグリムにより、捕縛されています」


「……おい。裏切り者が混じってるなんて俺は聞いてないんだけど」


カインとセスの様子はラースには遊んでいるように見えたようで表情を険しくして言う。

その言葉にカインは表情を引き締めると他の場所の状況を説明するが、彼の言葉の中には聞き捨てならないものも混じっており、ジークは眉間にしわを寄せた。


「言ってないからね。ジークやノエル、フィアナは腹芸なんかできないだろうから、知ってたら顔に出るからすぐにばれちゃうだろ」


「それに関して言えば、自信があるけど納得はいかないな」


「ふむ。お主の言う通り、状況は上手く行っているようだな。ただ、上手く行きすぎているのは何かありそうだな。油断をするなよ」


カインは秘密にしているのは悪いと思いつつも、説明できない事だったとため息を吐く。

ジークはカインの言い分もわかったようで頭をかくとラースはカインが予測した通りに進み過ぎている事に気を引き締めるように言うとまだ捕まっていない襲撃者達を追うように指示を出す。


「とりあえず、村長さんのところに行かない? 何かあるかも知れないなら、村長さんの屋敷でしょ?」


「そうですね。シュミット様とレギアス様も心配ですし」


「カルディナ様もいますしね」


フィーナは村の入り口に居ても仕方ないと村長の屋敷に向かって歩き出し、ノエルとフィアナも続く。

カルディナの名前に指揮をしていたはずのラースがそわそわし始め、彼の様子にジークは眉間にしわを寄せた。


「……おっさん、カルディナ様が心配なら行ってきたらどうだ?」


「そ、そう言うわけにも行かん。セス、レイン、転移魔法でこやつらをワームに運んで貰えるか? ワシは残りの襲撃者を捕まえなければいけないのでな」


「わかっています」


カルディナの事を見てくるように言うジークだが、ラースは任務優先だと言い、セスとレインに指示を出すと数名の兵士達と村の外に出て行ってしまう。

子煩悩な彼の様子に残された者達は苦笑いを浮かべるが、あまり遊んでられる状況ではなく、セスとレインは襲撃者達を牢に入れるために転移魔法でワームに戻って行く。

ジークとカインはこちらは2人に任せても良いと判断し、先に戻ったノエル達の後を追いかける。


「こいつが裏切り者?」


「そう言う事だな。しかし、わざわざ、領主殺しに手を貸すバカがいるとわな。権力者ってのは無駄な争いが好きだな」


「仕方ないよ。権力が好きなやつらは本当に大切なものが見えないからね……ねえ。オクス=ハイラード。いや、オクス=イオリア様とお呼びした方がよろしいでしょうか?」


ノエル達に追いつき合流してウィンの屋敷に戻るシュミットとレギアスに同行していた兵士が3人縄で縛られて地面に転がされている。

フィーナは3人の顔を覗き込むとソーマはため息を吐くとカインは苦笑いを浮かべて兵士の1人の顔を覗き込むと知り合いなのか『オクス=イオリア』と呼ぶ。


「イオリア? アノスの親戚か何か?」


「一応は分家になるのかな? 現当主の実の弟で騎士の名前を金で買うなど許されないと言って、袂を割ったらしいんだけど、世渡りは上手くなかったようでね。落ちぶれて頭を下げて末席に名前を連ねるようになったって話だよ」


「情けないわね。それもこんなことをしてるって事は完全に捨て駒じゃないの? それも気に入らないって言った相手に頭を下げたの? かっこ悪いわ」


イオリアの名前に首を捻るジーク。

カインはオクスの簡単な説明をするとフィーナは呆れた様子でため息を吐く。

フィーナの言葉はオクスにとって完全に侮辱されたと思ったようで彼女を睨み付けるがフィーナにとって、オクスは完全に負け犬であり、フィーナは気にする事はない。


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