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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
615/953

第615話

「あ、あれですかね?」


「……もう少しどうにか出来ないのか? 殺す気なら、殺気を消して近づいてくるとか出来ないのかよ?」


シギル村の入り口に到着してしばらくすると視線の先に武器を携えた集団がこちらに向かって歩いている。

その様子からは鬼気迫るものが有り、ノエルは緊張した面持ちで確認するようにつぶやくとジークは面倒だと言いたいのか乱暴に頭をかいた。


「22人か? 正面を厚くして、他から逃げる場所をつぶそうって作戦だね。統制はそれなりに執れてるかな? ただの野盗集団とはやっぱり考えにくいね」


「あの、カインさん、どうしてそんなに落ち着いているんですか? 早くどうにかしないと」


近づいてくる集団の人数を見たカインは最初に確認した40人全員が正面から来なかった事に改めて集団の質を確認する。

フィアナは近づいてくる集団にどうして良いのかわからないため、カインにどうしたら良いかと聞く。


「そうだね……殺気放ってるそこの人達、野盗のふりをして誰か殺そうとするなら、もう少しいろいろと考えた方が良いよ。こっちもそれなりに対策させて貰ってるから、撤退してくれると助かるんだけど」


「って、おい。いきなり、言うのかよ!? 奇襲でこっちから仕掛けた方が良いだろ?」


「それをするとあっちが被害者を主張するからね。先に仕掛けてきたと言う事実は必要だよ」


カインは1度、頷いた後、集団に向かい大声で撤退をするように頼む。

彼の突然の行動にジークは驚きの声を上げるが、そこまで迫ってきている集団は下がる事はない。

それどころか自分達の目的を知っている人間がいる事に動揺する事無く、進む足が止まる事はない。


「止まらないですね」


「それはそうだよ。領主であるシュミット様の命を取る覚悟で来ているんだから、失敗したら反逆者の烙印を押されて処分される可能性が高い。この話を聞いて断っていたら口封じで殺されていただろうからね」


「……この話を聞かされた時点であいつらには選択肢がなかったって事か?」


カインは彼らに後がない事を理解しており、少しだけ寂しそうに笑う。

ジークは彼らに自分の野望を押し付けたギムレットに怒りが湧いてきたようで強く唇をかんだ。


「そう言う事だね。それじゃあ、やろうか? ジーク、捕えきれなかった奴の事は頼むよ」


「ああ」


「ジークさん、カインさん、わたし達は何をしたら良いんですか!?」


カインはジークの肩を叩くと1歩前に歩き、魔法の詠唱を開始する。

ジークは冷気の魔導銃だけでは足りないと思ったようで両手に魔導銃を構えた。

ジークとカインの様子に集団達は人数差で有利と感じているものの、抵抗されてはシュミットの逃げる時間を作ってしまうと考えたようで剣を抜き、シギル村に向かって駆け出す。

土煙を上げて近づいてくる集団にノエルはカインからの指示もなかったため、驚きの声をあげるがカインは魔法の詠唱中であり、返事はない。


「……とりあえず、ノエルは魔力をためててくれ。もしかしたら近距離で戦わないといけないから、フィアナは牽制のために魔法を撃ってくれ。なるべく人に当たらないように」


「は、はい」


「わかりました」


カインからの指示がないため、ジークは無難なところの指示を出す。

2人は大きく頷くとジークの指示に従うように魔法の準備を始める。

その時、カインの魔法が発動し、地面から植物の根が飛び出して集団の足をからめとると同時に植物の壁が現れた。

突然の事にも集団は統制が執れており、慌てる事無く、剣で植物の根を薙ぎ払い、シギル村に向かって走る。


「ジーク」


「わかってる。それより、あれで全部、捕えられるのか? 魔導銃じゃ長い間、動きを止める事はできないぞ」


「大丈夫。少し時間を稼げばいいだけだからね。フィアナ、これを預かってて」


カインは次の魔法に移る前にジークの名前を呼ぶ。

ジークは植物の根を切り伏せ、先頭に出てきた人間を冷気の魔導銃で撃ち抜き、動きを止めるが長期戦には向かない事を誰よりも理解しているため、カインにどうするかと聞く。

カインは気負いする必要などないと笑うとフィアナに先日、熱気から彼らを守った魔導機器を渡すと再び、詠唱に移り、次々と植物の根で壁を作り出す。


「こ、これが必要になるんですか?」


「そうみたいだな。頼むぞ。フィアナ」


「わ、わかりました」


フィアナは魔力を魔導機器に注ぎ込み。

ジーク達のいる場所には青い光の柱が上がった。

その瞬間、集団の中には魔術師が同行していたようで鬱陶しい植物の根と魔導銃で凍らされた仲間を助けるために火の魔法を放ち始める。


植物の根は燃え、温度が上がった事で氷漬けになった者達も再び、歩を進め始める。

すでにこの戦闘は村の中にもばれていると思ったのか、魔術師はジーク達に向けて火の魔法を放つ。

襲い掛かる火球はフィアナが発動させた魔導機器の光の柱により、無力化され、火球がジーク達を襲う事はない。

しかし、火の魔法でカインの作り出した植物の壁は次々と燃やされて行き、彼らを止める手段はなくなってしまう。


「カイン、どうするんだよ。このままじゃ、不味いぞ」


「そうだね。少し困ったね」


「遊んでないでどうにかしろ!!」


ジークは時間を少しでも稼げるようにと冷気の魔導銃の出力を上げるが、さほど時間を稼げるとは思っておらず、カインに次の策を出すように言う。

カインは口では困ったと言っているがその表情には笑顔を浮かべており、彼の様子から他にも何か企みがある事がわかる。

ジークはいい加減にしろと叫んだ時、襲撃者を突風が襲い、燃え上がっていた植物の根を吹き飛ばした。


「全軍進め!! 1人も逃がすな!! この者達には話を聞く必要がある。殺さずに捕らえるんだ!!」


「え、援軍でしょうか?」


「そう言う事」


突然の風は砂と植物を燃やしたススを舞い上がらせて襲撃者達の視界を奪う。

その時、大音量の声が響き、新たな指示が出るといつの間にか鎧姿の軍勢が現れて襲撃者達の側面を突く。

ノエルは何が起きたかわからずに呆然をつぶやくとカインは楽しそうに笑う。


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