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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第613話

「ジークとノエル、後はフィアナだったね?」


「セレーネさん? どうかしましたか?」


シュミット達がウィンの屋敷に入ってしばらくした時、ジーク達を見つけたセレーネが近づいてくる。

協力しては貰ったが、彼女が自分は泥棒と言っていた事もあり、ノエルとフィアナは少し警戒しているようでその表情はぎこちない。


「なんか嫌われちゃったみたいね」


「まぁ、泥棒って宣言すれば仕方ないんじゃないですか?」


「そうかもね。だけど、ソーマから聞いたけどノエルは一応、一般人らしいけど、フィアナは冒険者なんでしょ。同業者じゃない?」


2人の様子に小さくため息を吐くセレーネ。

彼女の様子にジークは苦笑いを浮かべるとフィアナには理解して欲しいと笑った。


「そ、そうなんですけど、私はまだ盗賊の方に知り合いがいないので」


「それもそうね。ソーマの事だから、なるべく真っ当な仕事を教えてそうだからね」


「冒険者なら、盗賊みたいな器用な人も必要ですし、長く続けて行くなら慣れておいた方が良いぞ」


フィアナはセレーネの気分を害してしまったと思ったのか慌てて首を横に振った。

彼女の反応にセレーネは楽しそうに笑っており、ジークはセレーネがからミレットと同種の匂いを感じ取ったようで自分に被害が来ないように1歩下がり、フィアナにアドバイスをする。


「ジークは理解しているみたいね」


「これでも片田舎の薬屋店主だからな。客商売として理解している」


「まぁ、あんな罠を仕掛けるくらいだからね。薬屋より、泥棒(こっち側)にこないかい? 才能あるよ」


逃げ笑いを浮かべるジークの姿にセレーネは感心したように頷くとジークの肩に手を回す。


「遠慮しますよ。俺は薬屋ですから」


「それは残念」


「それで何かあったんですか?」


肩に回された手を外し、セレーネからのスカウトを拒否するジーク。

セレーネも本気ではなかったようでわざとらしく肩を落とした。

彼女の様子にジークは苦笑いを浮かべつつも、セレーネが自分達に声をかけてきた理由を聞く。


「特にこれと言った理由はないんだけどね。せっかくだから、縁を結んで置こうと思ったんだよ。これからもよろしくね。ジーク」


「えーと、よろしくお願いします?」


「別にジークをノエルから取ろうとしてるってわけじゃないよ」


セレーネは特に何もないと笑うが、その笑顔の先には何か他意があると感じ取ったようで1歩引いてしまう。

ノエルも何か感じ取ったようでジークの腕に抱き付き、2人の様子にセレーネはノエルの肩を叩き安心しろと笑った。


「冒険者って長い間、やっていける仕事じゃないからね。せっかく、強力なコネを持ってる人間と知り合ったんだから、それを使わせて貰おうと思っただけだよ」


「カインならソーマからも紹介して貰えただろ。と言うか、思いっきり、面識ができたんだ。俺達に言う必要はないですよ。フォルムなら人手不足なんでいつでも住民を募集してますから」


セレーネはジークとレギアスの関係に気が付いているのか視線を鋭くするが、ジークは彼女の言うコネをカインの事だと思ったととぼけたふりをする。

ジークの反応はセレーネには予想の範疇だったようで特に気分を害する事無く、笑うと考えるふりをし、ジークはここで何かを言うべきではないと思っているようで表情を変える事はない。


「そうだね。老後にフォルムみたいな場所でのんびりと生活するのも悪くないね」


「……結構、忙しいけどな」


「休むヒマってありませんよね」


セレーネは老後はゆっくりとしたいとは思っているようでくすりと笑う。

ジークとノエルはフォルムでせわしなく働いている事もあり、ゆっくりなど過ごせないと眉間にしわを寄せた。


「あれだね。カインは人使いが荒そうだね」


「荒らそうと言うか、荒いんだよ。なんでもこっちに押し付ければ良いと思いやがって」


「それはジークさんだから、任せてるんじゃないでしょうか? ジークさん、大丈夫ですか!?」


2人の反応にセレーネは小さくため息を吐くとジークは恨みがましくつぶやく。

ジークのつぶやきにフィアナは苦笑いを浮かべた時、まるでタイミングを見計らっていたかのように小鳥がジークの額へと一直線に向かってきて、鋭いくちばしが彼の額に突き刺さった。

ジークは小鳥の攻撃に地面を転がり、フィアナは突然の事に驚きの声を上げる。


「まったく、俺を悪者扱いしないで欲しいね」


「……カイン、お前はどこから出てきやがる」


「どこからも何もシュミット様達は狙われてるんだから、外の様子をうかがうのは必要だろ。人間が動き回るより、こっちの姿の方が目立たないしね」


小鳥はいつものようにカインの使い魔であり、ノエルの肩に乗るとジークを見下ろしてため息を吐いた。

ジークはかなり痛むようで額をさすりながら立ち上がるとカインの使い魔を睨み付けるがカインはシュミット達の話し合いだけではなく、しっかりと周囲への警戒を怠っていない。


「あの、カインさん、使い魔を村の中に戻すって事は何かあったんですか?」


「そうだね。野盗風の男達がずいぶんと立派な武器を手に40人くらいで徒党を組んでこっちに向かってきてるね。軍師風の人間も混じっているみたいだね」


「軍師風? どこかの私兵を野盗にしたような感じだね。いろいろとやってくるかもね」


カインの使い魔はシギル村に向かい、シュミットを狙った刺客が向かってきている事を告げた。

その言葉にセレーネは表情を緩ませるが、ノエルとフィアナの顔には緊張の色が浮かぶ。


「軍師風の人間がいるなら、森からも仕掛けてくるか? 面倒だな。こっちは新米冒険者も多いのに」


「そうだね。シュミット様を逃がすのが1番、あいつらにとっては都合が悪いから逃げ道を塞いでくるかも知れないね。ただ……」


「村の入り口以外はジークの作った罠が結構張られているから、入ってくるのは大変かもね」


ジークはカインのように指揮が執れる人間がいると聞き、組織的に戦うのは難しいと思ったようで頭をかく。

しかし、先行でシギルにきたギムレットに雇われた冒険者達はこっちについているため、襲撃者達には村の周囲の罠の事は知られてはいない。

セレーネは自分が村を襲うと考えた時にジークの作った罠を厄介だと思ったようで苦笑いを浮かべた。


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