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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第600話

「……まずは急な呼びかけに対応してくれた事、そして、私が不在にしている間もワームの統治が滞りなく進んでいる事に礼を言う」


シュミットはカイン、セス、カルディナを引きつれてワームに到着するとワームの有力者達へと招集をかけた。

ワームはレギアスとラースを中心に有力者達の合議制で動いている事もあり、全ての有力者達の腹の中を確認する意味合いも込めてだと言うカインの進言を受け入れてである。

全員が集まれるように集合までの時間を確保し、その間にソーマに依頼した街中の噂を確認する時間をも取っている。

シュミットからの招集に慌てた有力者達をいるようだが指定された時間には有力者達は集まり、会議室の中にはワームの有力者達がそろった。

シュミットは有力者達に挨拶をすると彼らは仰々しく頭を下げるがその腹の内を見せる事はない。


「シュミット様、失礼ですが関係ない者も同席しているようですが」


「王都でエルト様に面会を求めていたカイン=クロークとセス=コーラッドに会ったのでな。2人は優秀な魔術師で転移魔法と言う特殊な魔法を修めているからワームに同行して貰った。カルディナ=オズフィムはエルト様の指示でこのような席に同伴させる事で彼女の成長に役立てて欲しいとの事だ。カイン=クロークとセス=コーラッドに同席して貰うのは中立的な立場からも物を見て貰おうと思っただけだ」


カインとセスが同席しているのは都合が悪いのか1人の男性がシュミットに声をかけた。

男性は白髪交じりであり、かなり年配に見えるがその視線は鋭く平静を務めているがその顔からは野心がはみ出している。

その男性の顔はジークやレギアスと重なる個所も見え、2人の血縁関係が予想できた。


「カイン」


「あれがギムレット=エルア様だね。野心を隠しきれないのは三下の証拠だね」


「言葉を慎みなさい」


カインとセスはその男性の様子から彼がジークの祖父であり、今回の首謀者の1人である『ギムレット=エルア』だと判断したようで視線を変え事無く、集まっている有力者達へと視線を移す。

ギムレットの言葉に同調するように頷く者やギムレットの意見に反発する者、傍観して美味しい所だけを奪う気の者、集まった有力者達はやはり一枚岩ではない。

その様子にカインはあざ笑うかのようにつぶやくとセスはおかしな事を言うなと肘で彼を突く。


「わかりました」


「それでは始めよう。今回、私が戻ってくる事になったのは私宛に密告書が届いた。今のワームの有力者達にはワームの統治を任せるに足らないと言う。そして、力の不足している者をこの合議から外すように進言されている」


ギムレットはシュミットの言葉に一先ず、頷くとシュミットは隠す事無く本題へと移り、自分に届けられた密告書を自分の前のテーブルに置く。

有力者達は表情に出さないようにしているが、密告書と言う物を前に会議室の空気は張りつめ出す。


「その密告書に名前が書かれているのは誰ですか?」


「セス=コーラッド、進行を頼めるか?」


「わかりました。今回、この密告書に名前が書かれていた者はレギアス=エルア様、ラース=オズフィム様……」


ギムレット側だと見て取れる1人がシュミットに尋ねる。

シュミットはセスに進行役を命令し、彼女は頷くと密告書に書かれていた名前を挙げて行く。

その名前の始めにはレギアスとラースの名前が書かれ、2人以外にも多くの名前が書かれている。

名前を呼ばれた者は小さく反応するが、レギアスとラースはその程度で動揺するような人間ではない。

それどころかカインとセスが同席している事に何か感じているようでこの後の同行を予測しているのか目を閉じている。


「力が不足していると言われる理由はワームの治安低下、ワーム近隣の村々の水不足に対する対応の遅れ」


「この件に関しては事実か?」


「……事実です」


シュミットは視線を鋭くして有力者達に問う。

その問いには有力者達はすぐには答えられないのか会議室は沈黙が訪れるがその沈黙を破るようにレギアスが密告書の内容は正しいと頷いた。


「そうか……カイン=クローク、これについてどう思う? 小さいとは言え、領地を持つものの判断として答えてくれ」


「そうですね。今回は合議制の悪い部分が出ているようです。合議制になれば意見の対立で急を要する事にも対応できない事もありますから」


「確かにそうだな……私がいない時に緊急の時はその者の判断に一任するとした方が良いか?」


シュミットはカインに意見を求め、カインは合議制に問題があると答える。

その答えにシュミットは少し考えると緊急時に自分の領主としての権限の譲渡が必要かと言う。

彼の言葉に有力者達はざわめき始める。

今まで合議のトップにいたレギアスとラースは密告書により、資格を奪われたと判断しているようで密告書に名前の無かった者は自分達にその権利が来ると思っているようにも見えた。


「レギアス、この件はお前に任せる」


「はい。レギアス=エルア。謹んでお受けします」


「シュミット様、何をおっしゃっているのですか?」


しかし、シュミットは密告書に名前があり、1番に断罪されるべきだと言われたレギアスの名前を呼ぶ。

レギアスは深々と頭を下げるが、ギムレットの手が回っている者はレギアスになど権利を渡せないと主張するように叫んだ。


「黙れ。私がワームに入ってから何もしていないと思うか? レギアスは合議で決まらないシギル村の件に資材を投げ打って冒険者を雇い、この件を無事に解決している。また、すでに必要な支援物資のリストの作成を終え、私が承認するだけのものになっている。ここに居る者達に問う。合議でレギアスは何を主張していた? このような事をする者が事件解決のために合議を混乱させるような事はしないと思うが違うか?」


「しかし、その噂も自分の保身のためにレギアス殿が流したと言う事も」


ワームに入ったシュミットはカインが事前に流していた噂を精査した事や、事前にカインとセスがリストアップしていた資料をレギアスの名前に変えて彼の功績として発表する。

噂はこの場に集まっていた有力者達にもわずかながらだが届いており、数名の有力者達からはレギアスを推す声も上がり始め、ギムレットに近い者達は忌々しそうに表情をしかめ、噂に信憑性などないと言いだす。


「カイン=クローク」


「シギル村の件ですが、レギアス様とラース様の指示でシギル村の出身者の冒険者の同行の元で、フォルム領主の私の実妹であり、冒険者でもあるフィーナ=クロークが解決しました。疑われると言うのなら、この場に連れてきましょうか?」


「今回の合議の遅れについては詳しく聞かせて貰う。状況次第では合議への出席する人間も考え直さなければいけないからな」


シュミットは自分が何も知らないかと思っている者達を黙らせるためにカインに説明するように命令する。

カインは1度、頭を下げるとシギル村の件をフィーナの功績にして発表するとシュミットは一先ずはこの場は収めると言う。

それを否定できるほどの情報はこの場に集まった有力者達は持っておらず、忌々しそうに口を閉じた。


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