第60話
「知らん。直したければ自分で直せ」
「へ? ちょっと待ってください!? 直して欲しくてここまで来たんですよ」
アーカスは魔導銃に1度、視線を向けるが興味がないようでジークに自分で直すように言い、思いもしなかった回答にジークは驚きの声をあげた。
「だいたい、出力を気にせずに使ったお前の問題だ。その魔導銃の銃身では最大の威力では持たないと言っていたはずだ。それを破ったのはお前であって私ではない。元々、魔導銃に不備があったのなら、まだしも、小僧が壊した物を私が直す理由はない」
「そ、それはそうかも知れないですけど、そうでもしなきゃ、こっちが危なかったんです」
アーカスは自分が修理をする義理はないと切り捨てるが、ジークは納得がいかないため、アーカスの前に移動すると、もう1度、頭を下げる。
「危なかった? どうせ、うるさい小娘が原因だろう?」
「……まったく、その通りなので反論ができません」
アーカスはジークが魔導銃に無茶をさせるとは思っていないようで、原因をフィーナだと言い切り、ジークは自分とフィーナの行動が全て予想させているため、アーカスから視線を逸らす。
「あ、あの。アーカスさん、修理をお願いできないでしょうか? わたしのせいでジークさんの魔導銃が壊れてしまったんです。原因はジークさんでもフィーナさんでもなく、わたしです」
「……今更だが、うるさい小娘とは正反対だな」
「……その意見には同意です」
ノエルは遺跡の探索を無理にお願いした自分に責任があると言いだし、その姿にジークとアーカスは彼女とフィーナを比べたようでフィーナの自分勝手さが際立ったようであり、眉間にしわを寄せた。
「お、お願いします」
「修理は無理だ。直して欲しいなら、部品をかき集めてこい。銃身が壊れているのだからな。それに代わる部品か材料がないなら、修理は無理だ。それくらい、気が付け」
「そ、そうですね」
アーカスはノエルの様子に1度、ため息を吐くと修理ができない理由を説明し、ジークは納得ができたようで大きく肩を落とす。
「部品か材料か? アーカスさん、この近辺で採れる場所に心当たりはないですか? 魔導銃の銃身になるって事は鉱石ですよね」
「当然、鉱石だな。それを魔導機器で使える形に精製すれば直ぐに修理はできるな。場所は自分で調べろ。この辺の地理は頭に入っているだろ」
「入ってはいますけど、基本的に鉱石系は得意分野じゃないんで、どれが良質のものかもわからないんですよね」
アーカスは部品まではいかなくても材料になる鉱石を持ってくるように言うが、ジークは薬学を専攻しているためか、鉱石を探すのは苦手だと頭をかいた。
「それでも、探さないといけないんですよね。行きましょう。ジークさん」
「……ノエル、落ち着いてくれ」
ノエルはジークの苦手な部分は自分が補うと言いたいのか両手の拳を握り締めると、ジークはノエルのやる気がから回っているところしか思い浮かばないようで大きく肩を落とす。
「話し合いは戻ってからにしろ。私は忙しいんだ」
「は、はい。それじゃあ、何か使えそうな鉱石が手に入ったら、持ってきます」
「アーカスさん、今日はありがとうございました」
アーカスは2人を追い払うように手を振るとジークとノエルはこれ以上、ここにいてアーカスの機嫌を損ねてもいけないと思ったようで頭を下げた後、アーカスの家を出て行く。