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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第596話

「と言う事なんだが同席してくれないか? カイン=クローク、セス=コーラッド」


「わかりました。状況は誰よりも私が理解していますからね。セス、先日、まとめたシギルへの救援物資の資料も持って行くよ」


「すでにまとめてあります」


シュミットはワームに戻る前にカインとセスにも同行して貰った方が良いと判断したようでフォルムを訪れた。

書斎で仕事をしていたカインとセスにシュミットがエルトからの指示を伝えるとカインは頷き、セスとともに準備を始める。


「展開が速いな」


「そうですね」


「問題はこっちだな。予想していたより、打たれ弱いのか?」


すぐに話が決まって行く様子にジークとノエルは苦笑いを浮かべると2人は同行しているカルディナに視線を移す。

彼女は突然の大役と嫌いな父親のラースがいるワームに行きたくないようでクーを抱きしめてぶつぶつと言っており、彼女の様子から過度のストレスがかかっている事がわかる。


「……大丈夫なのか?」


「どうかな。ただ、とりあえずはこの大役が終わった時点でカルディナ様が転移魔法を使える事はエルト王子にも知られるわけだし、せっかく、秘密にしてたのに面倒な事にならなければ良いけど」


準備に取り掛かったカインとセスを横目にシュミットにもカルディナの様子がただ事じゃないと感じ取れたようで眉間にしわを寄せた。

ジークは頭をかきながらも、これからの事を考えるとため息しか出てこないようで困ったように笑う。


「ジーク、ノエル、悪いんだけど先行してワームに行って、ソーマにこれを渡してくれないか?」


「ソーマに? 何だ、これ?」


「ノエルがやってくれた事が使えそうだからね。先に手を打たないとね」


その時、カインはジークにメモを渡す。

意味がわからずに首を捻るジークだが、カインは口元を緩ませており、ジークとノエルは不安しか感じないようで苦笑いを浮かべた。


「……お前は何を企んでいるんだ」


「何もレギアス様の父親がどこまでシギルの事を知っているかわからないけどね。悠長に王都のシュミット様にまで報告をしているんだ。レギアス様の邪魔くらいしていてもおかしくないのはジークにもわかるだろ。それなら、こっちは予算が足りない中、レギアス様が実費を切って冒険者を雇ってシギル村の問題を解決したって広まらせるんだ。兵を動かすには時間がかかるけど冒険者ならすぐに動かせると判断したとね。相手はレギアス様の評判を落とすためにある事、ない事を言って回っているんだ。こっちがやっても問題ないだろ」


「確かに、ワームには今、冒険者が集まっているからな。ただ、言っておくけど、俺は冒険者じゃない」


ジークの不安を感じ取ったカインはため息を吐きながら、簡単な説明をする。

納得ができたようで頷くジークだが、自分が冒険者扱いされた事が不満のようでカインを睨み付けた。


「……そこは今は気にしない。ほら、時間がないんだから、急ぐ。後手後手に回るわけにも行かないだろ」


「それなら、私も先にワームに入った方が良いのではないか?」


「いえ、違います。シュミット様がワームに入った時にはわずかでもレギアス様がシギル村の件を解決したと言う噂がある事が重要なのです。同時に行っては噂などないと言われかねないですから、それにおかしな事が起きる前にシギル村にも人手を送らないといけませんからね。村長さんは元冒険者ですから、腹芸もある程度はできると思いますが力づくで来られると困りますから」


ジークの様子にカインは小さく肩を落とす。

シュミットはカインとセスの準備もあるため、自分もワームに先に行った方が良いと判断して立ち上がるがカインは彼を止める。

カインにはカインの考えがあるようでワームに居るソーマ達にギムレットが力づくで何かをしでかす前に対処する必要性がある事を告げた。


「わかった。とりあえずは行ってくる。ノエル」


「はい」


「クー、クー」


ジークとノエルはカインの様子から重要な事を任され多と感じ取ったようで転移魔法でワームに向かおうとする。

クーはその様子に自分も連れて行って欲しいと言いたいのか声を上げるが、カルディナはしっかりとクーを抱きしめており、クーの声は空しく響くだけでジークとノエルはワームに転移してしまう。


「クー」


「カルディナ様、そろそろ、クーを放していただけないと困ります。カルディナ様にも話し合いに参加していただかないといけませんから」


「……しかし、さらっと大ごとを押し付けられてどうして良いものかわからないんです」


クーは2人が居なくなってしまった事もあり、助けを求めるような視線をカインに向けた。

カインは苦笑いを浮かべて彼女に正気に戻るように言う。

カルディナは思ってもいなかった大役にどうして良いのかわからないよで泣きそうな表情で不安を吐露する。


「現状で言えば、シュミット様とエルト様の伝令のような物でしょうし、その場で意見を求められるのはレギアス様でしょう。今回は私もセスも同席しますからそこまで不安になる事はありません。初めてと言う事で場になれると考えてください」


「そうだな。あくまでワームで仕事と言う事だが、調べ物でわからない事があれば王都でもフォルムでも転移魔法で移動して構わない。エルト様も転移魔法の利便性を考えての指名だろうからな」


カインは彼女の不安を払しょくするように優しい声で言う。

シュミットは以前に彼女の暴走に巻き込まれている事もあり、彼女自身が有能とは思っていないようで転移魔法のだけを重視している。


「大丈夫です。ルッケルとワームの連絡係でジークもノエルもラース様の屋敷に顔を出しますから、その時にでもクーを連れて行かせますから安心して職務を全うしてください」


「クー、クー!?」


「本当ですか!!」


カインはカルディナをやる気にさせるために、クーをエサに使う。

クーはその言葉を理解したようで拒絶したいのか声を上げるが、カルディナのやる気は一気に上昇して行く。


「……カイン、クーちゃんを売りましたね」


「カルディナ様がやる気になるならこれくらいしないとね。それにレギアス様の力が弱くなるのは何かと都合が悪いからね。それではギムレット様が何を仕掛けてくるかわかりませんが、ある程度の対策は立ておきましょうか?」


セスはカインへと冷たい視線を向けるが、カインは必要な一手だと笑う。

彼の頭の中ではすでにある種の戦いの場面が出来上がっているようであり、その表情には見た者に寒気を覚えさせるような冷たさがある。


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