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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
595/953

第595話

「何か知っていそうだな」


「知っていそうと言うか、昨日、解決してきたよ」


「解決? 冒険者じゃないって言う割にはやってる事は変わらないよね」


ジークとノエルの様子にシュミットは驚いたような表情をする。

ジークはため息を吐くと解決した事を告げた。

エルトは苦笑いを浮かべて言うとジークの表情は不機嫌そうになって行くが説明しない事には何も変わらない事はわかっているため、フィアナとの出会いから、シギル村の水不足を解決してきた流れを順序立てて説明する。


「火竜の瞳を砕いて火の精霊を暴走させる? まったく手の込んだ事をしてくれるね」


「まったくだ。たまたま、解決できるだけの道具がそろっていたから良いものの、何もできないで撤退していたらどうなっていた事か」


「……不味いですわね」


説明を聞いたエルトは大きく肩を落とす。

ジークは偶然とは言え、解決できた事に小さくため息を吐くとカルディナは何か思うところがあったようで表情をしかめる。


「カルディナ様、どうかしたんですか?」


「レギアス様を失脚させるつもりなら、わざわざ、こんな報告をしてきて許可が出た後に自分達で事件を解決するつもりだったのでしょう? 自作自演とは言え、それほどまでに暴走した火の精霊をどうにかできるほどの人材がいると言う事でしょう」


「確かにそうだな」


彼女の様子にノエルは心配そうに聞く。

カルディナはギムレットの報告はレギアスを追い落とすための布石であると言う。

シュミットは大ごとだと思ったようで眉間にはくっきりとしたしわが寄っている。


「そうか? 道具さえあれば簡単にできるだろ。俺達でもできたんだし、あ、でも、カインが居なければ無理だったか?」


「そうですね。カインさんがいないとどうして良いか判断できなかったでしょうし」


「実際、ただ暑かっただけだしな」


しかし、解決した本人達は事の重大さを理解しておらず、首を捻っている。

その様子からは自分達が大きな事を成し遂げたと言う実感はみじんもない。


「……それをできる人間がハイムに何人いると思っている?」


「シュミット、落ち着きなよ。これはジーク達の良いところだからね。ただ、カルディナの言う通り、ギムレットの元にそれだけ優秀な人材がそろっているなら、こちらも次の動きをしないといけないね。レギアスが簡単に追い落とされるとは思えないけど、後手後手に回ってしまうと面倒な事になる。それこそ、ジーク達の手柄を自分達の手柄だと騒ぎ立てたりして、民意を動かしたりね」


「あー、確かにそう言う事もやりそうだな」


ジークとノエルの様子に大きく肩を落とすシュミット。

その様子に彼が2人に対して小言を言いだすと思ったようでエルトは彼を止めるとこの先に考えられるギムレットの作戦を推測する。

ワームにはすでにギムレットの息のかかった冒険者達で溢れえっている事もあり、ジークはポリポリと首筋をかいた。


「そうなる前に次の手を打たなければなりませんね」


「そうだね……シュミットはジークとともにワームに行って、この件を解決してきてくれ。カルディナ」


「は、はい」


シュミットは厄介な仕事が増えたと言いたいようであり、眉間にしわを寄せており、エルトは解決のためにシュミットとカルディナの名前を呼ぶ。

カルディナはエルトから何を言われるかわからないため、身体をこわばらせて返事をする。


「魔法関係の事があれば、レギアスとラースは手回らない事もあると思う。シュミットとともにワームに行き、2人を補佐するように」


「は、はい」


「後はジークとノエルは2人をワームに送り届けた後に、カインかセスに頼んでカルディナに転移魔法を覚えさせて欲しい。シュミットがワームに行って連絡が取れないのは困る。シュミットは今の私には欠かせない人間だからね」


エルトはカルディナの能力を高く買っており、彼女をシュミットの補佐につける。

カルディナは逆らう事が出来ずに頷くとエルトは更なる指示を出し始めるが、ワームの件が落ち着くまでシュミットがいないのはきついようでカルディナを連絡係にすると言う。


「カルディナ様に転移魔法ね……カインとセスさんに言っても良いけど、王城を離れるなよ。シュミット様が居なくなるって事は今以上にやりたい放題だろ?」


「あのね。ジーク、私だって状況は理解しているよ。シュミットが王都を空けるなら、今、シュミットが担っている問題を解決するのに動くのは私の仕事になるんだ。シュミットが戻るまでそんな事をしているヒマはないよ」


「本当かよ?」


お目付け役であるシュミットが不在になった時のエルトの行動に不安しか感じられないジークはエルトへと疑いの視線を向けた。

エルトは疑われる事に対して心外だと言いたいようで大きく肩を落とすが、今までの行動があるため、ジークの疑いの視線が和らぐことはない。


「それじゃあ、私とシュミットは王城に戻るから、カルディナの準備ができたら王城に顔を出すように」


「は、はい。わかりました」


「後はカインにもこの件を伝えて、いろいろな策を練って貰いたいね。情報操作とか得意そうだし」


エルトはジークの視線から逃げるように立ち上がるとカルディナは大きく頷く。

彼女の返事を聞いてから、エルトはカインにも仕事を押し付けようと思ったようであり、楽しそうに笑う。


「……それに関して言えば、あいつほど似合う人間はいないな」


「まさに適材適所ってところだね」


「あの、もう少し言葉を選びませんか?」


必要な手段はいくつでも打っておきたいエルトはその一端をカインにも担って貰うと言う。

エルトの言う通り、カインほど適切な人物は考え付かずにジークは大きく肩を落とし、ノエルは困ったように笑った。


「それじゃあ、戻ろうか? あまり時間もかけてられないだろうし、何より、王都からワームに行くまでには時間がかかるのにすぐにシュミットがワームに戻ればギムレットの驚く顔を見られるだろうからね。次の悪巧みを考える時間をつぶすのは重要だからね」


「そうだな。カルディナ様、準備しにオズフィム家に戻るか?」


エルトは速く行動に移した方が良いと思っているようで席を立ち、ジークはカルディナに声をかける。


「わかりました。エルト様、シュミット様、失礼します」


「ああ、すまないがよろしく頼む」


カルディナは自分の不運を呪っているのか恨めしそうな表情でシュミットに頭を下げ、シュミットは彼女には悪いと思ったようだが彼女の協力は必要だと考えており、頭を下げた。


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