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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第594話

「結局、リュミナ様ってここに住んでるのか?」


「基本的には王城にいるね。結構、距離もあるし、アンリの話し相手にもなって貰ってるからね」


「と言うか、主がいないのに勝手に入って良いのか?」


ジーク達はメルトハイム家の屋敷に連れて行かれる。

屋敷はしっかりと管理されているが、この屋敷の主になったリュミナは王城にいるようであり、主が不在の屋敷に入るのは抵抗があるジーク達だがエルトは気にする事無く、屋敷の中に入って行く。

エルトはリュミナの婚約者であり、彼の庇護の下でリュミナはメルトハイム家を継いだため、使用人達はエルトを先頭に入ってきたジーク達を快く招き入れる。

応接室に通されるとエルトは使用人達に自分がここに来た事に対する口止めを行い、使用人達は逆らう事が出来ないのか深々と頭を下げた。


「それで、俺達をこんなところまで連れてきて何の用だよ?」


「少し付き合ってくれても良いじゃないか?」


「付き合うのは良いけど、早くしてくれ。俺達だってヒマじゃないんだから」


カルディナは以前にエルトをバカにした事を本人に聞かれた事で彼に弱みを握られていると思っているため、借りてきた猫のように大人しくなっている。

ジークは彼女の様子にため息を吐くと少しだけ可哀そうになってきたようで早めに話を切り上げようとエルトに用件を聞く。

エルトは自分がジークに蔑ろにされていると感じたようで不満だと言いたげに唇を尖らせ、彼の態度にジークは頭が痛くなってきたようで頭を抱える。


「とりあえずは変わった事はないかと思ってさ。ジーク達はイオリア家のパーティーに出たり、いろいろと大変そうだったみたいだし」


「……好きで出たわけじゃない。ガートランド商会がイオリア家と繋がりがあるって言うから、仕方なくだ」


「ガートランド商会のステムだったかな? ライオとシュミットに睨まれて早々に退散する結果になってると聞いたけど、そう考えると行った意味はあまりなかったのかな?」


ジーク達がイオリア家のパーティーに出席した事はエルトの耳にもしっかりと届いており、いくつか話が聞きたいようである。

その質問にジークはあまり思い出したくないようで頭をかいた。

彼の表情にエルトはくすくすと笑うとジークにとってはあまり意味がない物だと思ったようで首を捻る。


「そうだな。レインの父親と会えた事くらいで後は素性のわからない人間に声をかけてくるような人間はいなかったからな」


「そう。でも、ノエルやフィーナのドレス姿とか見れたんだから良いんじゃないかな? 2人とも良く似合ってただろうし」


「そ、そんな事はないです。皆さん、凄くきれいなドレスでわたしなんてとても」


ジークの唯一の収穫はレインの父親であるクラウドと出会えた事だと言い、エルトはジークをからかうように笑った。

その言葉にノエルは顔を真っ赤にして首を横に振るとエルトは何かあるのかポリポリと首をかく。


「どうかしましたか?」


「ノエルはもう少し、人の厚意を素直に受け取った方が良いね。ノエルやフィーナのドレスを用意するにもオズフィム家でそれなりの金額を出しているんだ。ティミルやオズフィム家の使用人達が2人に似合う物をしっかりと選んでいるはずだ。ノエルがそれを否定するって事は彼女の厚意や働きに文句を言っているのと変わらない」


「そ、そんなつもりはないです」


エルトはノエルの自信のない態度には問題があると思っているようで彼女にかかわってくれた人達の厚意に甘えるように言う。

ノエルは考えもしなかった言葉にどうして良いのかわからないようで身を縮ませてしまう。


「勘違いしない。怒っているわけじゃないから、厚意に素直に甘えると言うのも覚えた方が世の中、上手く行く場合もあるって事だよ。人はどれだけ意地を張って1人で頑張ったって、結局、誰かが付いてくるんだ。それに1人でできる事なんて限られてるしね」


「は、はい。わかりました」


「……エルト王子ほど甘えるのもどうかと思うけどな」


自分達のやろうとしている事は1人でいくら頑張ってもかなえる事はできない事だと笑う。

ノエルは彼の言いたい事を理解したようで大きく頷くが、シュミットに色々と押し付けて楽をしようとしているエルトはまた別の問題があり、ジークは大きく肩を落とした。


「……ジークの言う通りです」


「シュ、シュミット? どうしてここに? 口止めをしたはずなのに」


「この屋敷は先日まで、父上が管理していたのです。エルト様の来訪は伝えられませんでしたが、私と父上の元にはジークとノエルの来訪の連絡は来ています」


その時、使用人達がドアを開けて人数分のお茶を運んでくるが、その後ろから眉間にしわを寄せたシュミットが現れる。

予想していなかった人物の登場に慌てるエルトは使用人へと視線を向けるが、使用人達はエルトに怯む事無く落ち着いた様子でお茶を並べて行く。

使用人達はラングの教育が行き届いているようであり、エルトの口止めされた以外の言い分を使って報告している。

その事実にエルトはやられたと言いたげに眉間にしわを寄せるとシュミットはお茶を出し終えた使用人達を下げた。


「……シュミット様も食えなくなってきたな」


「こうでもしないと公務がまったく進まないのでな。それに私もジーク達に聞きたい事があって、ちょうど良いと思っていたんだ」


「聞きたい事?」


エルトが言い負かされた様子に苦笑いを浮かべるジーク。

シュミットは小さく肩を落とすとジークへと視線を向けるがジークはシュミットの聞きたい事に心当たりはなく、首を捻る。


「先日、レギアスの実父であるギムレット殿より、報告が上がってきてな。レギアスは私の代わりにワームを統治するには実力が足りないと、近隣の村で起きている。水不足にも対応できず、ワームで苦情が上がってきているとレギアスやラースの事だ。上手くやってくれるとは思うがそれでも現状を確認するためにワームに顔を出したかったんだ」


「……やっぱり、1枚かんでたのかよ」


「そうですね」


現在、シュミットはエルトの補佐をするために王都に一時的に戻ってきている状態であり、代行のレギアスの管理能力の低さを密告した文書が上がってきている。

シュミット自身はレギアスやラースの能力を高く買っているが報告が上がってきたなら、事実を確かめる必要があると言う。

ジークはカインとともにシギル村の件はガートランド商会が関わっていると予測を立てていたため、シュミットの言葉に大きく肩を落とした。


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