第59話
「……条件だと?」
「は、はい。確証はないんですけど、わたしたち、ドレイクのような魔族と分類される種族と」
「俺達、人族が同じパーティーを組んでいる時だと思います」
アーカスは眉間にしわを寄せて聞き返すとジークとノエルは1度、顔を見合わせた後に遺跡で自分達が一緒にいる事で遺跡の奥に行く事ができたのではないかと説明を始める。
「……なるほど、遺跡の主人の意思か」
「た、たぶんですけど」
「信じていただけないでしょうか?」
アーカスは2人の説明に難しい顔をしており、ジークとノエルは信じて欲しいとアーカスの顔を真っ直ぐと見詰めた。
「別に疑っているわけではない。小娘の事はまだわからんが、この小僧は友の血を引くものだからな。仮に嘘を吐いていたとしてもわかる」
「友の血ですか?」
「えーと、ばあちゃんの古い友人なんだ。エルフは長命だからね。その血を受け継ぐハーフエルフも人族よりは長く生きる」
アーカスはジークの嘘など見破れるとため息を吐くとノエルはアーカスの言う友が誰かわからずに首を傾げる。その姿にジークは自分とアーカスの関係を改めて説明する。
「そうなんですか。なるほど、罠もですけど、小さい頃の事を知られているから、ジークさんはアーカスさんが苦手なんですね」
「まぁ、それもあるんだけど、口に出さない方向で行って欲しかったな」
ノエルはジークがアーカスが苦手な理由を罠以外にもあったんだと頷くと、ジークは彼女の反応に大きく肩を落とすが否定する事はない。
「しかし、そうなると遺跡の奥は調べる必要があるな。行くぞ。小僧、小娘」
「アーカスさん、ストップ!?」
アーカスは遺跡の奥を見たいようで立ち上がり、ジークとノエルについてくるように言うが、ジークは彼の行動を慌てて止める。
「何だ? 小僧」
「待ってください。今は遺跡に行くのは不味いんですよ。まだ、遺跡が見つかってわずかな時間しか経ってないんです。冒険者が溢れているなかでノエルを連れて行くのは不味いんです。冒険者が相手なら、アーカスさんのようにノエルがドレイクだって見破られる可能性だってありますし、俺達が遺跡の奥に行く姿を見られたら、問題になります」
アーカスはジークが自分を引き止めた事に不機嫌そうな表情をするとジークはノエルの正体が公になる事は避けたいため、アーカスに待って欲しいと頭を下げた。
「ふむ。確かにそうだな。遺跡の奥に進む方法が見つかっては落ち着いて研究もできないだろうからな」
「……あの。もう少し、他の所で思いとどまって欲しいんですけど」
「そんな些細な事は知らん。一先ずはこれは預かる。一般的に広まっている古代文字よりは古い時代の文字のようだし、解読には時間がかかるが問題はないな」
アーカスは遺跡の奥が冒険者達に暴かれるのは面白くないと言いたげであり、ジークの説得に応じるとすでに興味の対象はジークとノエルが遺跡から持ち出した本に移っており、本を持って奥の部屋に移動しようとする。
「待ってください。まだ、用件が」
「何だ? シルドからの依頼の物は入口においてあるだろう」
「そ、そうじゃなくて、これの修理を頼みたいんです。遺跡で石人形を破壊するのに負荷をかけすぎちゃって」
しかし、ジークはアーカスを引き止めると壊れた魔導銃の修理を頼みたいと言い、テーブルの上に魔導銃を置く。