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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
584/953

第584話

「……火竜の瞳?」


「カイン、何かわかったのか?」


「……」


しばらくするとカインが小さな声でつぶやいた。

その言葉にジークは聞き返すがまだ使い魔の操作に集中しているようで返事はない。


「火竜の瞳って何?」


「俺に聞くな。ノエルとフィアナはわからないか?」


カインの反応がないため、聞きなれない言葉に首を捻るフィーナ。

ジークはため息を吐くと魔術師の方が知っているのではないかと思ったようでノエルとフィアナに聞く。


「火竜ってサラマンダーですかね?」


「……しまった。ノエルの目が輝き始めた」


「その名前の通り、火のドラゴンって事? クーの仲間?」


ノエルは竜と聞き、興奮し始め、彼女の様子にジークは眉間にしわを寄せた。

フィーナは単純に答えを出したようであり、首を捻る。


「本物のドラゴンの目じゃないけどね。火の力を増幅させる事から火竜サラマンダーから名前を貰ったって言う宝玉」


「そ、それって、凄い物のですよね? なんで、こんなところに落ちてるんですか!?」


「フィアナ、落ち着く。柱が維持できなくなる」


その時、カインが使い魔の維持を止めたようで大きく肩を落としながら簡単な説明をする。

説明を聞き、フィアナは驚きの声を上げた瞬間、魔導機器に流していた魔力が上手く伝わらなかったようで光の柱には無数のひびが入り始め、カインは集中するようにと魔導機器を指差す。


「は、はい」


「高価な物なの?」


「かなり、正直、国庫の中にあってもおかしくないもの、こんなところにあるわけがない。それも力が暴走するようにしっかりと割られてる」


フィアナの驚き方にフィーナは首を捻る。

カインは本来、あるわけがない物だと言う。

それは今回のシギル村の異常事態が誰かの手で故意に引き起こされているのを決定づけるものである。


「割れてるってどうするんだよ? 直せるのか?」


「ここでは無理、それこそ、魔術学園まで持ち込んでも修理できるかわからないレベル」


「どうするのよ。直せないなら完全に破壊するの?」


ジークはカインに解決策を聞くがカインは上手い方法が見つからないようで困ったように頭をかいた。

フィーナはカインが難しく考えているだけだと思っているようで直せないなら壊してしまえば良いと簡単に言う。


「無理、破壊するには火の魔法を弾く特殊な武器がいるし、暴走が止まるくらいまで破壊できたとしても暴走しているせいか火竜の瞳自体も熱を持ってるし、そのままにしておくわけにも行かないから持って帰らないといけないだろうけど包んで持って運ぶものがない」


「火の魔法を弾く特殊な武器?」


「包んでおくもの?」


フィーナの言葉をカインは無理だと否定する。

否定するにはしっかりと理由があるようだが彼の言葉にフィーナは自分の剣に視線を移し、ノエルは自分がまとっている火炎獅子のマントを見る。


「……有ったな」


「有ったね……偶然って怖いね」


「とりあえず、必要なものは足りたって事で納得しておくか?」


2人の視線でジークとカインはぴったりの物が有った事になんと言って良いのかわからないようで眉間にしわを寄せた。

納得はできないが時間を無駄にはできないため、ジークは自分に言い聞かせるようにつぶやき、カインも肩を落としているが賛成だと頷く。


「それでどうするのよ。その火竜の瞳ってものを壊せば良いのよね?」


「そうだね。動きはしないから近づければ簡単に壊せると思うけど問題は予想以上に奥は暑いよ」


「そう? はい。ジーク、ノエルもそのマントをジークに渡して」


必要なものはそろったが問題は火竜の瞳に近づく方法だと言う。

その言葉にすでにフィーナは奥に行く気はないようでジークに剣を渡そうとする。


「……俺が行くのかよ?」


「当然でしょ。こう言うのは男の役目」


「ジークさん、すいません」


眉間にしわを寄せるジークにフィーナは胸を張ってきっぱりと答えた。

ノエルは自分では火竜の瞳までたどり着けない事を理解しており、申し訳なさそうにジークにマントを渡す。


「……仕方ないか?」


「いや、行くのはフィーナ」


「何でよ?」


ジーク諦めたようで大きく肩を落とすとノエルからマントを受け取るがカインはフィーナに行くように言う。

その言葉にフィーナは不満を隠す事無く聞き返し、カインとフィーナの間には今にもぶつかりそうな空気が流れる。


「ジークには冷気の魔導銃を最大出力にして冷気の道を作って貰う。それでしばらくは暑さを抑え込む事が出来る。フィーナはノエルのマントを着て火竜の瞳まで進んで破壊する」


「いやよ。だいたい、ジークの魔導銃だっていつまで持つかわからないって言ってたじゃない。どこにあるか手探りなのに」


「言ったね。火の精霊の力が強くなりすぎてる場所じゃ、使えなくなる可能性が高いって、だけど、ここは水の力で満たされた場所だよ。それに使い魔は全部、消したわけじゃないから、俺がその場所まで誘導するから問題ない」


カインはため息を吐くとフィーナが行く方が良い事を説明するがフィーナは首を縦に振る事はない。

その様子にカインはきちんと進むべき道しるべを残してある事を話すがフィーナは疑いの視線をカインへと向けている。


「疑わない。ジーク、転移の魔導機器を貸して」


「お、おう」


「最悪、撤退もあり得るからね。こっちは俺が転移魔法を使えるけど、破壊できなかったらフィーナは不味い。退路くらいは確保しないといけないからね。今のところ、バカな妹でも見捨てる気はないよ。フィーナ、お前も冒険者を語るならこれくらいやれ。それにこれがシギル村の件を解決できる確率が高い」


カインはフィーナの事を見捨てる気はないと言い、ジークに渡している転移の魔導機器をフィーナに渡す。


「私はこれを使った事が無いわよ?」


「アーカスさんから風の魔導機器を借りた事があるだろ。あれと基本は同じ、扱いきれなかったら俺がフォローする」


「フィーナさん」


魔導機器を渡されても使い方がわからないと言うが、カインは簡単な説明を続ける。

ノエルはシギル村を助けたいため、不安そうな表情で彼女の名前を呼ぶ。


「……やるわよ。やれば良いんでしょ。あんた、私を見捨てたら絶対ブッ飛ばすからね」


「だから、見捨てないって言ってるだろ。どうして、こんなにやさしいお兄ちゃんを疑うかな?」


「……確実に胡散臭いからだろ」


ノエルの視線にフィーナは1度、肩を落とすとカインに食ってかかる。

その様子にカインは心外だと言いたげに肩をすくめるがその口元は小さく緩んでおり、ジークはカインの様子に大きく肩を落とした。


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