第58話
「い、いや、何となくは気が付いてましたよ。か、確証がなかっただけで」
「そ、そうなんですか? わたしはまったく気が付きませんでした。ジークさん、凄いです」
「まぁ、そう言う事にしておいてやるか」
ジークはアーカスから視線を逸らし、強がるとノエルはジークに尊敬のまなざしを向け、彼女の無垢な瞳に罪悪感を受けているジークの様子にアーカスは小さくため息を漏らす。
「そ、それじゃあ、俺とノエルが一緒にいれば問題ないと言う事ですよね?」
「あぁ。範囲はわからん。試したいなら、誰かに手伝って貰え、まぁ、協力してくれる人間はいないか。人里にドレイクがいるとなった時点で大騒ぎだろうからな」
「で、ですよね」
アーカスは効果範囲を調べたいのなら、自分達で行うように言うが、しっかりとその時の注意点を上げており、ジークは苦笑いを浮かべて頷いた。
「あ、あの。フィーナさんに手伝って貰えば良いんじゃないでしょうか? わたしの事を知ってるわけですし」
「いや、ノエル、事はそんなに簡単な事じゃなくて」
「そうか? あのうるさい小娘も知っているのか? まぁ、それはどうでもいい事だな。小娘、効果範囲から出た時に人の見られる可能性を考えろ」
ノエルはフィーナに手伝って貰おうと言うが、事はそんなに簡単な事ではあるわけもなく、アーカスは眉間にしわを寄せた。
「そ、そうですね。効果が切れた時に誰かに見つかるのは不味いですね」
「と言うか、そう考えるとノエルと一緒に来て正解だったな」
ジークとノエルはそこで初めて、気が付いたようであり、ノエルは慌てて頷き、ジークは知ったかぶりをしたせいか、ノエルに聞こえないように頷く。
「それで、これを私に見せに来たと言う事は、この魔導機器は小娘が最初から持っていたものではないな。どこで手に入れたんだ?」
「えーと、そうですね。その前にノエルが村に来た理由を話さないといけないんですけど」
「そんなものに興味などない。これをどうやって手に入れたかだけで良い」
アーカスは青い石にしか興味はないようでノエルの話を余計な事と斬り捨てた。
「あ、あの。そう言うわけにもいかないんですけど」
「何度も言わせるな。興味などない。それとも、その話があると私が小僧や小娘に協力したくなるとでも言いたいのか?」
「……いや、正直、難しいと思います」
ジークはアーカスにノエルの目的をもう1度、聞いて貰おうとするが、ここでアーカスの機嫌を損なうわけにもいかないため、話を切るとアーカスに解読して貰うために持ってきた本を取り出す。
「……ほう。なかなか、古い書物だな。だが、保存はかなり良いな」
「はい。青い石と同様に先日、地震で現れた遺跡の奥で見つけてきたものです」
アーカスはジークが出した本をぺらぺらとめくると感心したように頷き、ジークは遺跡の奥で見つけてきたものだと答える。
「遺跡? あの奥には何もなかったはずだが、暗闇の罠と方向感覚を狂わせる罠を使った無意味なものだろう」
「い、いえ、奥に進むには条件があったんです」
アーカスは自身も遺跡を見に行ったようであり、遺跡には何もなかったと話すとノエルは首を横に振った。