第578話
「……」
「終わったわね。ジーク、何かわかったの? 派手にやったんだから、何もわからなかったって事は無いでしょうね?」
「ジークさん、どうでしたか? やっぱり、精霊さん達の様子、おかしかったですよね?」
しばらくするとジークの呼びかけに応じてい精霊達の光は空に溶けて行き、光は完全になくなってしまう。
遅れて目を開けるジークの姿にフィーナは結論を早く言えと煽り、ノエルは自分が感じたものと同じものをジークが感じてくれているのか気になるようで彼に詰め寄った。
「ノエル、落ち着け。近いから」
「は、はい。す、すいません……それで、どうでしたか?」
すぐそばにノエルの顔があり、ジークは驚き視線をそらす。
彼の言葉に少し冷静になったようでノエルは顔を赤らめながら聞き返した。
「何かある事は確かだけど、何かまではわからない」
「それって結局、何もわかってないって事じゃない?」
「……悪かったな。精霊は呼びかけには応じてくれるけど、俺は精霊の言葉がわからないんだよ。一応、何か伝えそうにしていたのだけはわかった」
ジークは精霊魔法を修めているわけではないため、何があったかまではわからないと首を振る。
その様子にフィーナは期待外れだと言いたいようで大きなため息を吐いた。
彼女のため息にジークも同じ事を考えていたようでため息を吐くと感覚的ではあるがノエルの言いたがっていた事を肯定する。
「とりあえず、この先で精霊達に何かあったって事ですかね?」
「そうみたいだね。まぁ、とりあえず、人選は間違ってなかったってことかな?」
フィアナは原因が精霊達にあると思ったようであり、不安そうな表情をするとカインはジークとノエルを同行させた事を正解と判断したようで苦笑いを浮かべた。
「間違ってないですか?」
「ノエルの精霊魔法の能力の高さは言うまでもないけどね。ノエルが警告を鳴らしてくれた事でどこに注意して歩けば良いかがわかる。流石に経験が不足している人間には難しいだろうし、精霊魔法を得意にしている人達だってここまでわかるかは難しいかもね」
首を傾げるノエルの様子にカインは彼女の肩を叩く。
その様子からカイン自身、ノエルの能力の高さを買っている事がわかり、ノエルは褒められている事は理解できたようだがなんと返して良いのかわからずに助けろ求めるようにジークへと視線を向けた。
「……褒められてるんだから、素直に褒められておけ」
「は、はい。カインさん、ありがとうございます」
「そこまで改まってお礼を言われる事ではないんだけどね。とりあえず、改めて、先を進む時にノエルは精霊達の様子を確認して何かあったらすぐに教えて」
彼女の様子にジークは苦笑いを浮かべ、ノエルは深々と頭を下げる。
カインは彼女の様子が面白かったようでくすくすと笑った後、この先に進む上での注意事項を話す。
「わかりました」
「……何なんだろうな。この緩い空気」
大きく頷き、気合を入れるノエル。
ノエルとカインの間に流れる空気は緊張とは程遠いところにあり、ジークは大きく肩を落とす。
「ですけど、こういう雰囲気の方が良いです。この間はピリピリとしていてひどく居づらかったです」
「あれは俺に言われても困る。勝手に付いてきて勝手にこっちにケンカ売ってきたわけだからな」
「イオリア家のご子息はずいぶんと無駄なプライドが高かったみたいだね」
フィアナは先日のルッケルでの遺跡探索より、気が楽だと本音を漏らした。
彼女の様子にジークは自分達のせいではないと首を横に振り、カインはフィアナ以外にアノスが同行した事も聞いているようで苦笑いを浮かべる。
「ただ、フィアナは冒険者になるつもりなら、こういう緩い空気になれ過ぎてると油断して失敗するからね」
「は、はい。わかりました」
「……本当に何だろうな。この緩い空気」
カインはフィアナに冒険者としてなれ合いばかりではダメだと教え、フィアナは先ほどのノエルと同様に大きく頷く。
カイン先生の教えに大きく頷くノエルとフィアナの様子にジークは眉間にしわを寄せた。
「冒険者ってのは特定のメンバーで活動する人達と必要な時にメンバーを募集する人達もいるからね。必要な時の方は能力の高い人間が集まるけど、性格に難がある事が多いからね」
「私、絶対に気が合う人達を探します」
「ソーマと一緒なんじゃないの?」
フィアナは先日の空気は耐え切れなかったようであり、仲間探しに力を入れようと決意をする。
フィーナはフィアナがソーマから紹介された事を聞いていたため、首を傾げた。
「ソーマさんは困っていた私達に声をかけてくれてラース様を紹介してくれただけです。その時にフィリム先生が居て、ジークさん達に同行する事になりました」
「あいつの場合、手が回らないから押し付けてきただけだろ。状況が理解できているから、俺達に押し付けてくるのが腹立たしいけどな」
「その可能性が高いね。ソーマは新米冒険者グループに紛れ込んで新人教育みたいな事をやってるけど、自分が首を突っ込める状況じゃないって理解してるだろうからね」
フィアナはフィーナの疑問に首を横に振る。
ソーマの考えなど付き合いが長いジークとカインは彼が何を企んでいるかなど予想が付いており、苦笑いを浮かべた。
「……あいつは何を企んでいるのよ?」
「それでも判断としては正しいよ。ソーマが一緒に居るのはだいたいは新米冒険者達、ここに調査に来ても役に立ったかわからないからね。ノエルほどの精霊魔法の使い手も探すのは難しいし、精霊達に何かあったなら、対処できる人間ってのは限られているからね。フィリム先生と縁ができれば原因調査に魔術学園も調査に出しやすいしね。そろそろ、休憩も終わりかな?」
2人の言葉にフィーナも心当たりがあったようで拳を握り締める。
カインはソーマの判断力は評価しているようであり、シギル村の事もしっかりと考えられているとフォローするとノエルが精霊達の様子がおかしいと言っていた方向を指差す。
カインの言葉にジーク達は頷くと休憩に使用した荷物をしまう。