第57話
「ほう……かなり、古い魔導機器だな」
「わかるんですか?」
「それなりに長く生きているからな。話は茶を飲みながらにしよう。小僧、用意はできてるな?」
「終わりましたよ」
アーカスは受け取った青い石を覗き込むとそれがかなり古いものだと気が付き、感心したように声を漏らすとジークとノエルに居間に移動すると言い、3人は居間に戻る。
「あ、あの。それで」
「落ち着け。ドレイクの少女。そうだな。今更かもしれないが、アーカス=フィルティナだ」
「ノ、ノエル=ダークリードです」
3人は居間の中央にあるテーブルを囲むように座るとノエルは直ぐに青い石に付いて聞こうとするが、アーカスは落ち着くように言い、ノエルに自分の名前を名乗り、ノエルはそこで自分が名前を名乗っていない事を思い出したようで慌てて頭を下げた。
「……ノエル=ダークリードか」
「は、はい。あ、あの」
「気にするな。特に深い意味はない」
アーカスはノエルの名前をつぶやくと何かを考えるような表情をし、ノエルは何かあったのかと思ったようでアーカスを呼ぶが、彼は何もないと首を横に振る。
「アーカスさん、それって、魔導機器なんですよね?」
「あぁ。かなり昔に魔族が人族の中に紛れ込み。内から信頼関係を壊し、滅ぼすために作られたと言われているものに酷似しているな。幻影の魔法を込めた石で人族でない者を人族に見せるものだ」
「わ、わたしにはそんな気はありません!?」
ジークは青い石について、アーカスに聞くと彼の口からは青い石が魔族により、作られた人族を滅ぼすために作られた者に似ていると答え、ノエルは慌てて自分はそんな事をしないと声を上げた。
「……別に、小娘が人族を滅ぼすとは思っていない。だいたい、魔導機器はどんなものでも道具に過ぎない。これ自体には殺傷能力と言った魔法の類は付加されてもいないからな」
「あの、アーカスさん、それの効果範囲とか効果時間とかわかりませんか? 使えなくなってノエルがドレイクだってバレルのは不味いんです」
アーカスは単純に青い石を見たかっただけのようで、ノエルに青い石を返すとジークはアーカスに青い石についてわかる事はないかと聞く。
「現状で言えば、わからん。あくまでも私の知識の中にあった1つの類似点での話をしたわけだ。効果範囲等は私の口からは何とも言えない。預けて貰えば、調べる事はできるがそれがないのは困るのだろう」
「そ、そうですね」
アーカスは青い石については調べる事が出来れば何かわかる可能性があると答えるが、ノエルは青い石を現状では手放す事はできないため、表情を曇らせた。
「まぁ、わかる範囲で言えば、小娘と小僧の魔力に反応しているんだ。お前達、2人が共に居れば問題はないだろう」
「へ? ノエルだけじゃなく、俺の魔力?」
「……なんだ? その程度の事にも気が付いていなかったのか」
アーカスは青い石が効果を示しているのはノエルだけではなくジークの力にも因るものだと答え、ジークは思いもしなかった言葉に間の抜けた返事をするとアーカスはジークを見下すような視線を向ける。