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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
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第567話

「お、王都です。初めてきました」


「レイン、ヒマならフィアナの案内をしてきてくれるか? 王都は初めてだろうし。見たい場所もあるだろ」


ルッケルの遺跡の警備が任務のアノスはルッケルに残り、5人はフィリムの転移魔法で魔術学園に到着する。

フィリムは自分の研究サンプルを持って研究室に行ってしまい、取り残されていたジーク達だが巨大モグラの亡骸を見て、生徒達がわらわらと集まってくるなか、初めて王都にきたフィアナは目を輝かせている。

彼女の様子にジークは初めて王都に来た時の事を思い出したようで苦笑いを浮かべるとレインに彼女の事を頼む。


「そうですね。バーニアさんのところにも話を通してきましょうか?」


「悪い。任せる」


「ジークさん、待ってください!? わ、わたしも行きます。レインさん、フィアナさんの事、よろしくお願いします」


巨大モグラの解体に生徒達は好意的であり、荷車を用意して解体用の部屋に運んでくれると言う。

ジークは生徒達に早くしろと促されており、レインは頷くとジークは生徒達に拉致されて行き、ノエルは慌ててジークを追いかける。


「それじゃあ、フィアナさん、行きましょうか?」


「はい。お願いします」


ジークとノエルの背中を見送った後、レインはフィアナを連れて王都に向かう。


「何で、こんなに生徒達が集まってるんだ?」


「どうしてでしょうね」


「それはね。モグラは元々、小さな生き物だから、これだけ大きいとしっかりと臓器を見る事もできるからね。勉強になるんだよ」


部屋に着くなり、ため息を吐くジーク。

ノエルも研究者達の考える事がわからずに力なく笑っている。

その時、2人の背後からライオが現れて集まっている生徒達の考えを代弁する。


「……相変わらず、どこから湧いてくるんだよ?」


「私は魔術学園に所属してるんだから、居たって良いじゃないか? それより、これはどうしたんだい?」


ライオの登場に眉間にしわを寄せるジークだがライオは気にする様子もなく、部屋の中央に置かれた巨大モグラの亡骸を指差す。


「ルッケルの地震騒ぎの原因を調べるためのものだ……って、勝手に始めるな。研究材料もあるけど、俺達の収入でもあるんだ!! 皮は売るんだから、切り刻むな!! それは高く買って貰わないといけないんだ!!」


「……みなさん、自分の好奇心に正直ですね」


「それが知識を追い求めるものだからね」


ライオの指を追ったジークは巨大モグラの亡骸を運んでくれた生徒達は勝手に巨大モグラの解体を始めようとしている。

それに気が付いたジークは声を上げて生徒達を止めに走り、ノエルは顔を引きつらせ、ライオは苦笑いを浮かべた。


「それでノエル、ルッケル騒ぎの原因って、どういう事?」


「は、はい。あのですね……」


ライオは巨大モグラがルッケルの地震騒ぎとどんな関係があるのかと首を捻り、ノエルは今日、フィリムと一緒に行った遺跡の事を話す。


「遺跡?」


「ライオ様、連れて行かないですからね」


「どうして、疑うかな?」


遺跡と聞き、目を輝かせるライオ。

ノエルは彼がまた無茶な事を言うと思ったようでジト目で彼を睨む。

ライオは苦笑いを浮かべて無実だから疑わないで欲しいと言うが、前科のある彼の言葉をノエルは信じる事はできない。


「……前科が有りすぎますからね」


「ノエルもきつくなってきたね。だけど、ルッケルの鉱山の奥に遺跡か、これでルッケルの地震が治まると良いね」


「そうですね。フィリム先生には頑張って貰わないと」


ノエルははっきりとライオが悪いと言い切り、今までの彼女とは違う物言いにライオは頭をかく。

地震と遺跡は関係あるとライオも思ったようであり、フィリムに期待しようと笑うとノエルは大きく頷いた。


「それじゃあ、私もジークを手伝って来ようかな? ノエルはどうする?」


「わ、わたしは血はちょっと苦手なので……」


「そう言えば、苦手だったんだよね。それじゃあ、終わるまでカインの研究室に居たらどうかな?」


ライオも巨大モグラの解体に興味があるようでジーク達のところに行くと言うとノエルも誘う。

しかし、ノエルは血が苦手なため、首を大きく横に振り、ライオはノエルに具合が悪くなるなら終わるまでカインの研究室にいるようにと提案した。


「そうします。たまに掃除しないと荒れてしまいますから」


「それじゃあ、後でね」


「はい。ジークさんが揉めないようにフォローをお願いします」


ノエルはジークの事をライオに頼むとそそくさと部屋を出て行き、ライオは苦笑いを浮かべて彼女の背中を見送るとジークのそばに向かって歩く。


「ジーク、何か手伝う事はあるかな?」


「ライオ王子? 良いのか? 汚れるぞ」


「それは見ればわかるけどね。と言うか、先に血を抜かないといけないんじゃないのか? ……まぁ、仕方ないね」


ジークの背後から覗き込むライオ。

巨大モグラの皮はキレイに剥がされており、巨大モグラの血で真っ赤に染まったジークは王子に手伝わせて良いわけないと思ったようで眉間にしわを寄せた。

ジークの汚れ方に眉間にしわを寄せるライオだが勝手に巨大モグラ亡骸を切り刻み始めている生徒達の様子に苦笑いを浮かべる。


「皮だけは死守したんだ。あれはなるべく高値で買い取って貰わないといけないから」


「高値で? やっぱり、ジークの店って潰れるのかい? 売り上げが元々、無い上に今はフォルムでただ働きだし」


「潰れない。一応、ルッケルやラング様との契約は続いてるから、一定の収入はあるんだ。失礼な事を言うな。この間、知り合った冒険者の子の出身の村がちょっと大変な事になってて金が要るんだよ」


フィアナの村のためにもモグラの皮は生徒達に勝手にさせるわけにはいかず、薬の材料になるかも知れないモグラの亡骸を泣く泣く諦めたようで大きく肩を落とした。

ライオはジークがお金に執着しているように聞こえたようであり、彼がそこまで言うのは儲けのほとんどない店が立ち回らなくなったと考える。

ジークはライオの言葉に納得がいかず、フィアナの村の事を簡単に話す。


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