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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
555/953

第555話

「この遺跡には何があるんでしょうね?」


「わからん」


「わからないものにこれだけの人間をかけるのか? 無駄な事だ」


遺跡の通路は思ったより、広く3人が横に並んで歩けるような広さがある。

他にも罠がある事が考えられるため、先頭をジーク、2列目にアノス、フィアナ、3列目にフィリムとノエル、最後にレインの順で遺跡内を進む。

フィアナは遺跡探索が初めてなようで少し興奮気味であり、フィリムに聞く。

フィリムは何もわからないと言い切ると背後から聞こえた彼の言葉にアノスは眉間にしわを寄せた。


「わからないから、調べるんだ。その程度の事もわからんのか?」


「落ち着けよ。最近、妙に地震が増えてるだけじゃなく、ルッケルはミミズやモグラが巨大化したり、わけのわからない騒ぎになってるんだ。それの原因かも知れないんだから、調べる価値だってあるだろ。騎士は王の剣で民を守る盾なんじゃないのかよ。ルッケルの人達の生活を守るのも騎士の仕事だろ」


「……民を守る盾ね。バカバカしい」


フィリムはアノスの言葉を鼻で笑う。

ジークは背後にいるアノスの機嫌が悪くなっている事を感じ、前方に注意しながらも落ち着くようにと声をかける。

彼の言葉の中にはレインやリアーナ、ラースが語っていた騎士の矜持と言うものがアノスの中にある事も期待して物であるがアノスは民の事など何とも思っていないようでその言葉を鼻で笑う。


「レインさん、落ち着いてくださいね」


「わかっています……フィリム先生、巨大ミミズも出てきませんし、魔物も出てこないようですね。奥はどうなっているんでしょうか? フィリム先生の事ですから、わからないと言っても予想は付いているんですよね?」


「実際に見ていないから予測の域は脱しないがな」


アノスの物言いにレインは眉間にしわを寄せると彼の様子に気が付いたノエルは落ち着くように声をかける。

レインはこんな場所で騒ぎを起こすわけにも行かないため、1つ深呼吸をすると遺跡について何かわからないのかと質問をする。

レインの質問の仕方はフィリムには気分が良かったようでこの遺跡についての予想できる事を話そうと思ったのか1つ咳をした。

フィアナは自分の質問ではフィリムが答えてくれなかったため、少し納得がいかないようで首を捻っている。


「地震の原因としては巨大化した生物が地中を進む時の弊害だと考えられている。調査でジオスにも足を運んだが、地震が増えているとは言ってもルッケルほどではないからな。ルッケルの地下だけで巨大化した生物が発見されているのだから、それに関係している物だとは考えられている」


「そうなんですか?」


「……言われると最近はジオスにいないからあれだけど、大きいのは遺跡が崩れた時のだけだな」


フィリムはジークの言う通り、巨大化生物の原因になっている物がある可能性が高いと答えた。

彼の言葉でジークはジオスの状況を思い出し、ジオスで体験した地震がルッケルの地震とは別物だと考えたようで少し安心したようで胸をなで下ろす。


「それなら、この遺跡で何か見つかれば、地震騒ぎも落ち着くって事ですよね?」


「そうなるな。そろそろ、どうにかしなければルッケルだけではなく、国の問題になるだろうからな」


アズの苦労やジルの店では仕事を失った鉱員の話も聞いているノエルは胸をなで下ろす。

フィリムは研究者と言う考えもあるがハイムの事も考えているようで表情を引き締め、まだ深そうな遺跡の奥へと視線を移した。


「国の問題? 結果を起こしていないのは魔術学園の研究者だろう。国に責任を擦り付けるな」


「そう思っているなら、武だけではなく、頭も足りていないと思われても仕方ないな。ルッケルは王都から遠方にはあるとは言えハイムでも有数の鉱山だ。そこから鉱石が発掘されなければ、全ての金属類の価格が高騰する。それの対処をできないのは研究者(俺達)だけのせいではない。それの対処のためにも予算を増やし、原因を追究するべきだと言っているのに出し渋りだ。自分達は何の役にも立たない地位や名誉に無駄な金を使っているのに必要なものに回す金はないと言う。気を付けるんだな。領民の力と言うのは案外バカにできん。何も考えずにいて取り潰しにならないようにするんだな」


「そうですね。統治が上手くいかずに取り潰しになる家もありますからね」


アノスは原因がわかっていなのはフィリムを中心とした魔術学園のせいだと言うが、フィリムは考えの足りない彼の言葉を鼻で笑う。

レインはフィリムの言っている事が理解できるようで表情を小さく歪ませた。


「ルッケルの騒ぎのせいで領主になったとは言え、カインはフォルムに飛ばされたんだよな。おっさんは領地運営が上手くいかなかったらそれでカインを処分するって考えてる奴がいるって言ってたな」


「あいつなら、お前達が心配する必要などないだろう。あれはお前達が思っている以上に才能に恵まれている。何か有っても自分で打開して行く」


「……少しだけ、あいつがフィリム先生を尊敬してる理由がわかった気がする」


ジークはラースから聞かされた話を思い出して眉間にしわを寄せる。

ジークとレインがカインの心配をしている事がわかったようで、フィリムはカインを信じるように言う。

その言葉は彼の才能を見出しながらも、嫉妬して疎んじる事なく接しているフィリムと言う人物にふさわしく、ジークはカインに理解者がいてくれた事に安心したようで小さく表情を緩ませた。

しかし、アノスはジークとは反対に不機嫌になって行っており、フィアナは彼のそばにいるのが怖いようで少し後ろに下がり、ノエルの隣に並ぶ。


「あの、カインさんと言う方とアノス様の間には何かあったんでしょうか?」


「わたしは2人の関係は良くわかりません……レインさん、何かあったんですか?」


フィアナはカインに会った事がないため、アノスが不機嫌になっているのはカインに原因があると思ったようであり、隣のノエルに小さな声で聞く。

ノエルは先日、イオリア家のパーティーには出席したものの、カインとアノスの接点は見当たらなかったようでレインに王都で何かあったのかと尋ねる。

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