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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動、再び
552/953

第552話

「と言うか、この人数で護衛も何もないだろ?」


「そ、そうですね」


「フィリム先生はまだ来てないみたいですね」


翌日、フィリムに言われた待ち合わせ場所の鉱山の入り口に到着するとジーク達4人に加え、魔術学園の研究者、鉱山の警護の騎士とルッケルの警備兵もおり、20人を超えている。

研究者らしき人間は10名おり、全員が魔術学園の生徒や教授だと聞いているため、警護(自分達)がいる意味がなさそうに見える。

その様子にジークは眉間にしわを寄せるとレインはフィリムの姿を探すが彼の姿は見つからない。


「……お前達が最後だ」


「お願いですから、気配を消して背後に立たないでください」


「さ、流石、カインさんのお師匠様ですね」


その時、ジークの達の背後からフィリムの声が聞こえた。

ジーク達は彼が近寄ってきた事にまったく気が付いてなかったようであり、4人はフィリムの登場に肩を落とす。


「あの、フィリム先生、魔術学園の研究者さんがかなりいますけど、わたし達って本当に必要なんですか?」


「必要だから、お前達を呼んだんだが」


「あれじゃないでしょうか? 皆さん、研究者が本職でしょうから、カインは魔術学園在籍ですけど、あそこまで武もできるのはそうもいないでしょうし」


ノエルはフィリムに本当に自分達は必要かと聞く。

フィリムはくだらない事を言うなと言い、研究者達の方に歩き出す。

レインはジークとノエルが知る魔術学園の代表がカインであるだけで皆がカインとは違うのではないかと言う。

レインの言葉に2人はそこでカインが規格外だと言う事を思い出したようで顔を見合わせると気不味そうに視線をそらした。


「とりあえず、追いかけませんか? 私達は護衛なわけですし、フィリムさんは私達が居なくても進んで行きそうですし」


「そうですね」


フィアナは離れていると置いて行かれそうな気がするため、フィリムを追いかけようと言い、3人は頷くとフィリムの後を追う。


「速くしろ」


「……」


「お、おはようございます」


フィリムに追いつくとフィリムはジーク達に説明することがあるのか鉱山内の地図を広げている。

その他には険しい表情をしたアノスが立っており、ノエルは気分を害してしまったと思ったようで頭を下げるがノエルなど眼中にないのか彼はレインへと鋭い視線を向けている。


「険悪だな」


「私はそんなつもりは無いんですけど、フィリム先生、遺跡はどの辺りで見つかったんですか?」


「そうだな。この間のポイズンリザードが出た場所と近いんですか?」


アノスの様子を見てため息を吐くジーク。

アノスの敵意は一方的な物であり、レインは困ったように笑うとフィリムは事前に遺跡の位置を知りたいようで地図を覗き込んだ。

ジークはルッケルの毒ガス騒ぎが起きた場所があの時に行けた最深部であったため、その周辺なのかと聞くとフィリムは頷く。


「結構、遠いだろ」


「問題ない。この間、転移魔法の転移位置として登録したからな。そろそろ、行くぞ。準備をしろ」


「……有効的に使ってるな」


ジークはポイズンリザードを倒したため、毒ガスの心配はないがかなりの距離があり、移動が大変だと頭をかく。

フィリムは無駄な事をするつもりは無いようであり、転移魔法で遺跡のそばまで行くと言うと研究者達を集め、魔法の詠唱を開始する。


「ノエル、灯り」


「は、はい」


フィリムの転移魔法は無事に発動し、ポイズンリザードと戦った広場に到着する。

先ほどまで外にいたため、目は暗闇になれておらず、ノエルは精霊魔法で鉱山内に光を灯す。

研究者達もノエルと同じように魔法を使い始めたようで小さな光が浮かび始めるが鉱山内を照らすには光量が足りない。


「暗いですね」


「かなり奥だからな。フィリム先生、ランタンとかないんですか? この明るさじゃ、調査も何もないでしょう?」


「灯りを確保するためにノエルを連れて来たんだが、精霊の声が聞こえるのは才能だからな」


フィアナは目がなれないようで不安そうな声を出す。

この明るさでは調査にならない事は目に見えており、ジークはフィリムに話を聞く。

フィリムはノエルの魔法の才能を認めているようであり、彼女に鉱山内の灯りを任せたいと言う。

ノエルはフィリムの言いたい事を理解したようで目を閉じると魔力を集中させて行く。

充分に魔力をためたノエルに共鳴するように光は徐々に増えて行き、鉱山内を照らした。

灯りは充分な量になり、ノエルの魔法に魔術学園の生徒達からは驚きの声が上がり始め、ノエルは恥ずかしそうに目を伏せる。


「……なんで、いるんだ?」


「どうしてでしょうね……任務放棄とはどういう事ですか?」


照らされた鉱山内を見回したジークはアノスがいる事に気付く。

彼は鉱山警備担当と言う事で入り口を封鎖していなければならないはずであり、本来、この場所にいるわけはない。

レインは苦笑いを浮かべると騎士として与えられた任務を放棄するのは許せなかったようでアノスへと鋭い視線を向けた。


「冒険者風情がいくら集まろうと騎士である私に叶うわけがないだろ。魔術学園を代表するフィリム教授に何かあったら大変だろうしな」


「ジークさん、抑えてくださいね」


アノスはフィリムにジーク達より格下だと言われた事に腹を立てているようであり、ジークを見下すようにして言う。

レインは彼の態度にムッとするものの、その隣で冒険者と同類に扱われた事にジークはぶちぎれる寸前であり、ノエルは慌ててジークに抱き付き、彼をなだめる。


「そうですか。フィリム先生は国の重要人物ですから、ひとまず、納得はしましょう。足を引っ張るつもりなら、その時は覚悟しておいてください。後、これは忠告です。ジークは冒険者ではありません。そこを覚えていないと痛い目を見ますよ」


「冒険者だろうが何だろうが、ただの庶民に何かを言われる筋合いなどないな」


レインはアノスの言い分の一理あるため、頷くとアノスに1つの忠告をする。

しかし、アノスはジークを完全に見下しているため、レインの忠告を鼻で笑う。

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