第55話
「……ジークさん達がここに来たくない理由がわかりました」
「理解してくれて嬉しいよ……とりあえずは、これで良いか? 次はどこに仕掛けてあるかだな」
ノエルは顔を引きつらせたまま、ジークが罠を解除する様子を見ているとジークは1つの罠を解除し終えたようでゆっくりと立ち上がると視線を先に向け、ゆっくりと周囲を警戒して歩き出す。
「あ、あの。アーカスさんはハーフエルフなんですよね? どうして、魔導機器やこんな罠を?」
「……俺の方が聞きたいよ。本来、エルフの血に連なるハーフエルフなんだ。魔導機器に頼らなくても魔法でいろいろと出来るんだからな。まあ、ノエルの件もあるし、どの種族にも変りものはいるってことで」
ノエルはジークの後に付いて、精霊と心を通わせ、多くの魔法を使用するエルフがこんなに手の込んだ罠を作る意味がわからないと言うとジークはアーカスはノエルと同じ、変わり者だと答える。
「わたしは変り者じゃないです!?」
「……いや、充分に変わり者だよ」
ノエルはジークの言葉に驚きの声をあげるとジークは彼女の様子に和んだのか苦笑いを浮かべた。
「そんな事ないです」
「変り者だよ。それも周りをその気にさせる。迷惑な」
「あう」
ノエルは必死に否定しようとするが、ジークは彼女の迷惑と言う。しかし、その言葉には嫌悪感はなく、優しげであり、ノエルはジークの顔を見て顔を赤くする。
「……小僧も色を知る季節になったか」
「アーカスさん!? どこから、現れるんですか!?」
その時、ジークの背後から声が聞こえ、ジークは驚きの声を上げて振り返ると長身で線の細い男性が立っている。男性はエルフの血を引いているため、キレイな顔立ちをしており、耳は長い。
「どこから? 何を言っている。私は最初からここにいた。ジーク、お前が幻影の罠の中で必死に幻影で見えていた罠を解除している姿は滑稽だったぞ」
「い、今のがすべて幻影だって言うんですか? どこからが幻影ですか?」
「それは秘密だ。罠のからくりを話すのは面白くもないだろう。そうは思わないか、ドレイクの少女よ」
アーカスは表情を変える事なく、淡々とした口調でジークとノエルはすでに罠の中で会った事を告げるとノエルは顔を引きつらせるが、アーカスは当然のようにノエルをドレイクだと見極めた。
「あ、あの。どうして、わたしがドレイクだって」
「魔導機器で角を隠しているようだが、その程度は気づく、安心しろ。別に言って回るような趣味はない。それより、ジーク、お前はシルドのお使いでここにきたんだろ。付いて来い」
ノエルは自分がドレイクだと周囲に話されては困るため、口止めを頼もうとするが、アーカスは表情を変える事なく、付いてくるように言い、歩きだす。
「ジークさん?」
「何も言わずにバレルのか、何か、隠そうとしたのもバカらしくなるな。取りあえず、付いて行こう。そこで少し話をしておこう」
ノエルはどうして良いのかわからないようで首を傾げると、ジークは彼女に声をかけて2人でアーカスの後ろを付いて歩いて行く。