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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
545/953

第545話

イオリア家の当主が挨拶をした後に騎士になった長男を紹介し、正式にパーティーが始まる。

カイン達は領主としての立場があるため、他の参加者と挨拶を交わしたりしているがジークとノエルは特にやることもないため、最初に依頼された通り、カルディナとティミルにおかしな人間が近寄らないか見張っている。


「ヒマだな」


「ジークさん、気を抜いたらダメですよ」


「そうは言ってもな」


見張りと言っても会場はイオリア家の衛兵がしっかりと警護しており、参加者も招待された者や紹介がある者達ばかりであり、何か起こるような気配もなく、ジークは気が緩んできてしまったようで欠伸をする。

彼の様子にノエルは気を引き締めるように言うが、緩んでしまったものは簡単には引き締まらないのかジークは苦笑いを浮かべた。


「今日、問題が起きるとイオリア家の管理能力の問題になるからね。下手な事はしてこないと思うよ」


「そうなんですか?」


その時、カインが挨拶を終えていたようで2人に声を近寄ってくる。

流石の彼もなれない事をしてきたのかその表情には疲れの色が見えるがノエルは気が付かないのか首を傾げた。


「もう良いのか?」


「元々、地方領主がこんなところにいるのは場違いだしね。エルト様のそばに仕えていた時に目にかけてくれた方達に挨拶してきただけだから……とりあえず、今はそれはいらない」


「そうか? それより、本当に何も起きないのか?」


カインが疲れている事に気が付いたジークは彼の前にアリア直伝の栄養剤を出すが、カインはこんな場所で見っともない恰好をするわけにも行かないため、苦笑いを浮かべて断る。

ジークは首を捻りながら、栄養剤をしまうとカインが言っていた事が真実か気になったようで聞き返す。


「普通はね。自分の息子のお披露目にわざわざ騒ぎを起こさないでしょう。上手く取り仕切れればまだしも自分が取り仕切ったパーティーで問題なんか起きたら、評判ガタ落ちだからね」


「下手を売ったら恥かくだけだしな」


「ただでさえ、懇意にしている誰かさんが恥かいてるしね」


カインは苦笑いを浮かべたまま、イオリア家が何か仕掛けてくる事はないと言う。

ジークは納得ができたのか頭をかくと他人を見下して墓穴を掘ったステムの顔を思い出したのかジークとカインは眉間にしわを寄せた。


「あの、それなら、今回の騎士任命を快く思わない人達は何かしてくるんじゃないですか?」


「それはあるかも知れないね。だけど、オズフィム家やファクト家はそんな事をするほど小さくないしね」


「そう言う奴がイオリア家も含めて評判を落とすために仕掛けてくる可能性もあるって事か?」


ノエルはそれでも何か起きるのではないかと心配している。

カインはイオリア家を快く思っていない名家達は騎士としての矜持を持っているため、そのような事はしないと答えるが、ジークは両家もろとも足を引っ張りたい人間がいる可能性に気付き、頭をかく。


「まあね。だけど、騎士筆頭のファクト家の当主やラース様を手玉に取るティミル様相手に下手な手を取れると思うか?」


「……難しいだろうな」


カインは何か仕掛けてくるにしても相手にならないと言うと、ジークは下手に何かをして失敗するだけのリスクを考えた時に下手な手段には移れないと思ったようで眉間にしわを寄せる。


「あの、カインさん、レインさんのお父さんも出席しているんですか?」


「来てるよ。忙しい人だから、まだ多くの人に囲まれてるだろうけどね。挨拶したいなら行ってきても良いと思うけど」


ノエルはレインの父親も参加していると聞き、興味がわいたようだがカインは紹介するつもりは無いのか困ったように笑う。


「カインさん、ひょっとしてレインさんのお父さんの事が苦手なんですか?」


「苦手と言うわけじゃないけどね。俺は後継者のはずのレインを振り回して、フォルムのような田舎に連れてってしまった人間だからね。顔は合わせにくいよね」


「お前も人間らしい事を言うんだな」


カインの様子がいつもと違うと感じ取ったノエルは1つの疑問をぶつける。

彼女の質問にカインはレインを連れまわしてしまった罪悪感があるようで苦笑いを浮かべるとジークはあまり見ないカインの様子にからかうように言う。


「まあね。これでも責任のある立場にいるからね。勝手な事ばかりはできないよ。まったく、動きにくくなると面倒だね」


「それに関して言えば、同感だがカイン=クローク。お主が罪悪感を持つ事は筋違いだな。フォルムについて行くと決めたのはレインの意志だ。それに騎士団以外でも学ぶ機会があるならばそれはレインの成長につながる。騎士とは言え、非常時には冒険者とも連携を取らなければいけない。今の騎士の中には冒険者をどこか見下すものも多いからな。レインが連携を取るために動けるようになれば、ハイムのためになる。それを学ぶ良い機会であろう」


「そう言っていただけると肩の荷が下ります」


カインはエルトのそばに仕える前の自分勝手に動いていた時が1番楽だったと肩を落とすと彼の後ろから騎士鎧に身を包んだ大柄の男性が声をかけてくる。

カインは男性に向かい、深々と頭を下げると2人の様子からジークとノエルはその男性がレインの父親だと思ったようで何を話して良いのかわからずに1度、顔を見合わせた。


「クラウド様、紹介させていただきます。ジーク=フィリスとノエリクル=ダークリードです。今はフォルムの領地運営などを手伝って貰っています」


「クラウド=ファクトだ。レインが世話になっているようだな。融通が利かなく迷惑をかけているだろうがよろしく頼む」


ファクト家の当主である『クラウド=ファクト』にジークとノエルを紹介するカイン。

2人は突然の事で姿勢を正すとクラウドはあまり気にした様子もなく、レインの事を2人に頼む。


「い、いえ、レイン……様には俺達の方がお世話になっています」


「そうですね。レイン様がいないと領地の周辺の探索は進まないでしょうし」


「そう言ってくれるのは嬉しいものだな」


ジークとノエルは普段の呼び方では不味いと思ったようで慌ててレインを様付けで呼び、クラウドに向かい頭を下げる。

クラウドはレインが評価されている事を純粋に喜ばしく思っているのか照れくさそうに笑う。

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