第54話
「……結局、こうなるわけか?」
「ジークさん、聞いているんですか?」
ジークは自分の隣を歩き、先ほどのフィーナの件でくどくどと小言を話しているノエルの姿にため息を吐くとノエルはジークに話を聞いているかと確認する。
「聞いてるけど、俺は悪くないよ。あいつはわがまま過ぎるんだよ。俺はあいつの世話をするために生きてるわけじゃないからな。だいたい、こっちは実害が出てるんだ。被害者は俺」
「ですけど」
ジークはノエルにもう1度、状況を確認するように言うとノエルは1週間しか見ていなくても、フィーナの行動は行きすぎていると思ったようで顔を引きつらせた。
「本来、冒険者ってのは、ある程度、まとまって動くんだよ。前に出て仲間を守る者、後衛から仲間を援護する者、1人でできる事なんか限られてる。だから、冒険者達はパーティーを組む。だけど、あいつはいつまでも1人でふらふらしてるだろ。1人で何かをなせるほどの実力もないのに1人でいるって事は誰かと共同戦線が張れないって事だ。あいつの暴走で誰も死にたくないんだよ」
「で、でも、この間の遺跡では上手く行っていたじゃないですか?」
ジークはフィーナが冒険者としての資質に欠けている事を話すとノエルは1週間前の遺跡探索を思い出して欲しいと言う。
「結果としてはな。だけど、俺やギドはいい迷惑だったし、毎回、それをできるほど、俺はお人好しじゃないよ……ノエル、止まって」
「へ?」
ジークはフィーナにかまっていられないと言った後に立ち止まるとノエルの腕をつかみ、ノエルはジークの突然の行動に何があったかわからないようである。
「ここから先は危ないんだよ。罠があるから」
「罠がって、ただの山道ですよね? 罠になりそうなものはありませんよ」
「でも、あるんだよ。ほら」
「……罠、注意?」
ジークはこの先には罠があるとノエルに話すが、彼女は普通の山道に罠があるなど信じられないようで首を傾げる。ジークはノエルの反応に苦笑いを浮かべると道の端を指差し、ジークの指の先には『罠、注意』と注意を促す看板が立っている、
「本当ですか?」
「あぁ。えーと、この石で良いかな?」
ジークは信じていないノエルを信用させるためだと言いたげに地面から小さな石を拾い上げると、自分達の進路方向に石を軽く投げる。
石が地面に落ちると同時に、地面からは巨大な刺が突き出し、小さな石がそれを受け止められる事はできるわけもなく、その刺により、粉々に砕け散った。
「あ、あの。ジークさん」
「……罠作りは趣味らしいんだ」
「しゅ、趣味ですか。そ、それなら、仕方ないんですかね?」
ノエルの当然の疑問にジークは視線を逸らすと、ノエルはジークがこの場所に来たくなかった理由を理解できたようで顔を引きつらせる。
「無理に納得しようとするな……ノエル、良いか? ここから先は命がけだ。間違っても飛び出すなよ。何が起きるかわからないからな」
「は、はい……あ、あの。ひょっとして、遺跡で罠を解除してたのは」
「……ここで命がけで覚えた」
「そ、そうですか」
ジークはノエルを後ろに下げると表情を引き締めて罠の解除を始める。