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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
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第537話

ラースの指導とは名ばかりでいつの間にかラースが若い頃に先輩騎士達から教わったことなど指導方法とは異なった話になっている。

フィーナにマナーやルールを教える事の参考になるような話は特にないのだがセスとミレットは言い出す事ができず、その表情からは疲労の色が見える。


「あの、ジークさん、ラース様の教えてる事って役に立つんですかね?」


「良いんじゃないか? 興味のない事を延々と聞かされる苦痛がわかるってだけでも」


気を失っているフィーナのそばでジークは自分の勉強を行っており、ノエルは眠っているクーを膝の上に乗せ、3人の様子が気になるようでフィーナと3人を交互に見ている。

彼女の目に映るセスとミレットの疲労は限界近くまで来ており。このままでは2人もダウンしてしまうと思ったようでジークに聞くが、ジークは思っていたのとは違ったが目的は達成されたと言う。


「……」


「フィーナさん、大丈夫ですか?」


「ノエル? 私、何してたんだっけ?」


その時、冷気の魔導銃をくらい凍りついていたフィーナの目が開き、ノエルは慌てて彼女を呼ぶ。

耳に入るノエルの声を聞き、開き切っていない目でフィーナは自分の状況を確認しようと周囲を見回す。

突然の事だったせいかジークに魔導銃で撃たれた事など頭の片隅にもないのか、彼女はそばにいるノエルに説明を求める。


「あ、あのですね」


「なれない事を勉強しすぎて倒れたんだ。きっと知恵熱って奴だな」


「そうなの? ごめん……」


ノエルは魔導銃で撃たれた事を話すか悩んだようでジークへと視線を向けた。

その視線とフィーナの様子にジークは誤魔化せると判断したのか平然と嘘を吐くが、フィーナは自分が無理していた事は記憶になったようで迷惑をかけてしまった事を素直に謝る。


「……」


「気にするな。今は仕方ない。1本、飲んでおくか?」


「それは要らないわ……なんで、あのおっさんがいるの?」


フィーナをだましている事に心が痛んだのかノエルはジークに非難するような視線を向ける。

しかし、ジークは気にする事なく、フィーナを労うと彼女の前にいつもの栄養剤を置く。

フィーナは栄養剤を毒物と識別しているため、直ぐに拒否をすると頭がようやく動き始めてきたようで本来、フォルムにいるはずのないラースの姿を見つけて眉間にしわを寄せた。


「いろいろ有ってな」


「あんた、また、厄介なものを持ってきたんじゃないでしょうね?」


「ジークさん、きちんと説明しましょうよ」


説明するのが面倒なのかジークは一言で済ませようとするが、フィーナはこれ以上の面倒事はイヤだと言いたいのか、ジークを睨みつける。

ジークとは違い、説明が必要だと思ったノエルは1度、ため息を吐くとフィーナにラースがフォルムにくる事になった経緯を話す。


「あのおっさんがセスさんとミレットさんに指導の仕方を教える? ……できるの?」


「できるわけないだろ。実際、できてない」


「それもそうね」


ノエルから経緯を聞くものの、フィーナの頭には1つの疑問が浮かび、直ぐに首を傾げる。

彼女の疑問にジークはラースの前で話を聞かされているセスとミレットを指差し、フィーナは2人の顔を見て、少し今までの気分が晴れたのか口元を緩ませた。


「フィーナさん、あの、疲れているのはわかりますけど、セスさんもミレットさんもフィーナさんの事を心配してくれているわけですし」


「……そうね。反省するわ」


ノエルはフィーナがストレスで荒んでいるのがわかったため、落ち着くように言う。

彼女の言葉にフィーナは素直に頷くが2人がラースに捕まっているため、休めると思ったようでソファーの上で大きく身体を伸ばす。


「ラース様、フィーナが目を覚ましたようですし、時間もありませんからこれくらいで」


「ほう。小娘、目を覚ましたか」


「……気付かれた」


フィーナが身体を伸ばした時、高く上げた手がセスの視界に入ったようで彼女はラースに話を終了するように提案する。

彼女の言葉でラースの視線はフィーナに向けられ、フィーナは面倒な事になったと言いたいのか大きく肩を落とす。


「小娘、少し待っていろ。ワシは2人に指導とはなんたるかを教えんと行けないからな」


「わかったわ。ノエル……ジーク、お茶飲みたい」


「何で、俺だよ? 見てわからないか? 俺は自分の事で精一杯なんだよ」


ラースは少し考え込むようなしぐさをするとここで中断するのは良くないと結論を出したようであり、セスとミレットは助けを求めるような表情をする。

フィーナはその視線を軽く交わすとジークにお茶を入れて来いと言う。

ジークはため息を吐くとフィーナとは違い、自分は自分の必要な事をやっていると指差した。


「ほら、ノエルの膝の上はクーがいるでしょ。それにたまにはやらないと腕が鈍るでしょ?」


「簡単に腕が鈍るわけがないだろ。子供の頃からやってるんだしな。だけど、確かに起こすのも悪いか?」


フィーナは気分的にジークの淹れたお茶を飲みたいようであり、ジークは面倒だとため息を吐くものの、ノエルの膝の上で小さな寝息を立てているクーを見て苦笑いを浮かべた。


「ジークさん、わたしがやりますよ」


「良いよ。最近は飯の準備とか、ノエルやミレットさんに任せっぱなしだからな。さっきは水もぶっかけたし、労いと謝罪を込めて俺がやる」


席を立とうとするジークを見て、ノエルは自分が代わりにやると言う。

ジークは彼女の膝の上のクーの鼻先を指で小突き、小さく身体を震わせるクーを見て楽しそうに笑うとキッチンに向かって歩いて行く。


「水、ぶっかけられたって何があったのよ?」


「えーとですね。ソーマさん達にお酒を勧められまして……凄く楽しくなってしまいましてジークさんとシルドさんにご迷惑を……わ、笑わないでください!?」


去り際のジークの言葉に首をひねるフィーナ。

ノエルは記憶はしっかりと残っていたようで身体を小さく縮ませる。

彼女の様子にフィーナは笑いがこみ上げてきたようだが噴き出してはいけないと思ったようで何とか笑いをかみ殺す。

彼女の様子はイオリア家のパーティーに参加するために張り詰めていたものが少しだけ取り払われたようにも見える。


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