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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
535/953

第535話

「……雨にでも降られたのか?」


「そんなところです」


転移魔法でワームに移動するとソーマ達を連れてオズフィム家を訪れる。

ジークの店に戻り、着替えをしたノエルだが突然、水を浴びせられた事もあり、くしゃみをしている。

応接室に訪れたラースは彼女を見て、ラースは首をひねるとジークは説明が面倒なようで特に説明などしない。


「ワシがオズフィム家当主、ラース=オズフィムだ。ワシの願いを受け入れてくれた事、感謝する」


ラースはソーマが連れて来た新米冒険者達の顔を見回した後、深々と頭を下げる。

新米冒険者達は初めて関わる名家の当主に緊張した面持ちで頭を下げた。


「緊張してるな」


「普通はな」


「そうなのか? ……まぁ、あの時の事は俺は悪くないな」


ジークは使用人が運んできた紅茶をすすりながら、新米冒険者達の姿に苦笑いを浮かべる。

ソーマは当然だと言うがジークは首をひねるとラースと初めて会った日の事を思い出し、自分は悪くないと言い切った。


ラースは新米冒険者達に依頼の内容と深入りをする必要はない事を説明する。

深入りするかどうかはソーマの裁量に任せると答える新米冒険者達の姿にソーマは苦笑いを浮かべるが、彼としても新米冒険者に無理をさせる気はないようで真剣な表情をして頷いた。

説明を終えると新米冒険者達はワームに初めてきたようでソーマの案内で拠点となる冒険者の店に向かって行き、応接室にはジーク、ノエル、ラースの3人が残される。


「おっさん、楽しそうだったな」


「そうか? まぁ、若い者達の成長を見るのは楽しいがな」


新米冒険者達と話をするラースはジークの目には楽しそうに映ったようである。

ラースはそんなつもりはなかったようで首をひねるが、彼自身、ジークやフィーナの成長を楽しみにしている事もあるため、苦笑いを浮かべた。


「おっさん、枯れるのはまだ早くないか?」


「そんなつもりはないがな。最近は武を修める事もなく、騎士として名を売ろうとする輩も多いのでな。やはり、騎士の名門としては武を磨く若者を見るのは楽しい事は確かだ」


「おっさん、イオリア家が気にいらないなら、ティミル様を代行に出さなくても良いんじゃないのか? オズフィム家は名門なんだろ?」


ラースは騎士の本懐を果たさない者達が増えている事を嘆かわしく思っているようで大きく肩を落とす。

ラースの言葉から彼がイオリア家の事を快く思っていない事は明らかであり、ジークはパーティーに不参加する事で今の騎士の在り方を上層部に説いても良いのではないかと言う。


「言うのは簡単だが立場があるのでな。そうも行かんのだ」


「立場があるのも面倒だな。フィーナもなんか面倒なことになってるし」


頭が痛いとため息を吐くラース。

その様子にジークは苦笑いを浮かべると今日もドレスを着せられて、セスとミレットにマナーを叩きこまれてるフィーナの顔を思い出す。


「まぁ、あの小娘には良い薬であろう。小僧もカインでさえ、小娘には甘いところがあるからな」


「甘くしてるつもりはないんだけどな。日に日に弱って行ってるぞ」


「そうですね。どこかで息抜きさせてあげたいんですけど」


ラースはフィーナの成長を考えれば良い事だと笑う。

しかし、ジークとノエルの目に映る彼女はかなり追い込まれているようでどうにかしてやりたいようではある。


「あの小娘なら剣でも振らせておけばすぐにでも気分が晴れるだろう?」


「最初は俺達もそう思ったんだけど、セスさんとミレットさんが躍起になってて、剣を握らせて貰えない」


「それはあの小娘には耐えきれないだろうな。その事についてカインは何と言っているのだ?」


ラースは単純なフィーナならすぐにどうにでもなると言うが、事は簡単には行っていないようでセスとミレットの壁は厚く、ジークは大きく肩を落とした。

彼の言葉にラースはフィーナの事が少し心配になってきたようでカインの考えを聞きたがる。


「カインさんはセスさんに押し切られてしまいまして」


「今回の事に関して言えば、カインじゃ、あの2人には押さえられない。こっちはいつ、フィーナがキレるか心配でならないよ」


「コーラッドの娘も思い込みが激しい部分があるからな……」


フィーナの件に関しては貴族としての誇りが強いセスが主導であり、カインは下手に何かを言えないようでジークは困ったように笑う。

ラースはジークの心配事が現実になる前にどうにか対処するべきだと腕を組む。

「セスさんもおっさんには言われたくないだろうな」


「ジークさん、それは今、言う事ではないんじゃないでしょうか?」


「小僧、ノエル、小娘が爆発する前に息抜きをさせてやらんと行けないだろう。ワシをフォルムに連れて行け。ワシの言葉なら、2人も聞きいれるかも知れんからな」


思い込みが激しい代表とも言えるラースの言葉にジークは悪態を吐くとノエルは慌てて彼の事をいさめる。

その時、ラースは2人にフォルムに連れて行くように言い、突然の言葉にジークとノエルは顔を見合わせた。


「いや、流石に不味いだろ」


「そ、そうですよ。ラース様はワームでやるべき仕事があるじゃないですか?」


「ワシも最近は机に座ってばかりの仕事が多くてな。ストレスがたまって行かん。それにせっかくだ。街道整備の事でカインに意見を聞いてみるもの良いだろうしな。少し待っていろ」


ラースの提案に2人は当然、反対するがラースはフォルムに行く名分まで考えてしまい、準備をすると言い、早足で応接室を出て行ってしまう。


「い、良いんでしょうか?」


「良くはないだろうけどな……今のままじゃ、爆発するのは確かだしな。不安だけど、おっさんにかけて見るか?」


ラースが出て行ったドアを見つめて呆然とするノエルだが、直ぐに正気に戻り、ジークにどうしたら良いかと聞く。

ジークは困ったように頭をかくがフィーナの状態もかなりギリギリのところに来ている事は事実であり、ラースの提案に乗ってみると言う。

しかし、ラースの提案はどこか不安なようで2人は顔を見合わせると大きく肩を落とした。

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