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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
533/953

第533話

「……私の教え方が悪かったんでしょうか?」


「そ、そんな事はないと思いますけど」


カインがフィーナにダンスを教えてしばらくすると夕飯の準備を終えたノエルとミレットが顔を出す。

レインの手を取り踊るフィーナの動きは先ほどまでミレットが教えていた時とは違い、スムーズで美しいものになっており、彼女は自信を失ったようで大きく肩を落とした。

ノエルはフィーナの動きに目を奪われたもののミレットの様子に気づき、直ぐにフォローをする。


「ミレットさんの教え方は悪くないと思うけど、ただ、カインの方がフィーナの扱い方を知っているだけだ」


「そうですね。それでミレットさんが今まで基礎を教えてくれたからコツをつかんだんでしょう」


「そうなんでしょうか?」


ジークとセスはミレットが自信を失っている事に気が付いたようで彼女に声をかける。

しかし、ミレットのダメージは計り知れないようで反応は鈍い。


「ジークさん」


「……本当にあいつは余計な事ばかりするよな」


「今回はフィーナは悪くないと思いますよ」


ミレットを励ましたいノエルはジークに助けを求める。

ジークはミレットが落ち込んでいるのをフィーナのせいにしようとするがセスは彼女を責められないため、ジークをいさめる。


「ミレットが教えていてくれたから、直ぐにできるようになったんだよ。俺は向いていなかったやる気を微調整しただけだからね。正直、俺がフィーナに物を教え込むのは無理」


「途中で、ぶっ飛ばしたくなるだろうからな」


落ち込むミレットにカインは苦笑いを浮かべて声をかけた。

カイン自身はミレットの今までの教えがあったからだと彼女を立てる。

カインの言葉には嘘がないように思えたようでジークはうんうんと頷いた。


「ありがとうございます」


「いえいえ、なるべく甘やかさないように教育していたつもりなんだけど、俺の言葉何かほとんど聞かなくなっちゃったしね」


ミレットはカインの言葉に少し自信を取り戻したのか笑顔を見せるとカインはカインなりにフィーナの教育を間違えたと思っているのか首をひねる。


「……甘やかさないと言うか、完全に虐待の域だからな」


「ジーク、それはフィーナがバカだから折檻を受けただけだよ」


「……セスさん、お子さんが生まれた時はカインに教育を任せないようにしてくださいね」


「わかっていますわ」


ジークはカインの教育についてくる暴力の被害者であり、大きく肩を落とす。

しかし、カインにとっては当然と言う認識であり、迷いのない表情で言い切った。

ミレットは彼の表情に不安しか感じなかったようでセスの肩を叩き、セスは力なく笑う。


「どうよ。完璧でしょ」


「はい。フィーナさん、おめでとうございます」


「私にかかればこれぐらい余裕よ」


その時、最後まで踊り終えたようでフィーナは得意げに胸を張る。

ノエルは素直に彼女を誉め、フィーナは気分が良くなったようで笑顔を見せた。


「……問題はドレスを着て、動けるかどうかだよね。こらえ性がないから」


「……そこが1番問題だよな」


「そうですね。取りあえず、なれて貰うしかありませんね」


調子に乗っているフィーナを余所にジークとカインはまだまだ心配事は尽きないと大きく肩を落とす。

ミレットは頷くと次はドレスになれて貰う必要があると大きく頷くとフィーナの元に歩いて行く。


「フィーナさん、それでは次に移りましょうか?」


「ミ、ミレットさん、次って何?」


「何ってわかりきっている事を聞かないでください」


ミレットはフィーナの肩に手を置くと笑顔で彼女に次のステップに移ると言う。

彼女の笑顔にフィーナは背中に冷たいものが伝ったようで先ほどまでの満面の笑顔は引きつって行く。


「そ、そうよ。正装って言うなら、騎士は騎士鎧で良いわけでしょ。それなら、私も良い鎧着るって言うのはどう? バーニアって人に新しい鎧を作って貰おう。そうしよう」


「バーニアはリアーナ達の騎士鎧と騎士剣を作るので忙しいと思うぞ」


フィーナはドレスは何としても避けたいようで冒険者らしく鎧を着こなそうと主張するがジークは苦笑いを浮かべて彼女の意見を却下する。


「だから、私にはあんなひらひらした物は似合わないのよ」


「そんな事はありません。ドレス姿のフィーナは可愛かったです。抱きしめたくなるくらいに!!」


「……セスさん変態モードに突入したな」


フィーナはミレットから逃げるようにノエルの背後に隠れるが、セスに取ってはフィーナのドレス姿はツボだったようで拳を握り締めた。

彼女の様子にジークは大きく肩を落とすとカインはセスの病気は治らないと思っているようで苦笑いを浮かべるだけである。


「とりあえず、夕飯を食ってからにしませんか?」


「そ、そうですね」


「いえ、フィーナの場合は少しでもドレスになれないといけませんから、なるべく、ドレスを着ている時間を増やさなければいけません」


ジークはフィーナを助けるつもりはないが夕飯が冷めるのももったいないと思ったようで声をかけた。

レインはジークの意見に大きく頷くがミレットはフィーナに必要なのはドレスになれる事だと言い切り、その言葉には男性陣を黙らせるほどを強さがある。


「そうですね。カインはフィーナが恥をかいても関係ないと言いましたが、私の義妹になるのですから、ドレスくらいで慌てられても困ります。カイン、しばらくはフィーナはフォルムの周辺探索から外させて貰いますわ。私とミレットさんでフィーナをどこに出しても恥ずかしくない淑女にして見せますわ」


「……ジーク、助けて」


「……」


ひるんだ男性陣を見て、フィーナは追い打ちをかけるようにカインに言い放った。

フィーナは圧倒的な不利な状況に手段を選んでいられなくなったのかジークに助けを求めるがジークは巻き添えを喰らいたくないため、視線を逸らす。


「カイン」


「わかりました」


「う、裏切ったわね」


カインから返事がない事にセスは彼の名前を呼び、詰め寄ると反対するのは愚策と判断したのかカインは頷き、フィーナの悲痛な声が屋敷に響いた。


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