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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
カインの罠
531/953

第531話

「……動きにくいわ」


「お帰りなさい。フィーナはずいぶんと珍しい格好をしていますね」


ティミルからの依頼を受けた後フォルムに戻る時、ティミルからなれるようにと数着のドレスを渡されたフィーナ。

ジークとノエルは彼女が凍りついている間に着替えていたのだが、彼女はドレスのままであり、フォルムに戻ると直ぐに着替えのために自分の部屋に駆け込もうとするが3人を見つけたミレットが声をかける。


「ただいま戻りました」


「フィーナ、逃げなくても良いんじゃないか?」


「は、放しなさいよ」


ミレットに見つかり、逃げようとするフィーナの首根っこをつかむジーク。

フィーナは逃げ出そうと身体をばたつかせるがなれないドレスにいつもより、動きは悪く逃げ出す事が出来ない。


「フィーナはどうして、ドレスを着ているんですか?」


「話が長くなりそうだから、居間に移動しましょう」


「は、放しなさい。せめて、着替えさせなさいよ!?」


2人の様子にミレットは苦笑いを浮かべながらもフィーナがなぜ、ドレスを着るに至ったかが気になるようで首をひねった。

ジークはティミルからイオリア家のパーティーまでなるべくドレスを着させているように言われているのか彼女を引っ張って居間に移動して行く。


「イオリア家のパーティーですか? 確かにドレスにはなれておいた方が良いかも知れませんね」


「必要ないわよ」


フィーナがドレスを着ている理由がイオリア家のパーティにあると説明を受けたミレットは納得したようで頷くが、フィーナはドレスにかなり苛立ってきているようで乱暴に頭をかく。


「でも、カインが領主になったんだからお前は妹として代役でああ言う場に出る事も出てくるんだろ? 流石に普段着ってわけにはいかないだろ」


「知らないわよ。あのクズが領主だろうとなんだろうと私は私なのそんな面倒な事、ごめんよ」


「ただいま戻りました……」


立場的にも必要ではないかと言うジークだが、フィーナは自分には関係ない事だと言いたいようで頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。

彼女の様子に3人は苦笑いを浮かべた時、レインが戻ってきたようで居間に顔を出すがドレス姿のフィーナを見て言葉を失う。


「ど、どうしたんですか? フィーナさん」


「何よ? 悪かったわね。似合わなくて」


直ぐに正気を取り戻したレインは声を裏返しながら彼女に聞く。

レインの様子にフィーナはバカにされているとしか思えなかったのか、レインを睨みつける。


「……フィーナ、威嚇するな」


「そ、そうです。それに似合わないなんて思ってもいません。とても似合っています」


ジークはため息を吐くとレインは全力でフィーナの言葉を否定する。

そんな彼の顔はフィーナのドレス姿に見とれているのか耳まで真っ赤に染まっている。


「似合っている? そうやって私をバカにする気ね」


「ど、どうしてそうなるんですか? 似合ってますよ。フィーナさん、キレイですよ」


「そ、そうです。私は嘘など吐いていません!?」


しかし、フィーナは自分がドレスなど似合うわけもないと思っており、レインの言葉を素直に受け取る事はない。

このままではフィーナの思い込みで彼女がレインにつかみかかるのではないかと思ったようでノエルは彼女の手を必死に握り、落ち着かせようとする。


「……せっかくの誉め言葉なんだから素直に受け取っておけば良いのに」


「ですね。フィーナ、私も似合っていると思いますよ。ジークもそう思うでしょう?」


「まぁ、似合ってはいるんじゃないですか? 性格に難があっても見てくれは充分だし」


フィーナの様子にため息を吐くジーク。

ミレットは見かねたのか、自分もレインの言葉を肯定するとジークにも意見を求める。

ジークはフィーナの格好をバカにする事もなく、そっけなく答える。


「みんなして、私をからかって面白いの?」


「……お前、もう少し、素直に人の言葉を聞けよ」


しかし、この場にいる全員から似合っていると言われてもフィーナは疑っているようでジークの胸倉をつかんだ。

ジークは大きく肩を落とすと彼女を手を解く。


「こんな恰好が似合うわけがないでしょ。それに護衛をしろって言うならそれなりの格好しないといけないじゃない。こんな恰好なら剣も振れないわ」


「いや、お前は護衛って言うより、カインの代役だから」


「そうですね。カインの代役としてパーティーに参加するならダンスとマナーくらいは覚えておかないとカインやオズフィム家の方々の顔をつぶす事になりますね」


フィーナはあくまでも自分はカルディナとティミルの護衛としての参加だと思っているようだが、彼女がカインの代役として見られるのは誰の目から見ても明らかであり、ジークはため息を吐く。

ミレットは今のままではフィーナが恥をかくと思ったようで彼女にマナーを叩きこもうと思ったのか笑顔で言う。


「べ、別に必要ないわ」


「そんな事はありません。先ほども言いましたけど、あなたの行動で誰かの顔をつぶす事になります。そうするとイオリア家やガートランド商会にだけではなく、オズフィム家やカイン、セスさんの実家であるコーラッド家も低くみられる可能性があります。時間がありませんのでスパルタになりますよ」


「わ、わかりました」


フィーナは何度か、マナーについてミレットから教わってはいるものの、元々、粗雑な彼女にとっては苦手でしかなくその場から逃げ出そうとするが逃げきる事ができるわけもない。

ミレットはどれだけ重要な事かを言い聞かせるように詰め寄り、その様子に迫力負けしたフィーナは小さく身体を縮ませて頷いた。


「それではレイン、手伝ってください」


「はい。わかりました」


フィーナから返事を聞いたミレットはレインに手伝いを要請し、レインは大きく頷く。


「あ、あの、ミレットさん、せめて、着替えさせてくれないかな?」


「ダメです。ダンスの時にドレスのすそを踏まないようにしないといけませんから」


「……俺に助けを求めても無駄だ」


何とか着替えたいフィーナだがミレットを説得できるわけもなく、目でジークに助けを求める。

ジークはこちらに飛び火しても面倒だと思ったようで彼女をあっさりと見捨てる。

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